秋を代表する果物といえば、「梨」を思い浮かべる方も多いのでは。シャキシャキとした歯触りと、みずみずしい甘さが魅力ですよね。7月ごろから出回りはじめ、最も多く市場を占めるのは8月から10月ごろ。品種によっては12月ごろまで店頭に並びます。上手に保存し、美味しく味わいましょう。
日本の梨は、もぎたてがいちばん美味しい
日本の梨は、東北から九州まで、日本各地の広い範囲で生産されています。千葉県が13%、茨城県が10%、栃木県が9%、福島県と鳥取県がそれぞれ7%、長野県が6%で、この6つの県で全国の約5割を占めています(平成30年度農林水産統計より・農林水産省発表)。
梨には「赤」と「青」がある
日本の梨は皮の色によって、「赤梨」と「青梨」に分けられます。
「赤梨」は、皮の色が褐色で表面がザラザラしています。果実は甘みが強く、つぶつぶしていて柔らかめの食感。250~300gくらいの「幸水(こうすい)」、350~400g「豊水(ほうすい)」、貯蔵性が高く500g前後になる「新興(しんこう)」、1kgにもなる「愛宕(あたご)」などがあります。赤梨は、遅く出回る品種ほど大きく日持ちもするという特徴もあります。現在、幸水と豊水で、日本の梨の市場の6割を占めています。
一方の「青梨」は、皮が黄緑色で表面はツルツルしています。サクッとした歯触りと、さっぱりとした甘み、適度な酸味が特徴です。青梨を代表する「二十世紀(にじゅっせいき)」は、かつて一世を風靡しましたが、年々生産量が減り、現在は梨全体の1割ほど。鳥取県で多く栽培されています。
追熟して美味しくなる洋梨との違い
同じく秋に旬を迎える「西洋梨」は、収穫してから常温で保存すると、追熟して(早めに収穫してそのあと熟させること)どんどん甘くなります。
日本の梨は、基本的には追熟をしません。それゆえ、スーパーなどでは食べ頃のものが並んでおり、あまり日持ちがしない果物なんです。日本の梨は、水分が多いため木からもぎ取られると、すぐに乾燥が始まりますので、収穫したてが、一番みずみずしくて美味しいと言われています。この美味しい状態をできるだけ保てるよう、上手に保存しましょう。
梨の保存期間はどれくらい?長持ちさせる方法は?
追熟しない梨は、常温での保存は向きません。手に入れたら、日の当たらない涼しい場所において、早めに食べましょう。
すぐに食べない場合は、冷蔵庫で保存しましょう。日本の梨は、90%以上が水分。乾燥や温度変化に弱いため、冷蔵庫の野菜室がおすすめです。
その際、1個ずつポリ袋などに包むと乾燥が防げるので、冷蔵庫に入れると、1週間程度は美味しさを長持ちさせることができます。
梨は「ヘタを下向き」にして保存する
梨はヘタの部分から水分が抜けていきます。そのため、野菜室で保存する際はヘタの部分を下に向けて保存するのがコツ。
また、梨はお尻の方が甘みが強いので、逆さまに保存することによって、全体的に甘みが行き渡るともいわれています。
アルミホイルなどを使って保存
では、梨のみずみずしさをより長持ちさせるには、どうしたら良いのでしょうか。ここでは、そのまま野菜室に保存した場合とポリ袋に入れた場合、アルミホイルに包んだ場合を比較してみましょう。
1週間後、野菜室から取り出して切り分けてみると…。
1.そのまま野菜室に入れていた梨
2.ポリ袋に入れていた梨
3.アルミホイルで包んでいた梨
そのまま野菜室へ入れた梨より、ポリ袋やアルミホイルで包んでから野菜室に入れた方が、みずみずしさがキープできます。
切った後の梨の保存方法
塩水につける
カットした梨は、りんごと同じように空気に触れると、どんどん酸化して茶色くなってしまいます。そこで、梨もりんご同様、「塩水」や「レモン水」に浸けると変色を防ぐことができます。
そのあとは、ジッパー付きの保存袋やタッパーなど、密封できる容器に入れて野菜室へ。この状態で3日ほど保存できます。
梨は冷凍保存できる?
梨は冷凍保存もできます! 冷凍するときは、皮をむいてスライスやカットした梨を、重ならないようにジッパー付きの冷凍用袋などに並べ冷凍庫へ。この状態なら、1ヶ月ほど保存できます。
ただし、冷凍すると、梨独特のシャキシャキした歯触りはなくなっていまします。そこで、半解凍の状態でシャリシャリとしたシャーベットのような味わいを楽しむのがよいでしょう。
また、解凍した梨は、スムージーやジャム、コンポートなどにしておいしく味わうことができるので、そちらもおすすめです。
文/斉藤和美(フードコーディネーター)
梨を美味しく食べるおすすめアレンジレシピ
梨には、カリウムやアスパラギン酸、食物繊維が含まれており、便秘対策や解熱、疲労回復に良いのだそう。そのまま食べるのはもちろんのこと、アレンジして食べてみませんか。
【1】梨のクラフティ
みずみずしくて上品な梨の甘みを味わう。
◆材料
(大人2人分+子ども2人分) 梨 1/2個 バター 大さじ1 【A】 卵 1個 小麦粉 30g 牛乳 100cc 砂糖 大さじ2
◆作り方
【1】梨は皮をむき、5mm厚さのいちょう切りにする。 【2】バターは耐熱容器に入れてラップをかけ、電子レンジで10~20秒加熱して溶かす。 【3】ボウルに【2】と【A】を入れて泡立て器で混ぜる。 【4】耐熱皿に【3】と【1】を入れ、温めたオーブントースターまたは220℃のオーブンで15分ほど焼く。 *温かいうちでも、冷やしてもおいしい。 ※電子レンジの加熱時間は、600Wの場合の目安です。
教えてくれたのは
鈴木薫さん シンプルで、おいしくて、センスのいいレシピが人気。双子の女の子と男の子のママ。 『めばえ』2013年11月号
【2】木の実とフルーツのミニパイ
冷凍パイシートにいろいろな具を載せるだけ。それだけでも焼き立てパイは嬉しいごちそうに。
◆材料
(大人2人分+子ども2人分) くるみ 4個 梨 1/8個 りんご 1/8個 あんず(ドライ) 4個 粉チーズ 少々 冷凍パイシート 1枚
◆作り方
【1】梨は皮をむいて細かく切り、りんごは皮のまま3mm厚さのいちょう切りにする。 【2】パイシートは5cm角に切って、フォークの先で空気穴をあけ、それぞれに【1】とくるみ、あんずをのせる。くるみに粉チーズをふる。 【3】温めておいたオーブントースターまたは220℃のオーブンで10分ほど焼く。
教えてくれたのは
鈴木薫さん シンプルで、おいしくて、センスのいいレシピが人気。双子の女の子と男の子のママ。 『めばえ』2013年11月号
【3】きなこプリン 梨のコンポートのせ
ヘルシーなきなこのプリンに甘酸っぱいコンポートをあしらいます。シャキシャキした梨の食感を味わって。
◆材料
(プリンカップ4個分) 梨 1個(正味約200g) 【A】 砂糖 大さじ2 レモン汁 小さじ1 ゼラチン 5g 【B】 きな粉 大さじ3 砂糖 大さじ3 牛乳 1と1/4カップ
◆作り方
【1】ゼラチンは水大さじ2にふり入れて、ふやかす。 【2】鍋に【B】を入れて混ぜ、牛乳を加えて火にかける。沸騰直前で火を止め、【1】を加える。ボウルに移し、底を氷水に当ててとろみがつく程度に冷やし、プリンカップに流し入れ、冷蔵庫で冷やし固める。 【3】梨は皮をむいて角切りにし、耐熱容器に入れ、【A】を加え混ぜ、ラップをかけて電子レンジで3分加熱する。ラップをはずして2分加熱し、冷蔵庫で冷やす。 【4】【2】を型から抜いて器に盛り、【3】をかける。 *コンポートはそのまま食べたり、ヨーグルトにのせても。
教えてくれたのは
ほりえさちこさん 栄養士、フードコーディネーター、飾り巻き寿司インストラクター1級。男の子のママ。育児経験を生かした簡単で栄養バランスのとれた料理やかわいいレシピが人気。 『ベビーブック』2014年11月号
構成/HugKum編集部