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人間と野生動物との共存は世界中の課題
最近、テレビのニュースをつけると、毎日のようにクマの話題が出てきますね。街の中にクマが現れて、人が襲われたり、お店に入り込んだりする映像を見て、怖いなと感じている人も多いと思います。
「どうして急にこんなことになったの?」と不思議に思いますよね。実は今、日本だけでなく、世界中で人間と野生動物がどのように一緒に生きていくかという問題が注目されているのです。
クマによる被害の理由は、気候変動によるエサ不足や、里山の減少
まず、日本でクマ被害が増えている理由から見ていきましょう。一番の大きな理由は、森の中でクマの食べるものが減っていることです。気候が変わってエサとなるドングリが不作となり、お腹を空かせたクマが食べ物を求めて街まで降りてきています。
それに加え、昔は森と街の間に「里山(さとやま)」という場所があり、そこには人が手入れをする畑や林がありました。そこが人間とクマの境界線になっていたのですが、今は里山の手入れをする人が減ってしまい、どこからが街でどこからが森なのか、クマにとっても分からなくなってしまっているのです。

アメリカやカナダの対策は、ゴミの管理を徹底
では、世界ではどうしているのでしょうか。たとえば、巨大なハイイログマ(グリズリー)などが生息しているアメリカやカナダの国立公園周辺では、日本よりもずっと前から徹底した対策が取られています。
彼らが一番大切にしているルールは「クマに人間の食べ物の味を覚えさせない」ということです。一度でも人間の食べ物やゴミの味を覚えたクマは、必ずまた戻ってきます。そして、人間に近づくようになり、最終的には危険だからと殺されてしまう運命になります。だからこそ、向こうでは「ゴミ管理」がとても厳しいのです。
アメリカのクマが出る地域では、「ベア・プルーフ(対クマ用)」と呼ばれる特別なゴミ箱が使われています。これは、クマの強力なツメや力でも絶対に開けられないように作られた、とても頑丈なゴミ箱です。
ふたには特殊なロックがかかっていて、人間の手でしか開けられない仕組みになっています。キャンプ場でも、食料は車の中や専用のロッカーに入れないと、罰金を払わなければならないこともあります。
「クマがかわいそうだから食べ物をあげる」のではなく、「クマを殺さないために、絶対に食べ物を与えない」という考え方が、大人から子どもまでしっかりと身についているのです。
ヨーロッパでは電気柵や番犬を活用

また、ヨーロッパの国々でも、クマとの共存に向けた努力が続いています。羊などの家畜をクマから守るために、電気柵(でんきさく)というビリっと電気が走る柵を設置したり、クマを追い払うための特別な訓練を受けた犬(番犬)を飼ったりして、クマを傷つけずに追い払う工夫をしています。
大切なのは、クマをただ怖がって駆除するだけではなく、「どうすればクマが森から出てこなくて済むか」を人間が真剣に考える点です。
クマを街に引き寄せない努力が必要
日本でも、こうした世界の知恵を取り入れる動きが少しずつ始まっています。私たちにできることは何でしょうか。それは、クマを街に引き寄せないことです。
家の周りに生ごみを放置しないことや、庭にある柿や栗の実をそのままにしないことがとても大切です。クマは決して人間を襲いたくて街に来ているわけではありません。彼らも生きるために必死なのです。
この問題に正解はありませんが、世界中の国々が共通して言っていることがあります。それは「人間が行動を変えなければならない」ということです。森はクマの家であり、街は人間の家です。その境界線をもう一度しっかりと作るために、ゴミの出し方を工夫したり、藪(やぶ)を刈り取って見通しを良くしたりするなど、地域の大人たちと協力してできることから始めていく必要があります。
他人事と思わずに、私たち人間と動物がどうすればお互いに傷つけ合わずに暮らせるのか、みなさんもぜひ一度考えてみてください。
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記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバルサウスの研究に取り組む。大学で教壇に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。
