・杉浦あきえ:モンテッソーリ教師

・夫:同じ年で多趣味
・長女:9歳(2016年生まれ)、何かを考えたり言葉にしたりすることが大好き
・次女:4歳(2021年生まれ)、天真爛漫でおしゃべりが止まらない
愛おしい、幼い子どもの言葉
「あざまけと アンドンミルク、ほしい」
「あ〜しわ あせ〜」
「このみみ、とるの?」
幼い子どもがこぼす、たどたどしい言葉。
未完成ゆえの愛らしさが詰まった言い間違いは、実はとても儚いものだ。その瞬間にしか聞くことができず、書き留めておかなければ、砂時計の砂のように記憶からこぼれ落ちてしまう。
だから私は、娘たちの「今」を忘れたくなくて、ノートにそっと書き溜めるようにしている。
冒頭の「あざまけと アンドンミルク」は、次女がお気に入りの飲み物を自分の言葉で表現したときのもの。彼女は、甘酒をアーモンドミルクで割って飲むのがお気に入り。
甘酒が「あざまけ」。
アーモンドミルクが「アンドンミルク」。
一生懸命に伝えようとするその響きが愛おしくて、私は今もこの言葉を記憶の宝箱にしまっている。
言い間違いは、期間限定の宝物
また別のある夏の日、家族でキャンプに出かけた。
夫がテントを張る傍らで、娘たちは自分の椅子を組み立てる。小さな手で手伝いながら、ようやく完成した椅子。腰を下ろした次女が、ふぅと息をついて言った。
「あ〜しわ、あせ〜〜」
じりじりと照りつける太陽、眩しい夏。けれど、満足げに微笑む娘の瞳の輝きに比べれば、お日様の光さえ霞んで見えた。

いつからだろう。私たちは「できるまでの未完成」よりも「正確にできること」を重んじるようになる。けれど子どもの世界では、未完成だったものが少しずつ形を成していく過程こそが日常だ。この「言い間違い」は、大人がどれほど真似ようとしても再現できない、期間限定の宝物なのである。
言い間違いは、単なる音の入れ替わりだけではない。
時には、子ども特有の認知の仕方で物事を捉えることもある。
じゃがいもの…みみ?
長女が4歳の頃、一緒に肉じゃがを作っていたときのこと。ピーラーを使いたくて仕方がない彼女は、一生懸命にじゃがいもの皮を剥いていた。茶色の皮が剥がれ、白い部分が見えてくる。そのとき、娘が1ミリの迷いもなく、自信たっぷりに尋ねてきた。
「ねえママ、ここの“みみ”、とる?」
「みみ……?」
聞き返すと、娘は「そう、みみ!これだよ」と、ピーラーの横にある突起でくり抜くじゃがいもの「芽」を差した。
「あ〜! “め”だね! “め”って言うんだよ」
思わず吹き出してしまう私を見て、本人は至って真剣な顔。
「えっ、これ“め”なの? “みみ”だと思ってた!」
彼女の中で「芽」は「目」になり、そこから連想が広がっていつのまにか「耳」にたどり着いたのだろう。そんなとっぴな記憶の繋がりも物事の捉え方も、そのときにしか出合えない宝物だ。
こうした「期間限定」の光景は、過ぎ去ってしまえば、強烈なもの以外は音を立てずにホロホロと崩れ去ってしまう。
だから、私は今日もノートを開く。
時々ページをめくれば、あの日の情景が鮮やかに蘇り、当時の娘たちにまた会える気がするから。
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プロフィール
国際モンテッソーリ教師(AMI)
幼稚園教諭、保育士、小学校教諭。二児の母。
幼い頃から夢見た保育職に期待が溢れる思いとは裏腹に、現実は「大人主導」の環境で、行事に追われる日々。そのような教育現場に「もっと一人ひとりを尊重し、『個』を大切にする教育が必要なのではないか」とショックと疑問を感じる。その後、自身の出産を機に「日本の教育は本当にこのままでよいのか」というさらなる強い疑問を感じ、退職してモンテッソーリ教育を学び、モンテッソーリ教師となる。「子育てのためにモンテッソーリ教育を学べるオンラインスクール Montessori Parents」創設、オンラインコミュニティ”Park”主宰。著書に『モンテッソーリ教育が教えてくれた「信じる」子育て』(すばる舎)、『モンテッソーリ流 声かけ変換ワークブック』(宝島社)、『子育ての「引き算」』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『子育ての“イラッ”“モヤッ”を手放す本』(小学館)。
Instagram @montessori_akie
Voicy モンテッソーリ子育てラジオ
公式HPは>>こちら
イラスト/カラシソエル
