娘が3歳のとき妻が癌と分かってから1ヶ月で他界。僕は突然シングルファーザーになってしまいました。どうしていけばいいのか全く分からなかった、あの日からもう10年以上が経ちますが、私たち2人をいろんな方々が支えてくれたおかげで、娘は順調に成長しています。現在は高校生になり、学校生活も楽しめているようです。
以前の奮闘記をご覧になってくださった方はご存じかもしれませんが、今に至るまでに辛い思いをしたり、悩んだりしたことは数えきれないほどありました。特に娘への接し方に関しては、現在進行形で「失敗したり、悩んだり」しています…(笑)。
でも、今の娘の元気で明るい姿を見ていると、僕なりに大事にしてきてよかったと思えることが、ひとつあります。それは「ひとり親だからこそ、たくさんの笑顔をつくる」ことを目指してきたことです。
今回は、そんなお話をさせてください。
手探りからのスタート
シングルファーザーになった頃の僕は、「これからどうやって生きていけばいいのだろう」と不安でいっぱいでしたが、目の前のことを毎日必死にこなしていました。毎朝の支度に仕事、幼稚園の送迎、ご飯づくり、寝かしつけなど、慣れないことばかりに囲まれながら、いつも「これでいいのか?」と自問自答していました。
料理はやったことないし、洗濯機の操作も怪しかった。娘の髪を結ぶのなんて、ひどいものでした(笑)。でも、試行錯誤しながら取り組むことで、少しずつ慣れていきました。
「効率化」の罠

慣れてきたとはいえ、やらなければならないことは山ほどあり、毎日忙しいことは変わりません。だから、次はそれらをどうやって効率よくこなすかに意識を向けはじめました。
ご飯の準備で例をあげると、冷凍食品をたくさん使って時短料理をしたり、食器洗いを増やさないための盛り付けをしたりなど、常に時間と効率を重視してテキパキと動き回っていました。
また、僕は仕事で業務の効率化をはかることが割と得意だったので、そこで使っていたタスク管理のチェックシートなども家庭に導入し、無駄と思うことはドンドンはぶいていきました。両親がいる家庭以上に毎日の生活を効率よくこなしていくことが、何よりも娘のためになると考えていたのです。
しかしある日の夜、僕の心にグサリと刺さる言葉を娘がぽつりとつぶやいたのです。
それは「パパって、いつも忙しそうだね」という一言。
ひとり親家庭にとって、毎日やらなければならないことを効率的に回すことが何より重要で、それが娘のためになると信じて、僕なりに頑張っていたつもりでしたが、そんな姿が娘にとっては“楽しくなさそうな大人”に見えていたのでしょうね。
「効率化」を考えていくことは、もちろん悪い事ではないですが、その頃は毎日そればかりを優先し、知らず知らずのうちに娘と自分自身がやりたいことや、楽しいと思えることも無駄と考え、「笑顔をつくる工夫」をしていなかったことに気づいたのです。
実際、この時期は毎日の生活がほとんど計画通りに進んでいましたが、我が家に笑顔は多くありませんでした・・・。娘自身もそんな僕と過ごす時間は楽しくなかったのだと思います。
もともと、僕の理想は、「ママがいなくても毎日を楽しくしてくれる、自慢の面白いパパ」と娘から思ってもらえることだったのに・・・。
娘の一言が、そのことに気づかせてくれたのです。
「効率化」から「面白さ」へ
そこからは、娘の笑顔をたくさん作れる面白いパパを目指して、少しずつ「効率化」よりも、「面白さ」に軸を移しはじめました。
たとえば、クリスマスのケーキ。それまではケーキを注文してササっと食べて早く寝るという感じでしたが、思い切って手作りに挑戦。毎回当たりまえのように失敗していたし、洗い物は増えるし、料金も購入したほうが安い・・・。コスパも効率もメチャクチャ悪いですよね。
でも、そんなことをすべて含めて、「パパと一緒に作ったケーキ、最高ね」と笑ってくれたことは、今でも忘れられません。
さらに、誕生日では娘が欲しいモノだけでなく、自分自身が楽しみながら取り組めるダンスなどで、サプライズな余興をプレゼントするようになりました。娘が目を丸くして笑い転げてくれる瞬間がたまらなくて、娘が大きくなった今でも毎年の恒例のようになっています。
その余興の一例が下記の動画です。(※音量にご注意ください)
「非効率の中にある宝物」
面白さを優先することで、正直、洗濯物がたまる日もあるし、掃除が後回しになる日もあります・・・。でも、そこで生まれた「笑顔」は、効率では得られない宝物です。
「ひとり親だからこそ、何事も効率的に」と考えるのではなく、「ひとり親だからこそ、何事も面白く」。そのように視点を変えたことで、素敵な笑顔と思い出がいっぱいの家庭になっていると実感しています。
「非効率の中にある宝物」、これは当然「ひとり親」の家庭に限ったことではなく、「面白さ」を大事にすることで、どんな家庭でも再発見できるものだと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。すべての親子が幸せになりますように!
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文・構成/ひまわりひであき
※写真はイメージです。