明けの明星は、いつでも見えるわけではありません。無駄足を踏んでしまわないよう、明けの明星に関する基礎知識・観測できる時間帯・方角について詳しく知っておきましょう。観測をより楽しくする方法や、金星に関する豆知識も紹介します。
明けの明星とは?
明けの明星とは「金星」の別名です。まずは、この別名が付けられた理由について紹介します。また、「宵の明星」との違いについてもチェックしておきましょう。
夜明け前に見える金星の呼び名
金星が明けの明星と呼ばれるのは、夜明け前からうっすらと空が白んでくる時間帯にかけて、金星がひときわ明るく輝くためです。
空に輝く星のほとんどは「恒星」で、星自身が燃えて輝いています。金星は地球と同じく太陽の周りを回る「惑星」ですから、金星自体は光を放ちません。
金星が輝くのは、太陽の光を反射しているからです。地球に近いだけではなく、表面が分厚い雲に覆われているために光をより反射しやすくなっています。
なお、金星は地球のすぐ内側を回っているので、地球から見て太陽の逆側に金星が来ることはありません。つまり、金星は決して真夜中に見ることのできない星なのです。
宵の明星との違いもチェック
金星には「宵の明星」という呼び名もあります。同じ金星ではありますが、明けの明星とは観測できる時間帯が異なります。宵の明星が見られるのは、夕刻から日が沈んで間もない頃です。
日が沈んで最初に見える星を「一番星」といいますが、たいていの場合、一番星といえば宵の明星であると思ってよいでしょう。太陽や月を除けば、金星は最も輝いて見える星だからです。
時々、宵の明星が月のそばに来ることがあります。細い三日月と金星が接近する幻想的な天体ショーはとりわけ美しく、思わず目を奪われることでしょう。
明け、宵の明星を観測してみよう
金星が観測できるかどうかは、太陽や地球との位置関係によります。明けの明星・宵の明星、それぞれの観測方法について詳しく見ていきましょう。
見える時間帯や方角について
金星は、地球から見て太陽と全く同じ位置にくるときがあります。太陽の内側で重なったときは「内合」、外側で重なったときは「外合」と呼ばれます。この二つの「合」のときは金星は見えません。
内合が過ぎると、金星は約半年の間、「明け方の東の空」に明けの明星として輝き始めます。外合になるといったん姿を消し、次は「夕方の西の空」に宵の明星として観測できるようになるのです。
金星は合を過ぎるまで、約1~3カ月の間見えにくくなります。また、明けの明星と宵の明星が同時期に見られることはありません。
なお、2020年12月頃までが明けの明星の見ごろです。3月下旬に外合を迎え、21年5月下旬頃からは宵の明星が観測できるでしょう。
楽しく観測する方法
明るく輝く金星は比較的見つけやすい天体です。しかし、より簡単に観測するために「金星の見える時期の確認」と「双眼鏡や望遠鏡の準備」は抜かりなく確認しておきましょう。
先ほども述べたように、金星は時期によって見える時間帯や方角が異なります。無駄足にならないよう、何時頃どの位置に見えるのかチェックしておきましょう。
また、金星は太陽光を反射して光るため、月と同じように満ち欠けがあります。形や大きさの様子も見たいときは、双眼鏡や望遠鏡が欠かせません。
金星に関する豆知識もチェック
金星について詳しく知っておくと、実際に目にしたときの感動もより大きくなるでしょう。大人も子どもも「おっ!」と思うような豆知識について紹介します。
英語名など海外での呼び名
英語でいうと金星は「Venus(ビーナス)」です。ビーナスは金星という意味のほか、愛と豊穣(ほうじょう)と美の女神の名前としても知られています。
古代ギリシャ神話では愛と美の女神・アフロディーテに例えられ、古代メソポタミアでは美の女神・イシュタルとも呼ばれていました。
最も輝くとき−4.7等にもなる金星は、1等星の100倍以上明るくなります。その女神のように際立つ美しさで、はるか昔から金星は人々の目を引きつけてきたのでしょう。
金星の1日はとても長い
金星も地球と同じように自転していますが、「自転速度が地球よりもかない遅い」ということをご存じでしょうか。
地球は公転周期が365日、自転周期が1日である一方、金星の公転周期は225日、自転周期は243日です。周期だけ見れば、1日が終わる前に1年が過ぎてしまう計算になります。地球で暮らしているわたしたちの常識からはなかなかピンときませんよね。
金星の自転はほかの多くの惑星と逆回転です。そのため、1回自転する間に太陽が2回昇って2回沈み、約58日ごとに昼夜が入れ替わります。
朝から晩までを1日とするなら「地球でいう約117日間が金星の1日である」といえるでしょう。
地球の姉妹星とも呼ばれる
金星は地表は500℃近くの高温に保たれ、大気のほとんどは二酸化炭素、おまけに濃硫酸の雲に覆われたとても過酷な環境の惑星です。それにもかかわらず、金星は地球の「姉妹星」といわれています。
実は、生まれたばかりの地球と金星はとてもよく似ていたと考えられているのです。現在もこの二つの惑星は、大きさ・質量・内部構造などはほとんど変わりません。
地球は気温が下がり海ができて、やがて大気で覆われるようになりました。もし地球があとほんの少し太陽に近かったら、金星と変わらない環境だったかもしれませんね。
ひときわ明るく美しい星を観測しよう
1等星よりも輝く金星は、周りが多少明るくても見えるため、比較的観測しやすい星です。金星がきちんと見られるように、前もって時期や時間帯をチェックしておきましょう。
肉眼でも十分に見えますが、満ち欠けや大きさまではっきり観測したければ、双眼鏡や望遠鏡を持っていくことをおすすめします。子どもを連れていくときは、暗い夜道の足元にも十分注意しましょう。
観測に向かう道すがら面白い豆知識を披露してあげると、子どもの瞳も金星と同じくらいきらきらと輝くかもしれませんね。
構成・文/HugKum編集部