アンドンミルク、じゃがいもの“みみ”。子どもの言い間違い、たどたどしい言葉をノートに書き溜めて《子どもと紡ぐ彩りデイズ》vol.3

子どもとの毎日は、カラフルで鮮やかな瞬間だけでなく、大変なことや葛藤も含めてさまざまな色(感情や体験)に満ちていますよね。時には、喜怒哀楽をうまく言葉にできない気持ちが、脳内をぐるぐるすることも。モンテッソーリ教師・杉浦あきえさんの連載「今日は何色?子どもと紡ぐ彩りデイズ」では、あきえさんご自身の子育て中の脳内をそのままエッセイとしてつづります。

連載3話目は、子どもならではの言葉について。

・杉浦あきえ:モンテッソーリ教師


・夫:同じ年で多趣味
・長女:9歳(2016年生まれ)、何かを考えたり言葉にしたりすることが大好き
・次女:4歳(2021年生まれ)、天真爛漫でおしゃべりが止まらない

愛おしい、幼い子どもの言葉

「あざまけと アンドンミルク、ほしい」
「あ〜しわ あせ〜」
「このみみ、とるの?」

幼い子どもがこぼす、たどたどしい言葉。

未完成ゆえの愛らしさが詰まった言い間違いは、実はとても儚いものだ。その瞬間にしか聞くことができず、書き留めておかなければ、砂時計の砂のように記憶からこぼれ落ちてしまう。

だから私は、娘たちの「今」を忘れたくなくて、ノートにそっと書き溜めるようにしている。

冒頭の「あざまけと アンドンミルク」は、次女がお気に入りの飲み物を自分の言葉で表現したときのもの。彼女は、甘酒をアーモンドミルクで割って飲むのがお気に入り。

甘酒が「あざまけ」。
アーモンドミルクが「アンドンミルク」。

一生懸命に伝えようとするその響きが愛おしくて、私は今もこの言葉を記憶の宝箱にしまっている。

言い間違いは、期間限定の宝物

また別のある夏の日、家族でキャンプに出かけた。

夫がテントを張る傍らで、娘たちは自分の椅子を組み立てる。小さな手で手伝いながら、ようやく完成した椅子。腰を下ろした次女が、ふぅと息をついて言った。

「あ〜しわ、あせ〜〜」

じりじりと照りつける太陽、眩しい夏。けれど、満足げに微笑む娘の瞳の輝きに比べれば、お日様の光さえ霞んで見えた。

いつからだろう。私たちは「できるまでの未完成」よりも「正確にできること」を重んじるようになる。けれど子どもの世界では、未完成だったものが少しずつ形を成していく過程こそが日常だ。この「言い間違い」は、大人がどれほど真似ようとしても再現できない、期間限定の宝物なのである。

言い間違いは、単なる音の入れ替わりだけではない。
時には、子ども特有の認知の仕方で物事を捉えることもある。

じゃがいもの…みみ?

長女が4歳の頃、一緒に肉じゃがを作っていたときのこと。ピーラーを使いたくて仕方がない彼女は、一生懸命にじゃがいもの皮を剥いていた。茶色の皮が剥がれ、白い部分が見えてくる。そのとき、娘が1ミリの迷いもなく、自信たっぷりに尋ねてきた。

「ねえママ、ここの“みみ”、とる?」
「みみ……?」

聞き返すと、娘は「そう、みみ!これだよ」と、ピーラーの横にある突起でくり抜くじゃがいもの「芽」を差した。

「あ〜! “め”だね! “め”って言うんだよ」

思わず吹き出してしまう私を見て、本人は至って真剣な顔。

「えっ、これ“め”なの? “みみ”だと思ってた!」

彼女の中で「芽」は「目」になり、そこから連想が広がっていつのまにか「耳」にたどり着いたのだろう。そんなとっぴな記憶の繋がりも物事の捉え方も、そのときにしか出合えない宝物だ。

こうした「期間限定」の光景は、過ぎ去ってしまえば、強烈なもの以外は音を立てずにホロホロと崩れ去ってしまう。

だから、私は今日もノートを開く。

時々ページをめくれば、あの日の情景が鮮やかに蘇り、当時の娘たちにまた会える気がするから。

前回の話はこちら

イヤイヤと泣き暴れる娘をかかえ、横断歩道を逆走したあの日。モンテッソーリ教師・杉浦あきえが綴る育児の話。《子どもと紡ぐ彩りデイズ》vol.2
・杉浦あきえ:モンテッソーリ教師・夫:同じ年で多趣味・長女:9歳(2016年生まれ)、何かを考えたり言葉にしたりすることが大好...

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プロフィール

杉浦あきえ モンテッソーリ教師

国際モンテッソーリ教師(AMI)

幼稚園教諭、保育士、小学校教諭。二児の母。

 

幼い頃から夢見た保育職に期待が溢れる思いとは裏腹に、現実は「大人主導」の環境で、行事に追われる日々。そのような教育現場に「もっと一人ひとりを尊重し、『個』を大切にする教育が必要なのではないか」とショックと疑問を感じる。その後、自身の出産を機に「日本の教育は本当にこのままでよいのか」というさらなる強い疑問を感じ、退職してモンテッソーリ教育を学び、モンテッソーリ教師となる。「子育てのためにモンテッソーリ教育を学べるオンラインスクール Montessori Parents」創設、オンラインコミュニティ”Park”主宰。著書に『モンテッソーリ教育が教えてくれた「信じる」子育て』(すばる舎)、『モンテッソーリ流 声かけ変換ワークブック』(宝島社)、『子育ての「引き算」』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『子育ての“イラッ”“モヤッ”を手放す本』(小学館)。

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イラスト/カラシソエル

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