「おむつが買えない」「粉ミルクを薄めて飲ませる」「親の食事を減らす」経済的困難な状況にある子育て世帯の実態が調査で明らかに

子ども支援専門の国際NGOである公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、2024年6〜8月に、セーブ・ザ・チルドレンの支援事業を利用した世帯のうち、全国の3歳以下の乳幼児がいる非課税世帯、児童扶養手当受給世帯などを対象に、アンケートを行いました。これにより経済的困難な状況にある子育て世帯での「深刻な物的・経済的な困窮状況」と「母親の孤立」が明らかになりました。

困窮状況にある子育て世帯の約半数が、紙おむつが買えなかった経験がある

赤ちゃんにとっては欠かせない紙おむつ。0歳児では1日に10枚前後、1歳以降も1日6枚程度が必要とされています。そんな紙おむつですが、アンケートでは49.2%が「経済的な理由により紙おむつが買えなかった経験がある」と回答しています。

そして、その対応として、「オムツを替える回数を少なくした」や「少しだけうんちをした場合は替えずにそのまま履かせた」との回答が挙げられています。

しかし、赤ちゃんの抵抗力は未熟であり、不衛生な状態が長時間続けば、おむつかぶれなどの肌トラブルや感染症などにもつながるリスクがあります。

粉ミルクを買えず、薄めたり、回数を減らすことも

「母乳の出が良くない」「仕事へ復帰するため」「人に預けるため」などの理由で粉ミルクを必要としていても、39.6%の人が「経済的な理由により粉ミルクが買えなかったことがある」と回答しています。

その際の対応として「粉ミルクを薄めて飲ませた」が41.1%と最も多く、次いで「粉ミルクをあげる量を減らした」が27.9%、「粉ミルクをあげる回数を減らした」が26.8%となっています。

他にも離乳食の時期を早めたり、水や牛乳、ジュースなどを与えたりしているケースもあり、子どもの発達や健康への影響が懸念されます。

節約のために遊びや外出を控えることが、体験格差につながっている

「体験格差」という言葉がありますが、経済的な状況で子どもにさまざまな体験をさせてあげられないという実態も明らかになっています。

生活費の節約方法についての質問では、66.9%が「子どもを連れてお金がかかる遊びや外出はあまりしない」と答え、50%以上が「子どもの遊ぶものや子どもの衣類・靴などの購入を控える」と答えています。また62.3%が「親自身の食事量を減らしている」ということもわかっています。

母親の孤立や、経済的理由による子育て不安も深刻に

この調査では、経済的な困窮だけでなく、深刻な「保護者の孤立」についても明らかになりました。子育て中に孤独感を感じることが「よくある」が34.8%、「時々ある」が37.5%と、「よくある」「時々ある」を合わせると7割以上が孤独感を感じていることが判明しています。

乳幼児の子育てについて49.0%が「経済的理由から適切な養育ができないのではないかと思ったことがある」と回答しているほか、特別養子縁組や乳児院、児童相談所などの施設などに預けることを考えたことのある人も15.6%います。

安心して子育てできる社会に。私たちも貧困問題を考えよう

この調査結果からは、深刻な物的・経済的な困窮状況に加えて、多くの母親が孤独感を感じていることもわかりました。親にとっても、赤ちゃんにとっても大切な妊娠・出産・乳幼児期を貧困や孤独とともに過ごしている家庭があるという現実を他人事と切り離さず、私たちも考える必要があるのではないでしょうか。

セーブ・ザ・チルドレンとは

この調査を行ったセーブ・ザ・チルドレンは、2010年から日本の子どもの貧困問題解決への取り組みを開始し、現在、経済的に困難な状況にある子どもや保護者への直接支援、調査の実施や教材の普及など社会啓発、子どもの貧困対策の拡充のための政策提言という3つの柱をもとに活動しています。また、低所得世帯や困難を抱える家庭に新生児向けの育児用品を提供する「ハロー!ベビーボックス」を実施し2024年までの3年で計4,073箱を配布しています。

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文・構成/平丸真梨子

今回の記事で取り組んだのはコレ!

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