未成年でも株主になれるのか?
未成年でも株主になるためには、どのような条件が必要なのでしょうか? 普通の株主と発起人の違いや、未成年の子どもが株主になるメリットや注意点も紹介します。
未成年者が株主になるには親権者の同意が条件
民法改正により、2022年4月から、未成年は従来の20歳未満ではなく18歳未満を指すようになりました(民法第4条)。また、未成年の子どもでも、証券会社に口座を開設して株式を購入すれば、株主になることができます。
ただし、未成年者が法的な行為をする場合には、基本的に親権者か未成年後見人の同意が条件です(民法第5条)。
親権者は親であることが多く、未成年者に代わって財産を監督保護する権利と義務などを持っています。未成年後見人は、親権者がいない場合などに未成年者の後見をする人です。
また、未成年者の株取引は親権者が代理で行い、リスクの高い信用取引やFXなどは扱えないのが一般的です。
15歳未満は発起人になれない
未成年者であっても、親権者か未成年後見人の同意があれば株主になれることを見てきました。一方で、会社を設立するときに出資して設立後に株主となる「発起人」については、別の条件があります。
未成年者が発起人になることを禁じる法律はありませんが、「15歳未満の未成年者」は自分で法律行為を行えない決まりです。そのため印鑑登録ができず、発起人になるために必要な「印鑑証明書」も作成できません。
結果として、15歳未満の人は発起人になれないということになります。もちろん、未成年でも印鑑証明書を作成できる15歳以上であれば発起人になれます。

株主になるとできること
株主になると、どのようなことができるのでしょうか? 株主の権利には大きく分けて2種類あります。
一つ目は「単独株主権」と呼ばれ、株式を1株でも持っていれば得られる権利です。持っている株数に応じて、配当金(会社利益の分配金)を受け取ったり、株主総会で投票したりできます。
二つ目は「少数株主権」といい、その会社の一定の割合以上、もしくは一定数以上の株式を持っていると得られる権利です。株主総会で議題を提出したり、取締役の解任請求や会計帳簿の閲覧請求を行ったりできます。
どちらも重要な権利ですが、少数株主権を持つ株主のほうが、会社の経営方針に対してより強い影響力を持ちます。
未成年者が株主になるメリットと注意点
未成年者が株主になるメリットは、将来に向けた資産形成や株式投資の勉強ができることです。お年玉やお小遣いを活用した小規模な投資であれば、リスクも抑えられ、投資の初歩を学ぶ良い機会となります。
それでも、株価の変動によって損をするリスクがあるため、親としては心配かもしれません。ただ、株式会社の場合、株主の損失は出資額を超えることはない決まりで、出資したお金以上の損失を出すことはありません。
一方で、株の売り上げが一定の金額を超えると所得税がかかるので注意が必要です。親が未成年口座に入金した株式の運用資金は「贈与」とみなされ、年間110万円以上の場合はやはり税金がかかります。
出典:
No.1199 基礎控除|国税庁
No.4402 贈与税がかかる場合|国税庁
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未成年でも取締役になれるのか?

未成年でも条件を満たせば株主になれることが分かりました。それでは、未成年者が取締役になるにはどのような条件があるのでしょうか? 株主と取締役の違いと併せて説明します。
株主と取締役の違いと役割
株主と取締役はいずれも会社の経営に関与する立場ではありますが、それぞれ異なる役割を担っています。「取締役」は役員の1種で、株式会社には1名以上、取締役会がある場合には3人以上を置かなければならない決まりです。
取締役や取締役会は、実質的な会社の運営が仕事です。会社の経営に関わることを決めて実行し、結果を株主に報告します。
これに対して株主は、会社の株式を持っている人のことで、分かりやすくいえば会社の所有者です。取締役などの役員を選んで会社の経営を任せたり、取締役から報告を受けて会社にとって重要な事柄を最終的に判断したりします。
取締役会設置会社の場合は取締役になれる
「未成年でも取締役になれるのか?」という疑問に対しては、いくつかの考え方があります。まず、未成年であるという理由で取締役になることを禁止する法律はないため、法律上は取締役になることが可能です(会社法331条)。
取締役会で複数人いる取締役の1人になるケースなら、印鑑証明書も不要なのでやはり取締役になる条件をクリアできます。
ただそれとは別に、18歳未満なら法律行為をする際に親権者や未成年後見人の同意が必要です。また、取締役は会社の運営において重要な判断を下す立場です。
会社の運営面で適切な判断力や知識を持っていないと判断される年齢の場合、実際に未成年者が取締役になるのは難しいといえます。
取締役会がない会社や有限会社の場合は15歳以上で就任可能
取締役になれない条件に「未成年」は含まれませんが、15歳未満の未成年者は、取締役会がない会社や有限会社の取締役にはなれません。15歳未満の未成年は印鑑証明書を取得できない点が制約となるためです。
会社の形態には、取締役会を設置したものと設置していないものがあります。年齢に関係なく、未成年者が複数人いる取締役の1人になれるのは、印鑑証明書がいらないためです。
会社で唯一の取締役になる場合や、取締役会の代表である「代表取締役」、有限会社の取締役になる場合は、「印鑑証明書」を提出する必要があります。
したがって、印鑑証明書を取得できる15歳以上で、親権者または未成年後見人の同意があれば、発起人になることが可能です。
条件をクリアすれば未成年でも株主や取締役になれる

未成年であっても、条件をクリアすれば未成年でも法律上は株主や取締役になれます。原則として、未成年者が法律行為をする場合には「親権者か未成年後見人の同意」が必要です。
会社を設立するときに出資して後に株主となる発起人や、取締役会がない会社や有限会社の取締役になるには、印鑑証明書を作成できる「15歳以上」が条件になります。
ただし、あまり経営知識のない未成年者が、取締役として実際に会社を運営していくのは難しいでしょう。小規模な投資ならリスクも低いので、将来に向けた株式投資の勉強としてチャレンジするのもよいかもしれません。
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構成・文/HugKum編集部