韓国で作家賞を受賞した作家が提唱!「自分を変える読書術」で親も子どもも可能性を広げることができる

毎日の忙しさに追われ、子どもの教育に不安を感じていませんか?「もっと勉強しなさい」と言いながらも、なぜ勉強が必要なのか、どう伝えればよいのか迷っている親御さんは多いのではないでしょうか。

韓国の成功した起業家であり作家のコ・ミョンファン氏は、自らの経験から「問いの力」の重要性を説いています。
起業家としての経営危機を、読書を通じて自分に問いかけることで乗り越えてきた彼は、著書『本は人生を生き抜く最強の武器である』で「私たちは、答え慣れている。それが問題だ」と警鐘を鳴らします。必要なのは「正解を求める力」ではなく「問いを立てる力」だと、コ・ミョンファン氏は自らの成功体験から著書内で語ってくれています。
テストの点数や進学実績といった「答え」ばかりを追い求める現代社会において、この力は、特に子どもたちにとって大切なものではないでしょうか。

※ここからは『本は人生を生き抜く最強の武器である』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部から引用・再構成しています。

「回答」だけを求める教育には落とし穴がある

著者のコ・ミョンファン氏は、ある友人の例を挙げています。名門大学を卒業し大企業に勤めたその友人は、50代になって「俺の人生、なんでこうなっちゃったのかなあ?」と嘆きました。

その後、著者は作家・チェ・ジンソクの次の言葉に感銘を受けます。

私たちは、答え慣れている。それが問題だ。
私たちは、質問慣れした人にならねばならない。
(『人間が描く模様』より)(P.26)

コ・ミョンファン氏は友人が「回答」だけを求められる人生を歩んできたことに気付きます。その友人は全校トップになり、名門大学に入り、大企業に就職するまで、与えられた問いに答え続けてきました。しかし、自分自身に問いかける時間はなかったのです。

子どもに必要なのは「問いを持ち、質問する力」

全校トップになり、名門大学や大企業に入るために、数多の情報が自分の頭を攻撃してくる。受け入れるだけでも大変だ」と著者は言います(P.27)。
現代社会では、情報があふれています。スマートフォンを開けば、瞬時に答えが手に入る時代です。しかし、その便利さの裏で、私たちは「考える力」を失いつつあるということにハッと気付かされます。

では、どうすればいいか。情報に飲み込まれない人生を送るには、一刻でも早く「問いを投げかける」必要があるというのが著者の主張です。

自分の人生を自ら支配したければ、本を読んで自分に問いを投げかけることだ。
これは、少しでも若いうちから始めるべきだ。学生時代から回答する人生を始め、そのまま人生を歩んでいたら、あっという間に軽く50を超えている自分と出会うことになる。(P.27)

私たち親世代はもちろん、これは子どもたちにも当てはまります。子どもたちも日々、学校のテストで良い点を取るため、与えられた問題に答えることに集中しています。でも、正解がない時代を迎えるいま、それだけでは不十分なのです。

回答する世界は「他人に牽引される世界」であり、質問する世界は「自分が牽引する世界」だ。すなわち自分が自分を支配する世界だ。(P.29)

子どもたちには、与えられた答えをそのまま受け入れるのではなく、「なぜそうなのか」「本当にそれでいいのか」と問いかける姿勢が必要になります。その具体的な解決策が、読書の中にあるというのです。

読書が育ててくれる「内なる巨人」

著者は日本の読者へのメッセージで、こう語っています。

実は、私たち一人ひとりの内には、偉大な巨人が眠っています。偉大な巨人は、「可能性」ということもできるでしょう。そして、多くの人はその存在に気づいていません。
本を読むことで、人はその内なる巨人を目覚めさせることができます。(P.3-4)

子どもの中に眠る可能性を引き出すのが、読書の力なのです。本の中の物語や知識は、子どもの想像力を刺激し、新しい世界への扉を開きます。一見すると無関係に思える本との出会いが、将来の選択肢を広げることもあると著者は語ります。

著者はさらに、「読書は自分の内側に新しい世界を作り出す作業だ」と述べています。テレビやインターネットが与えてくれる世界は、誰かが作った既製品です。しかし、読書によって構築される世界は、読み手自身が創造する独自のものなのです。

思考を深めるには、質問しながら読書をするといい

本を読む理由は、思考するためである」(P.41)と著者は断言します。

本が投げかける質問にしがみついて思考してほしい。すると自問自答するようになる。
自分自身に質問をし続けてみよう。私たちの脳は、質問を受けると答えを探すようにできている。(P.42)

子どもに「なぜ勉強するのか?」「何をしたいのか?」「いつ幸せだと感じるのか?」といった問いを自分自身に投げかけさせることで、自分で考える力が育ちます。

著者は「質問する読書」の具体的な方法も提案しています。本を読みながら、「著者はなぜこう考えたのだろう?」「私だったらどうするだろう?」と問いかけることで、単なる情報の吸収ではなく、対話的な読書が可能になります。このような読書習慣は、学校の勉強にも良い影響を与えるでしょう。暗記だけでなく、理解を深めることができるからです。

読書はつらいし時間がかかるけど、ラクに生きるための最良の方法

読書はつらい。何よりも疲れる」(P.7)と著者は認めています。スマホで動画を見るほうが簡単ですが、その効果は本に及びません。

けれども、つらいからこそ、その分、あとでラクになれる。
動画で講義を受けるほうが本を読むよりラクだが、本ほどの効果はない。(P.7)

子どもが読書に取り組むのを支援することは、将来の可能性を広げることにつながるのです。

著者は「読書の筋肉」という表現も使っています。運動と同じように、読書も継続することで力がついてきます。最初は5分も集中できなかった子どもが、少しずつ読書時間を延ばしていけるよう、親がサポートすることが大切です。

また、読書は忍耐力も育てます。すぐに結果が出ない経験を積むことで、長期的な視点で物事を捉える力が養われるのです。これは、将来の仕事や人間関係においても重要な資質となるでしょう。

デジタル時代だからこそ必要な「深い読書」

スマートフォンやタブレットの普及により、子どもたちの読書環境も変化しています。短い文章や映像に慣れた子どもたちにとって、一冊の本を最後まで読み通すことは、以前より難しくなっているかもしれません。

しかし著者は、だからこそ「深い読書」の価値が高まっていると主張します。表面的な情報収集ではなく、一つのテーマについて深く考え抜く経験は、情報過多の時代を生き抜くための重要なスキルとなります。

まずは親から始める「質問する読書」

子どもに読書の大切さを伝えるには、まず親自身が読書を始めることが効果的です。月に1日だけでも、読書に集中する時間を作ってみてはいかがでしょうか。

月に1日程度は、どんなことにも邪魔されず、10時間ほど読書をし、考える「思考の日」をつくろう。(P.38)

子どもと一緒に読んだ本について「どう思った?」「なぜそう感じたの?」と問いかけることから始めてみましょう。

家庭での読書習慣を作るためには、「読書の儀式化」も効果的です。例えば、毎晩寝る前の15分間を家族の読書タイムにする、週末の朝は図書館に行く日にするなど、読書を特別な時間として位置づけることで、子どもも自然と本に親しむようになります。

また、子どもの興味に合わせた本選びも重要です。無理に「良書」を読ませるのではなく、まずは子どもが楽しめる本から始めましょう。読書の習慣がついてから、少しずつ読書の幅を広げていくことができます。

読書が開く未来への扉

著者は最後にこう締めくくっています。

私が食べる料理が私をつくり、私が巡らす思考が私をつくり、私が出会う人が私をつくる。

偉大な図書館に出会ってほしい。図書館で座り、偉大な考えを持とう。本を飲み込んでほしい。あなたは偉大である。(P.225)

「子どもに本を読んでほしい」と思う親御さんは多いと思いますが、そう言いながらつい、自分はスマホを目にしているということもあるはずです。子どもの読書習慣は、一朝一夕に身に付くものではありません。親の姿勢や環境づくりによって、少しずつ変わっていくものです。

「質問する力」を育む読書を通じて、子どもたちが自分自身の人生を主体的に切り拓いていく力を身につけるには、大人も本を読み、巻き込んでいく必要がある。すぐに実践したくなるヒントが詰まった本です。

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著者:コ・ミョンファン(作家・飲食店経営者)訳者:小笠原藤子 ディスカヴァー・トゥエンティワン

求められるままに、日々、誰かのためだけに忙しい日々を送っていませんか?
自分が本当にしたいことがわからなくなっていませんか?
自分の人生を生きたいならば、本を読みましょう。
ただ読むのではなく、「問い・考え」ながら。交通事故で死の淵をさまよった後、3000冊の本を読み、人生を劇的に変えた「韓国で大注目のベストセラー作家」コ・ミョンファン、初めての邦訳。

構成・文/HugKum編集部

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