「国債」とは? 個人でも買える? 発行の仕組みや日本の財政状況を知っておこう【親子で経済用語を学ぶ】

日本は税収の不足をカバーするために、「国債」の発行によって投資家からお金を集めています。日本は借金が多いと言われていますが、投資家に返済しなければならないお金はいくらあるのでしょうか? 国債の役割や仕組み、日本の財政実情を解説します。

国債とは何か

ニュースや新聞などで、「国債」という言葉を見聞きしたことがある人は多いはずです。国債を理解する上では、債券の意味と仕組みを知る必要があります。

国が発行する債券の一種

国債は、「債券」の一種です。債券とは、国・地方自治体・企業などが投資家からお金を借りるときに発行するもので、借金の証明書に例えられます。国債は「国の借金」と考えてよいでしょう。

お金を貸し借りする場面では、お金を貸す人を「債権者」、お金を借りる人を「債務者」と呼びます。国債の発行に当てはめると、投資家が債権者、国が債務者です。

国債における、国と投資家の関係

国は、あらかじめ決められた「償還日(しょうかんび)」に借りたお金を返さなければなりません。「償還」には、「返却する」という意味があります。投資家は国にお金を貸す見返りとして、利子を受け取ります。

地方債との違い

国債とよく似たものに「地方債」があります。地方債は「地方公共団体の債券」を意味し、国債と地方債を合わせたものは、「公債(こうさい)」と呼ばれます。

「債」には「借りがある」「債券」などの意味があることを覚えておきましょう。

国や地方公共団体は、国民の税金で公共施設や公的サービスを運営していますが、人々の豊かな暮らしを維持していく上では、より多くのお金が必要です。税収が不足しそうなときは、国債や地方債の発行によって投資家からお金を集め、足りない部分を補っています。

国債の主な種類と使い道

国債は、「普通国債」と「財政投融資特別会計国債」に大別されます。それぞれの特徴と使い道を見ていきましょう。

普通国債

「普通国債」は、主に税金によって償還や利子の支払いが賄われるのが特徴で、以下のような国債が含まれます。

●建設国債:公共事業費・出資金・貸付金の財源を調達するために発行
●特例国債:特別の法律に基づき発行
●復興債:東日本大震災の復興事業に必要な財源を調達するために発行
●脱炭素成長型経済構造移行債(GX経済移行債):「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」を実現するために発行
●借換債:普通国債の償還額の一部を借り換える資金を調達するために発行

国債は財政法という法律で使い道が決められており、建設国債以外の国債発行は原則として認められていません。国の財政が厳しいときは、特別の法律に基づいて特別国債(赤字国債)を発行し、赤字をカバーします。

財政投融資特別会計国債

財政投融資特別会計国債(以下、財投債)は、財政投融資のために発行される国債です。

「財政投融資」とは、財投債の発行や財政融資資金の貸付けなどにより集められた資金を用いて、政策金融機関、地方公共団体、独立行政法人などに対して資金を出資・貸付けする制度です。資金は、民間金融機関での対応が難しい資金供給や政策上必要な事業、大規模かつ長期にわたるプロジェクトなどに使われます。

普通国債の償還は「国民の税金(租税)」によって賄われるのに対し、財投債の償還は「財政投融資特別会計の収入」から賄われます。この収入は、主に融資先からの返済金や投資先からの収益などです。

日本の借金の状況を知ろう

日本は、投資家からどれだけお金を借りているのでしょうか?「国債残高」や「国債費」を通じて、日本の借金の状況を把握しましょう。

普通国債の残高は年々増加

投資家に償還されていない国債の総額は、「国債残高」と呼ばれます。国債残高を見れば、日本の借金がどれくらいあるかが分かります。

日本の普通国債残高は、年々増加傾向にあります。財務省主計局が公表する「我が国の財政事情」によると、2024年度末の普通国債残高は、1,105兆円ほどになる見込みです。

特に新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年以降は、景気の落ち込みに対応するために、国は多くの国債を発行しました。

2024年度の国債費は過去最大になる見込み

国の収入と支出は、4月~翌年3月までが一区切りです。1年間の収入は「歳入」、支出は「歳出」と呼ばれ、政府が予算や状況を公表しています。

「国債費」とは、国債の償還や利子の支払いに使われる費用を指します。財務省の「令和6年度予算フレーム」によると、2024年度の国債費は過去最大の27兆90億円になる見込みです。

日本の歳出の約6割は、社会保障費と国債費が占めています。今後も、歳入の不足を新たな国債の発行で補う状態が続くでしょう。

国債は誰が保有しているの?

国が発行する国債は信用性が高く、個人投資家が購入できる投資商品としても人気があります。国債は、誰がどのような目的で保有しているのでしょうか?

日本銀行が約半数を保有

日本銀行調査統計局の資料によると、2023年12月末における国債・財投債保有者の内訳は以下の通りです。

●中央銀行:53.78%
●保険・年金基金:21.36%
●預金取扱機関:8.58%
●海外:6.68%
●公的年金:4.99%
●家計:1.25%
●その他:3.36%

「中央銀行」とは、金融組織の中心である「日本銀行(以下、日銀)」のことです。保有する割合が最も高いのが日銀で、「保険・年金基金」や「預金取扱機関」が後に続きます。

金融機関や公的年金などでは、預貯金・保険料・年金などの一部を使って国債を運用しています。ここでいう「運用」とは、持っているお金を国債に投資し、利子によって効率よく増やしていくことです。

国は、個人投資家や海外投資家にも国債を保有してもらえるように、さまざまなアピール活動を行っています。

個人は「個人向け国債」を購入できる

国は2003年3月に「個人向け国債」を導入しました。商品には「3年の固定金利型」「5年の固定金利型」「10年の変動金利型」の3パターンがあり、個人投資家は銀行や郵便局、証券会社などを通じて購入ができます。

個人向け国債のメリットは、国の財政が破綻しない限り、償還日には貸したお金がそのまま戻る点です。元本を下回るリスクがなく、銀行の定期預金よりも多くの利子が付くことから、初めて投資をする若い世代や女性にも人気があります。

日銀の金融政策と国債

日本銀行本店(東京都中央区)

日銀は日本唯一の中央銀行です。お札の発行や国の資金に関する事務、金融機関への貸し付けなどを行っており、「政府の銀行」や「銀行の銀行」とも呼ばれています。

日銀では、通貨や金融の調節によって物価を安定させる「金融政策」を行っています。金融政策と国債の関わりについて見ていきましょう。

日銀は国債の直接的な引き受けができない

日銀は国債を最も多く保有していますが、国から直接購入しているわけではありません。日銀による国債の引き受けは、財務法第5条によって禁じられているため、一般の金融機関が購入した国債を買い上げて、同じ量のお金を発行する「公開市場操作(オペレーション)」という仕組みを取っています。

公開市場操作の目的は、景気をコントロールすることです。具体的には、国債の購入や売却によって、世の中に流通するお金の量を調節しています。

国債を購入するケース

日銀による国債の購入は「買いオペレーション(買いオペ)」と呼ばれ、デフレーション(デフレ)の進行を抑えるために実行されます。

デフレとは、物価が下がりお金の価値が上がる現象です。不況で商品が売れなくなると、売り手は物の値段を下げようとするため、企業の業績が悪化したり、労働者の賃金が上がらなくなったりして、「デフレスパイラル」と呼ばれる負の連鎖が起こる可能性があります。

日銀が国債を購入すると、世の中に出回るお金の量が増加します。お金が増えると物価が上がり、結果的に景気の回復が促されます。金利を低下させる効果もあるため、経済全体の投資が増加するでしょう。

「金利」とは、資金の貸し借りにおいて、借り入れた元金に対して支払う利息の割合です。金利が低下すれば、借り手は金融機関からお金を借りやすくなります。

国債を売却するケース

日銀による国債の売却は、「売りオペレーション(売りオペ)」と呼ばれます。買いオペと反対に、インフレーション(インフレ)で景気が過熱しているときに実行されます。

インフレとは、物価が上がりお金の価値が低下する現象です。よいインフレでは、企業が繁盛し、社員の給与も上がりますが、悪いインフレでは、物価の上昇によって国民生活が厳しくなります。

日銀が国債の売却によって、世の中からお金を吸収すれば物価や金利が下がり、過度なインフレを抑えられます。

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国債に関するQ&A

個人向け国債が導入されて20年以上が経ちますが、投資をしたことがない人は、国債をそれほど身近に感じられないかもしれません。国債に関する気になる点をQ&Aでまとめました。

国が国債で借りたお金を返せない可能性は?

日本の国債残高の多さを見ると、「国に貸したお金はちゃんと戻ってくるの?」と疑問や不安を感じる人もいるでしょう。

数ある投資商品の中でも、国債は安全性が極めて高いのが特徴です。ただし、国の財政状況が急激に悪化すれば、投資家にお金を返せない事態が生じるかもしれません。

期日にお金を償還できないことを「デフォルト(債務不履行)」といいます。ロシアやアルゼンチンは、大量の国債を発行して、デフォルト状態に陥ったことがあります。日本は多額の借金を抱えているものの、国家財政が破綻するような段階には至っていないのが現状です。

外国の国債も保有できる?

投資の世界では、外国の国債は「外国債」や「外国債券」「外債」と呼ばれています。呼び方は異なりますが、意味は同じと考えましょう。

日本の国債を海外の投資家が保有できるのと同じように、日本の投資家は外国債を保有できます。金利が高いものが多く、ほとんどは1%以上です。

日本円を外国のお金に換えて運用するものは、「外貨建て外国債」と呼ばれます。外貨建て外国債の利金や償還金は、外貨のまま受け取ることもできますし、日本円に戻して受け取ることも可能です。

償還時に日本円に戻す必要はありませんが、為替レートの変動リスクに注意が必要です。例えばアメリカの国債の場合、「1ドル=〇円」という為替レートに基づいて通貨の交換がなされますが、購入時と償還時のレートが違えば、その差が利益や損失となります。

国債の役割と仕組みを理解しよう

国債は、税収の不足をカバーするために発行される国の借金です。投資家から集められた資金は、あらかじめ定められた目的のために使われます。

日銀では国債の購入や売却を通じて市場の通貨量を調整し、景気をコントロールしています。テレビのニュースや新聞を見るときは、日銀がどのような金融政策を行っているかに注目してみましょう。国債の役割や仕組みの理解は、日本の財政状況をより深く知るために役立ちます。

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構成・文/HugKum編集部

出典:我が国の財政事情(令和6年度予算政府案)
[これからの社会と税] 日本の財政の現状と課題 | 税の学習コーナー|国税庁
令和6年度予算フレーム
参考図表 2023年第4四半期の資金循環(速報)
財政法 抄 第1章 第5条| e-Gov法令検索

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