カラフルで見ていると元気になる、マリメッコのデザイン
脇阪さんは日本人で初めてマリメッコのデザイナーになった方であり、ニューヨークでラーセンのデザインをしていた方でもあります。また、現在は京都でSOU・SOUのデザインをしながら、80歳となった今もなお、新しいものを生みだし続けています。

読み進めているうちに、私が好きだったマリメッコのテキスタイルの多くが、脇阪さんがデザインしていたものだと知りました。その中でもうれしい発見は、日本の名前がついたマリメッコの「OKA」というシリーズ。
ちょうど娘が1歳くらいになるときに、奮発して購入したワンピースが「OKA」だったんです。脇阪さんがマリメッコに入社する前のトライアル期間の1か月、無我夢中で描いたデザインの中のひとつだったことを初めて知りました。
脇阪さんのデザインに惹かれるのは、日々の暮らしを大事にし、そこからデザインが生まれているからなのかもしれません。

フィンランド、ニューヨーク、京都で暮らす中でわかったこと
この本を開くまでは、これはデザインの本なのだろうなと思っていました。でも、開いてみたら、デザインだけではなく、違う世界が広がっていたのです。
そこにはフィンランド、ニューヨーク、日本で、デザイナーとして仕事をしながら暮らしてきた脇阪さんならではの苦悩や、そこから少しずつ見えてきた心の持ちようが書かれていました。
“外国で暮らしてわかったことは、
ぼくはぼく以外の何者でもない、ということだった。(P60)”
“スーパーの店員は日本のように丁寧ではなかったけれど、店員としてではなくひとりの人間としてここにいるのだ、という態度に心地よさを感じました。街は決してきれいとは言えず、少し荒廃していて寂れていましたが、そこにはある種の好ましい肌触りがありました。(P69)”
“日々の暮らしを繰り返すことで
見えてくるものがあると最初に知った。
フィンランドの地で。(P26)”

外国での暮らしから見えてきた言葉のひとつひとつは、今の自分たちの日本での暮らしをまた違うところから発見させてくれるのです。
ずっとこころにあった言葉「BE YOURSELF」
この本には、ひとつのテーマがあります。それは「BE YOURSELF」という言葉。自分自身であれ、ということ。
これはマリメッコの創業者であるアルミ・ラティアさんが、デザイナーである脇阪さんに求めた、たったひとつのことでした。
デザインだけではなく、生活するうえで、ひとりの人として、脇阪さんが常に追いかけていた言葉であり、80歳になった今でも常にこころに置いている言葉でもあります。

自分には何ができるんだろう?
自分らしさってなんだろう?
そもそも自分とは何者なんだろう?
デザイナーではなくとも、だれもが一度は立ち止まって考えたことがあることかもしれません。
フィンランド、ニューヨーク、日本と住む場所を変えながら、目の前のことに向き合い、日々の暮らしを大切にしてきた脇阪さん。この本には毎日をちょっと軽やかに、そして、楽しくしてくれるヒントがたくさんありました。

日々の暮らしとリズムを大切にしながら京都で創作を続ける、80歳のテキスタイルデザイナー、脇阪克二。
本書は、約50年前のマリメッコ作品や絵、陶芸、現在のSOU・SOUのテキスタイル等の作品がふんだんに収録された物語作品集です。近年はジブリやハローキティとのコラボレーション等、新たな挑戦もしていますが、暮らしのリズムを大切に、ワクワクする気持ちで作り続けています。
記事執筆

イケア勤務を経て、ウェブメディア&ショップ「北欧、暮らしの道具店」の初期スタッフとして約6年間働く。その後、スウェーデン人の夫である、オリバー・ルンドクイスト氏と一緒にノルウェーのトロムソに移住。1年半滞在したのち帰国し、現在は長野県松本市に在住。著書に『北欧で見つけた気持ちが軽くなる暮らし』(ワニブックス)、『北欧の日常、自分の暮らし』(ワニブックス)、夫との共著書に『家族が笑顔になる北欧流の暮らし方』(オレンジページ)がある。
Instagram @kuwabarasayaka
note 桒原さやか(くわばらさやか)/スウェーデン人夫と子育て奮闘中。