ホワイトハラスメントとは?
「ホワイトハラスメント」は、「セクシャルハラスメント」や「マタニティハラスメント」のように、名称からハラスメントの内容が想像しやすいものとは異なり、言葉を聞いただけではどのようなハラスメントなのかをイメージするのは難しいでしょう。ホワイトハラスメントの定義や具体例を解説します。
ホワイトハラスメントの定義
ホワイトハラスメントとは、上司や先輩が部下や後輩に行き過ぎた配慮をするあまり、部下や後輩の成長のチャンスを奪う行為を指す言葉です。2019年に放送されたテレビドラマ『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)で取り上げられたことをきっかけに広く知られるようになりました。
ホワイトハラスメントは若者の離職理由の一因になっていると指摘されています。過剰な配慮がハラスメントと受け取られるようになると、「これ以上この上司の下にいても成長できない」「もっと自分の能力を生かせる職場があるのではないか」という考えが生まれるためです。

ホワイトハラスメントの具体例
ホワイトハラスメントの最たる例といえるのが、「〇〇さんには荷が重いと思うから」「〇〇さんには難しすぎると思うから」などという理由で部下や後輩に重要な業務を任せない行為です。過剰な配慮を受けた部下や後輩は、「ハラスメントを受けている」と感じてしまいます。
相手を傷つけないようにと配慮するあまり、ミスをちゃんと注意しないのもホワイトハラスメントに当たる行為です。注意を受けなかった部下や後輩は、「上司や先輩から信頼されていない」と感じてしまうでしょう。
その他にも、残業になってしまった部下の仕事を「後は自分がやるから帰っていいよ」と言って巻き取るのもホワイトハラスメントに当たります。
ホワイトハラスメントの原因

ホワイトハラスメントを防ぐには、その原因を理解することが重要です。原因を知ることでハラスメントを防ぐ方法が見えてきます。ホワイトハラスメントが起こる背景を説明します。
「パワハラを回避したい」という意識の異常な高まり
ホワイトハラスメントは、上司が抱く「パワハラ上司と思われたくない」という思いの裏返しといえるでしょう。時代の流れとともに攻撃的・威圧的な言動に対してNGが出されるようになったことで、世の上司たちは部下への接し方に悪戦苦闘しているのです。
「パワハラと受け取られないように」と意識しすぎるあまり、部下や後輩に対して過剰な気遣いをしてしまうのが、まさにホワイトハラスメントといえます。思いやりのある上司や先輩を目指すあまり、優しさを履き違えてしまうのです。
上司の考えや感情で業務量や内容が左右される環境
部下に任せる業務の量や内容が上司の考えや感情に依存しているのも、ホワイトハラスメントが生まれる原因の1つと考えられます。客観的な事実ではなく、考えや感情という曖昧なもので部下の仕事が決まる状況下では、過剰な配慮が生まれやすい環境といえます。
このような傾向が見られる職場では、部下の意思や気持ちはスルーされがちです。部下の意向を無視して、上司の主観だけで業務の量や内容を決定すれば、必ずどこかに歪みが生まれます。歪みの一例がホワイトハラスメントといえるのです。
ホワイトハラスメントを防止するためには

ホワイトハラスメントは、被害者の部下や後輩のモチベーションを著しく削ぐ行為です。誰もが気持ちよく働ける職場を目指すのであれば、ホワイトハラスメントを防ぐ方策が求められます。ホワイトハラスメントを防ぐ方法を紹介します。
密にコミュニケーションを取る
ホワイトハラスメントを防ぐには、上司と部下もしくは先輩と後輩の間でしっかりコミュニケーションを取ることが不可欠です。過剰な気遣いが生まれる裏には、上司と部下・先輩と後輩の間で起こるコミュニケーション不全が隠されているためです。
例えば、育児休暇から復帰した部下に対し、上司は「育児で大変だろうから負担の大きな仕事は任せないようにしよう」と考えていたとします。しかし当の部下は「仕事をバリバリこなして遅れを取り戻したい」と思っているかもしれません。
密にコミュニケーションを取り、復帰後の働き方を共有していれば、このようなすれ違いが起きることはないでしょう。互いの考えを率直に伝え、互いにとってベストな選択をともに考えることが重要です。
適切なフィードバックを実施する
ホワイトハラスメントを防ぐには、部下との双方向のフィードバックを重視することも重要です。上司の行動がハラスメントになっていないか、定期的なフィードバックを通して確認しましょう。
ホワイトハラスメントは、往々にして良かれと思ってしたことが「大きなお世話」になっていることで起こります。そのため、部下が「本当はどう思っているのか」を確認しないまま業務を進めるのは危険といえるでしょう。
ホワイトハラスメントを防ぐには、定期的にミーティングを実施し、「仕事量は適切か」「自分のやりたい仕事ができているか」などを確認することが重要です。
原因と対策を知ってホワイトハラスメントを防ごう
ホワイトハラスメントは、仕事を振る人と引き受ける人との間で互いの思いが行き違うことで生まれる新時代のハラスメントです。ホワイトハラスメントを防ぐには、「なぜホワイトハラスメントが起きるのか」「どうすればホワイトハラスメントを防げるのか」を知ることが大切といえます。誰もが自分の能力を存分に発揮できる職場を作っていきましょう。
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文・構成/HugKum編集部