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中国が沈黙をしていることを知っていましたか?
2月末にイランで大きな紛争が始まってから、早くも1ヶ月強が過ぎようとしています。ニュースでは連日、アメリカやイスラエル、そしてイランの間で激しいやり取りが行われている様子が報じられていますね。
世界中の国々が「戦争を止めるべきだ」とか「イランの味方をする」といった意思表示をしていますが、その中で、世界でもトップクラスの力を持つ中国が、驚くほど静かにしていることに皆さんは気づいているでしょうか。
いつもは国際社会で大きな影響力を持つ中国が、なぜこれに対してほとんど口を閉ざしているのでしょうか。
理由1:中東が大切な買い物先だから
まず一つ目の大きな理由は、中国にとって中東という場所が「一番大切なお買い物先」だからです。中国は、工場を動かしたり車を走らせたりするために、膨大な量の石油やガスを必要としています。その多くを、イランだけでなく、イランと決して仲が良いとは言えないサウジアラビアなどの中東の国々からも買っています。
もしここでどちらかの味方をしてしまうと、反対側の国から「もう中国には石油を売らないよ」と言われてしまうかもしれません。中国としては、誰がリーダーになっても、どの国が勝っても、自分たちが困らないようにしておきたいという損得勘定があります。

理由2:中国とヨーロッパをつなぐ「一対一路」を守りたい
二つ目の理由は、中国が進めている「一帯一路」という巨大なプロジェクトを守りたいという気持ちです。これは、中国からヨーロッパまでの道や線路をつなげて、世界中で貿易をしやすくしようという壮大な計画です。
中東はこの計画のちょうど真ん中に位置する、とても重要な通り道。もし中国が紛争に深く関わって、どこかの国の敵だと思われてしまうと、せっかく作った道や港が使えなくなってしまう恐れがあります。
中国は今、下手に動いて自分の大事なプロジェクトを壊したくないと考えて、あえて沈黙という作戦をとっていると言えます。
理由3:ライバル関係のアメリカを刺激したくない
三つ目の理由は、アメリカとの関係です。中国とアメリカは、普段からどちらが世界で一番かを競い合っているライバル同士です。

今回の紛争では、アメリカがイランを厳しく攻撃する立場をとっていますが、ここで中国がイランを助けるようなことを言えば、アメリカとの対立がさらに激しくなってしまいます。
逆に、アメリカの味方をすることも、これまでの中国の立場を考えると難しいのです。つまり、下手に口を出すと自分が板挟みになって損をすると分かっているため、嵐が過ぎ去るのをじっと待っているような状態なのです。
中国の沈黙は、慎重な検討の結果
このように、中国が黙っているのは、何も考えていないからではありません。むしろ、自分の国の経済や計画を守るために、ものすごく慎重に計算をして「今は何も言わないのが一番いい」と判断しているのです。
しかし、世界からは「大きな国なんだから、平和のためにリーダーシップを発揮してほしい」と感じる国もあるでしょう。自分のことだけを考えるのか、それとも世界の平和のために動くのか。中国の沈黙がいつまで続くのか、そしてその沈黙の先に何を狙っているのかを、私たちはこれからも注意深く見守っていく必要があります。
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記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバルサウスの研究に取り組む。大学で教壇に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。

