「MT免許」の取り方は? 2025年の法改正で変わったカリキュラムの特徴を解説

免許を取る人の多くがAT免許を選択するため、「MT免許」の取り方をよく理解していない人は多いはずです。免許の取得を目指すのであれば知っておきたい、MT免許の取り方を解説します。ベストな選択肢を選べるように知識を付けましょう。

法改正によりMT免許の取り方が変わった

MT免許の取り方は法改正により大きく変化しました。法改正によってどのようなところが変わったのか、なぜ法改正が行われたのかを解説します。MT免許の取り方を確認する前に、基本的な知識を身につけておきましょう。

法改正の主な内容

2025年4月1日に道路交通法施行規則の一部を改める内閣府令が施行され、MT免許の取得方式が新しくなりました。

具体的には、従来は教習・検定とも原則MT車で実施していましたが、新制度では一般項目の技能試験・技能教習・卒業検定はAT車で行い、クラッチ・ギア操作に係る項目のみをMT車(所内)で行う方式に変更されました。

AT車での教習を修了後、MT車で所内4時限の教習を行い、AT車による卒業検定(路上等)とMT車による所内の技能審査の双方に合格すれば、普通MTとして卒業扱いとなります。

MT車に乗る機会がぐっと減ったことが、今回の法改正における大きな変更点といえるでしょう。この変更は、MT免許の取得を考えている人に多大な影響を与えると考えられます。

法改正が実施された背景

MT免許の取り方が変更された背景には、AT車の普及があります。日本自動車会議所の資料(JADA等の公表値を引用)によれば、2019年の乗用車新車販売に占めるMT車比率は約1.4%とされています。多くの自動車ユーザーがAT車を選んでいる現実があるのです。

AT車が選ばれる背景には選択肢の多さがあります。そもそも市販されている車の多くがAT車なので、わざわざMT車を選ぼうとすると、選択肢がぐっと狭まってしまうのです。

また、運転が簡単なこともAT車が選ばれる一因となっています。一般的にMT車の運転はAT車よりも難しいといわれるため、あえてMT免許を選ぶ人は少数派となっています。

出典:いまや1%のMT車 戦略分かれるメーカー各社 – 一般社団法人 日本自動車会議所

MT免許を取る3つの方法

法改正に伴い、MT免許の取り方は3パターンに分けられるようになりました。それぞれのMT免許の取り方の特徴を解説します。特徴をしっかり把握して、自分にとってベストな方法を選べるようになりましょう。

AT車で教習を行う新カリキュラム

新カリキュラムでは、技能教習の大半をAT車に乗って行います。AT車で技能教習を進め、修了検定ののちにMT車で所内4時限の教習を行います。最終的にAT車による卒業検定と、MT車による所内の技能審査の双方に合格して、普通MTとして卒業扱いとなる順序です。

新カリキュラムにおいては、AT車教習を31時限行い、その後にMT車教習を4時限受講するのがベースとなります。AT路上の卒業検定とMT所内の技能審査の双方に合格すると、普通MTとしての卒業証明書が交付される流れです。

MT車で教習を行う旧カリキュラム

MT車で教習を行う旧カリキュラムでは、はじめからMT車に乗って技能教習を受けることになります。旧カリキュラムは教習所により配分差があるものの、おおむねMT29~31時限+AT3~5時限(合計最短34時限)が目安です。

旧カリキュラムでは、修了検定・卒業検定ともにMT車で実施します。卒業検定については、MT車に乗って場内と路上でおのおの受けることになります。

法改正が行われた2025年4月以降も旧カリキュラムの受講は可能です。ただし自動車学校によっては、新カリキュラムのみを展開しているところもあるので、旧カリキュラムを選択したい場合には、通学予定の自動車学校に確認を取りましょう。

AT免許取得後に限定解除

AT免許を取った後、「限定解除」を行ってMT免許を取る方法もあります。限定解除とは、運転免許に設定された制限を取り払うことです。多くの場合、AT限定の運転免許を持っている人が、MT車も運転できるようにすることを指すケースが多いといえます。

AT免許の限定解除を行う方法は2パターンあります。

1つ目が、自動車教習所で限定解除教習を受けた後、限定解除審査を受けて合格する方法です。最短で4時限の教習を受講する必要があるため、MT免許取得までに3~5日かかるとされています。

2つ目が、運転免許試験場で審査を受けて合格する方法です。一発審査は合格できれば最短当日で解除可能ですが、難易度は高めです。

新カリキュラムのメリット・デメリット

AT車を使って技能教習の大半を行う新カリキュラムにおけるメリットとデメリットを解説します。利点と欠点の両方を確認しておけば、新カリキュラムが自分に合っているのかどうかがわかってくるようになるでしょう。

【メリット】運転そのものに慣れてからMT車に挑戦できる

新カリキュラムの強みとしてまず挙げられるのが、運転に慣れてからMT車に乗れることです。

これまでのMT免許の取り方の場合、最初からMT車に乗って教習を受けることになります。運転そのものに慣れていないにもかかわらず、難しいMT車の運転に悪戦苦闘しなくてはならなかったのです。

はじめからAT車に乗って教習を受講する新カリキュラムでは、車を運転する感覚やこまごまとした交通ルールをAT車に乗って身に付けてから、改めてMT車の乗り方を学習できます。基本的な運転技術を身に付けてからのほうが、スムーズにMT車の運転技術習得に移行することができるでしょう。

【メリット】途中からMT免許取得コースへと切り替えが可能

教習の途中からコースの変更ができるのも新カリキュラムの長所です。事情が変わって急遽MT免許が必要になったときでも、AT免許取得コースからMT免許取得コースに切り替えられます。

旧カリキュラムでは、たとえ途中から「MT免許取得コースに変更したい」と思っても、そのままAT免許取得コースでAT免許を取ってから、後日限定解除審査を受けるしかありませんでした。

新カリキュラムであれば、AT車で卒業検定を通過した後、所定のMT車教習を受けてMT車で限定解除審査に合格すればMT免許が取得できるため、最短で限定解除が可能になります。

【デメリット】MT車を運転できる時間が少なくなる

新カリキュラムの弱点としては、MT車に乗る機会の減少が指摘されています。

旧カリキュラムでは、一番はじめからMT車に乗って教習を受講するので、MT車の運転経験をみっちりと積むことが可能です。

新カリキュラムでMT車に乗るのは最短4時限(所内)のみです。到達度によっては任意(自由)教習を追加してから再審査となる場合があります。

AT車よりも難しいといわれるMT車の運転をたったの4時限で習得できるかは、大いに疑問が残るといえるでしょう。

また、新カリキュラムで行うMT車を使った教習・審査は、すべて教習所内で行われ、路上でのMT教習はありません。路上での教習を経験できないため、不安を抱く人もいるかもしれません。

【デメリット】費用が高くなる可能性がある

新カリキュラムでMT免許を取ろうとすると、旧カリキュラムよりも費用がかさんでしまう可能性があります。

新カリキュラムではたった4時限でMT車の運転を習得しなくてはなりません。4時限で足りないようであれば、追加の技能教習を受講し、MT車を運転するに足る技術を身に付ける必要があります。

追加の技能教習を受けるには、当然、追加料金が必要です。人によっては、なかなかMT車の運転に慣れることができず、追加料金が積み重なって、MT免許取得費用がどんどんかさんでしまう可能性があります。

自分に合った方法でMT免許を取ろう

MT免許の取り方は、現状3パターンに分けられます。MT免許の取り方を選ぶときには、それぞれの方法の特徴をよく理解し、自分に合ったものを選ぶ必要があるでしょう。

自分に合っていない方法を選んでしまうと、MT免許取得までに無駄な時間とお金がかかってしまう可能性があります。それぞれの方法をよく吟味して、もっともメリットを感じる方法を選びましょう。

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構成・文/HugKum編集部

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