子どもと始める「天体望遠鏡」。スターターが知っておきたい基本的な構造と選ぶときの注意点

天体望遠鏡は構造の違いによって、いくつかのタイプに分かれます。子どもに天体望遠鏡を選ぶときは、なにを目安にすればよいのでしょうか?天体観測を始めたばかりの子どもに望遠鏡を選ぶときの注意点やおすすめを紹介します。

天体望遠鏡には3タイプある

天体望遠鏡といえば、星や星雲などを観察しやすくするための道具です。実は、天体望遠鏡の仕組みには3タイプあり、それぞれ異なる仕組みでできています。それぞれどのように異なるのか、初心者に適したタイプはどれか、特徴を見ていきましょう。

初心者にも扱いやすい屈折式

天体望遠鏡は、鏡筒と呼ばれる筒で光を集めて星を見やすくしています。初期に作られた天体望遠鏡は「屈折式」と呼ばれ、長い筒に取り付けた2枚の凸レンズで光を集めます。

簡単な構造なので難しい調整がいりません。組み立てればすぐに使えて手入れも楽なので、初心者にも扱いやすいのが魅力です。

デメリットは、性能を上げようとすると大型になり、設置場所の確保や持ち運びが大変になってしまう点です。

出典:望遠鏡のひみつ|こども天文学者への道|すばるキッズ|ハワイ観測所

反射式とカタディオプトリック式

屈折式の次に作られたのは「反射式」です。レンズの代わりに鏡で光を集める仕組みで、たるのような見た目が特徴です。

「カタディオプトリック式」は、屈折式と反射式を組み合わせた構造で、「反射屈折望遠鏡」とも呼ばれます。これらは屈折式に比べて、鏡筒を大型にしなくてもくっきりと星が見えるタイプです。

ただし、目的の天体にピントを合わせるには技術が必要で、使うための準備や管理にも手間が掛かります。あまり初心者向きではなく望遠鏡の扱いに慣れた人向けといえます。

子ども向けに望遠鏡を選ぶときの注意点

子どもや初心者が使いやすい望遠鏡を選ぶためのポイントをわかりやすく解説します。鏡筒と三脚の間にある「架台」、望遠鏡で見える範囲を決める「口径」、そして星を探すための「ファインダー」など、各部品をチェックしましょう。

意外と重要な台座「架台」

望遠鏡は、筒の形をした「鏡筒」と、鏡筒の台座である「架台」、全体を支える「三脚」に分けられます。望遠鏡の操作のしやすさは、主に鏡筒と架台の種類で決まります。

架台の種類は「経緯台」と「赤道儀」の二つです。経緯台が水平と垂直の2方向に動くのに対して、赤道儀は天体の日周運動に合わせて動きます。

片持ちフォーク式経緯台とケプラー式望遠鏡  CC 表示-継承 3.0, Wikimedia Commons(PD)
ドイツ式の赤道儀 © Marie-Lan Nguyen, CC 表示 2.5, Wikimedia Commons

初心者には操作がシンプルで、軽く、価格の安めな経緯台がおすすめです。さらに、自動追尾・自動導入機能があると星を見つけるのが楽になるでしょう。

見える範囲は「口径」で決まる

どれくらい離れた天体をはっきりと観察できるかという性能は、対物レンズや鏡の大きさを示す「口径」で決まります。

接眼レンズを変えれば倍率を上げることもできますが、口径の大きさの約2倍までが限界です。それ以上の倍率になると天体がぼやけてよく見えなくなってしまいます。

より高性能な天体望遠鏡が欲しいなら、口径が大きめのものを選びましょう。ただし、口径の値が大きいほど大型になるため、野外に天体望遠鏡を持ち運んで天体観測するなら扱いやすさも考える必要があります。

「ファインダー」はのぞき穴タイプが便利

望遠鏡の方向を調整する前に、観測したい天体を探すための部品をファインダーと呼びます。ファインダーにも、のぞき穴(素通し)タイプと光学式(小型望遠鏡)タイプの2種類があります。

光学式タイプは5~6等星程度の暗い星も見えますが、見たい天体に望遠鏡を合わせるにはテクニックと慣れが必要です。

のぞき穴タイプは、2個の穴を重ねて目的の星に合わせるだけで完了し、子どもや初心者でもすぐ使えます。ファインダー付きを選ぶならのぞき穴タイプがおすすめです。

目的別でみる天体望遠鏡の選び方

望遠鏡を選ぶときに大事なのは、何を観察しようと思っているかです。地球と天体の距離によって、観察に必要な性能が変わってきます。わかりやすく3段階に分けてそれぞれ見ていきましょう。

月を見るのに適した望遠鏡の条件

月は見つけやすく、天体観測の入門にぴったりの対象です。満月や半月と、満ち欠けによって見え方の変化も楽しめます。

月全体が見えるようになる倍率は約50倍です。70倍以上の倍率で、クレーターがはっきり見分けられるようになります。

150倍もあれば、月の影になった部分も見えてきます。倍率の上限は「口径(mm)の約2倍」です。

月は他の天体に比べて地球からの距離が近いため、高性能な望遠鏡は必要ありません。月の観測を楽しむための望遠鏡なら、価格も抑えられるでしょう。

惑星を見るのに適した望遠鏡の条件

地上から惑星を見ると、月に比べて光の粒のように見えますが、約60倍以上の倍率で形がわかるようになります。

だいたいの目安として例に挙げると、土星の輪が見えるようになる倍率は約70倍です。はっきり見えるのは100倍あたりで、衛星もわかるようになります。140倍くらいになると土星のしま模様が見えることもあります。

惑星によって地球からの距離が異なり動きも変わるので、インターネットなどで前もって位置情報を調べると見つけやすくなります。惑星を観察したいなら、口径は100mm以上あるとよいでしょう。

星雲・星団を見るのに適した望遠鏡の条件

星雲・星団は暗くて淡いので、口径が小さめの天体望遠鏡では見つからないか、ぼんやりしたもやのようにしか見えません。

口径が大きくなるにつれ、ぼんやりしていたものが美しい星の集まりだとわかるようになります。はっきり見たいなら口径80mm以上がおすすめです。

ある程度、口径の大きい望遠鏡を選ぶなら、どうしても反射式・カタディオプトリック式の方が安くて高性能になります。操作の難しい中~上級者タイプですが、自動導入機能があれば星を自動で探せます。

小学生から始めるおすすめ望遠鏡3選

初めて天体観測する人や、小学校の子ども向けに選びたいおすすめの望遠鏡を紹介します。見える範囲や扱いやすさ、観測する場所などを考えて合ったものを見つけましょう。

Vixen「天体望遠鏡 スペースアイ700」

オーソドックスな屈折式の天体望遠鏡です。対物レンズの口径は70mmと大きめで、土星の輪や木星のしま模様を観測できます。

架台は初心者にも操作しやすい経緯台式で、接眼レンズを除けば約3.3㎏と持ち運びやすい重さです。簡易的な赤道儀としても使えるため、操作に慣れれば特定の星を長時間追尾することも可能です。

望遠鏡の調整は一般に難しいとされますが、このモデルは微動ハンドルにより上下・水平方向の細かい調整が可能です。

キャリングバッグはもちろん、星座早見盤や星空ガイドブックも入っています。必要な要素がそろった入門向けの望遠鏡です。

スコープテック「ラプトル 60」

同シリーズのラプトル50に改良を加えた屈折式です。対物レンズが一回り大きい約60mmになり、光を集める力も約1.5倍になりました。高い品質を誇る日本製のレンズは、土星の輪や木星のしま模様を観測できます。

天体に照準を合わせるうえで重要な、土台の安定性も向上しています。自分の背の高さに合わせて三脚が伸び縮みするため、小学生から大人まで無理のない高さで使い続けられるのも魅力です。

組み立て方法がわからない場合も、サポート動画で確認できるため安心です。惑星の観察も楽しみたい人向けの、長く愛用できる天体望遠鏡になります。

Vixen「CELESTRON 天体望遠鏡 Astro Fi5 SCT」

スマートフォンから操作できる、初心者に優しい反射式です。通常の反射式は望遠鏡の設定が難しく、初心者向きとはいえません。

「CELESTRON 天体望遠鏡 Astro Fi5 SCT」は、スマートフォン入力の自動追尾・自動導入機能によって簡単に目的の星を見つけられます。

天体望遠鏡全体の重さは7.7kgで持ち運びも可能です。屈折式ではあまり見られない127mmの大口径により、月や惑星だけでなく星雲まで観察できるのが魅力です。

《まとめ》子ども向け望遠鏡は目的に合わせて選ぼう

小学生が天体望遠鏡を使い始める場合は、使い方が簡単でお手入れも手軽な「屈折式」が適しています。

見える範囲を決める口径の選び方は、天体望遠鏡で何を観察したいのかに左右されます。観察したい天体が遠くて暗いほど、より大きな口径の望遠鏡が適しています。

月を見るなら倍率が70倍でも十分ですが、惑星を見たいなら100倍は欲しいところです。倍率の上限は「口径(mm)の約2倍」になります。望遠鏡を買う前に、何が見たいのかや今後も長く使っていくのかを考えてみましょう。

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構成・文/HugKum編集部

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