そもそも消費税とは
消費税の定義や歴史などを解説します。消費税が廃止された場合の影響を考える前に、「消費税とは一体何なのか」をあらためて確認しておきましょう。
消費税の定義
消費税とは、モノやサービスを購入するときに課せられる税金のことです。学校の授業料や病気の治療費など一部のものを除き、「何かを購入する」という行為を行ったときには、年齢や所得などにかかわらず、すべての国民が等しく納める必要があります。
現在の消費税率は10%です。その内訳は国に納められる国税分が7.8%、都道府県や区市町村に納められる地方税分が2.2%となっています。消費者が納めた消費税は、すべて国のものになるわけではないのです。
令和7年度(2025年度)予算における消費税収は約31.4兆円と見込まれています。消費税のうち国税にあたる部分は、「年金」「医療」「介護」「子ども・子育て支援」で構成される社会保障に充てられています。
消費税の歴史
日本で初めて消費税が導入されたのは1989年のことです。当時は消費税創設に対する反発が強く、日本各地で反対運動が展開されたといわれています。なお、導入当時の税率は3%です。
その後、1997年に5%に増税されたことを皮切りに、消費税は2014年には8%、2019年には10%へと増税されました。
2019年に行われた10%への増税のときには、一部の物品に対する消費税を8%に据え置く「軽減税率制度」が導入されています。軽減税率の対象は「酒類・外食を除く飲食料品」と「週2回以上発行される新聞(定期購読契約によるもの)」です。
消費税の問題点
消費税が抱える最大の問題は「逆進性」にあるといわれています。逆進性とは、所得の低い人ほど税の負担率が高くなってしまう現象のことです。
所得の低い人ほど所得に占める消費支出の割合が高くなるため、結果として、所得に占める消費税の割合も高くなります。反対に、所得の高い人は所得に占める消費支出の割合が小さいため、消費税の負担感も少ないといえます。つまり、消費税は「弱者に厳しい税金」ともいえるのです。
消費税の逆進性を解消するために導入されたのが軽減税率です。しかし、食料品は所得が少ない人も多い人も購入するので、軽減税率を導入しても消費税の逆進性を完全に解消するのは困難といえるでしょう。
出典:No.6303 消費税および地方消費税の税率|国税庁
:消費税について教えてください。 : 財務省
消費税廃止に伴うプラスの影響

消費税廃止の是非を考えるには、想定されるプラスとマイナスの影響を検討する必要があります。メリットだけ、あるいはデメリットだけに着目するのは適切ではありません。消費税を廃止した場合に想定されるプラスの影響を解説します。
家計に余裕ができる
消費税廃止の最大のメリットは、消費者の手元に残るお金が増えることです。買い物をしても手元に残るお金が増えるため、家計に余裕が出ると考えられます。
消費税がなくなれば、食料品や日用品などを買うときにレジで支払うお金の額が減ります。例えば、税込み1,100円(本体価格1,000円+消費税100円)の商品を購入する場合、消費税が廃止されれば100円分が不要となります。あらゆる商品が値上がりする今、10%もしくは8%の差は大きいといえるでしょう。
消費税はすべての人が一律で負担する税金であるため、廃止すればすべての家庭が恩恵を受けることになります。特にメリットが大きいのが低所得者世帯です。逆進性を持つ消費税がなくなれば、低所得者の人ほど生活に余裕が生まれると考えられます。
景気回復につながる
消費税を廃止すると日本の景気が上向くといわれています。
消費税廃止は、モノやサービスの値段低下に直結する政策です。商品の値段が下がれば、必然的に消費者の購買意欲が上昇し、モノやサービスが売れやすくなると指摘されているのです。
モノやサービスの販売が拡大すれば、それに伴い経済の活性化が見込めます。事業を展開する企業では増益が見込めるでしょう。利益が増えることで企業が成長し、事業拡大のためにより多くの従業員が必要になれば、新たな雇用が創出され、巡り巡って国民の所得が増える可能性もあるのです。
事業者の負担が軽くなる
消費税廃止は一般の消費者だけでなく、ビジネスを展開する事業者にも恩恵があるといわれています。消費税がなくなると事業者の負担が軽くなるためです。
間接税である消費税は、消費者から集めた消費税分のお金を事業者が納めるシステムになっています。消費税は、事業者が赤字であっても納税義務が生じる税金です。そのため、たとえ売り上げが伸びていなくても、事業者は自分の利益を削ってまで消費税を納めなくてはなりません。
消費税を廃止すれば、事業者は消費税分のお金を資金繰りに回せるようになるため、事業の継続がしやすくなるといえるでしょう。
消費税廃止に伴うマイナスの影響

消費税廃止の是非を正しく判断するには、プラスの影響と併せてマイナスの影響も把握している必要があります。消費税を廃止すると想定されるマイナスの影響を解説します。消費税廃止のネガティブな側面を検証しましょう。
景気回復効果が不十分に終わる可能性がある
消費税を廃止しても、消費者が財布の紐を締めたままでいれば、十分な景気回復効果が見込めない可能性があります。消費を促進する対策を取ったとしても、結局消費が増えずに終わる恐れがあるのです。
現代の日本では、将来に対する不安を抱える人が多いといわれています。明るい未来が描けない状況では、消費に前向きになることは困難です。そのため、消費税が廃止されてモノやサービスの値段が下がっても、積極的に消費行動を起こす人は少数派になるかもしれません。
消費が増えなければ、雇用が創出されることも所得が増えることもないため、十分な景気回復は見込めないでしょう。
財政が悪化する
消費税の廃止は財政の悪化に直結するといわれています。消費税は総税収の約3割、一般会計歳入の約2割を占める重要な税金であるため、廃止することで国の財政を大きく圧迫する可能性が高いとされているのです。
消費税の国税分は、社会保障制度(年金・医療・介護・子育て支援)を支える財源とされています。消費税が廃止されれば、社会保障制度の財源が不足するリスクがあるのです。
ただし、社会保障は国債や国民から徴収される社会保険料なども財源となっているため、消費税を廃止しても直ちに社会保障制度が破綻するわけではない点にも注意が必要です。
他の税金が上がる可能性がある
消費税を廃止すると、他の税金が上がるかもしれません。消費税廃止による税収減は、国の財政に大きな影響を与えるため、消費税廃止により目減りした税収を補う目的で、他の税金の負担が増える懸念があるのです。
具体的には、所得税や法人税などが増税される可能性が高いといわれています。消費税廃止の代わりにこれらの税金が増税されれば、結果的に国民の税負担は変わらないといえるでしょう。
その他にも、社会保険料の引き上げや赤字国債の発行なども、消費税廃止による穴を埋める方法として検討される可能性があります。消費税廃止を掲げる政党の政策を検討する際は、税収減を補うための具体的な財源確保策も併せて確認する必要があります。
消費税廃止の是非を考えよう
消費税を廃止すると、日本で生活する国民すべてに影響が及びます。消費税廃止にはマイナスの一面もあるため、「消費税廃止=生活が必ず楽になる」と安直に考えるのは危険という意見もあります。一方で、国債の発行などで財源はまかなえるという意見もあり、消費税廃止は決して不可能ではないという見方をする人たちもいます。
メリットとデメリットを併せて検討して、消費税廃止に対する自分なりの意見を持てるようになりましょう。
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構成・文/HugKum編集部
