「子どもがAIに頼りすぎて不安…」慶應義塾大学卒・タレントでエンジニアの池澤あやかさんに聞く、子どもの可能性を引き出すデジタルツールの使い方、いま親に必要な役割とは

中学生時代に第6回「東宝シンデレラ」オーディションで審査員特別賞を受賞し、芸能界デビューを果たした池澤あやかさん。現在はIT企業でソフトウェアエンジニアとして働きながら、タレント活動も行うなど、異なる分野を横断するキャリアを歩んでいます。

スマートフォンやYouTube、生成AIなど、子どもを取り巻くデジタル環境が大きく変化する今。1歳のお子さんを育てる母でもある池澤さんに、“子どもとデジタルの向き合い方”について伺いました。

デジタルとの出合いとAI時代の現在地

出合いは「ものづくりの楽しさ」

――池澤さんがデジタルに興味を持たれたきっかけを教えてください。

池澤あやかさん(以下、池澤さん):高校生の頃、ウェブサイトを作るのが流行っていた世代で、そこで少し触れたのがきっかけですね。その後、慶應義塾大学環境情報学部に進学し、授業でもウェブ制作やプログラミングに触れる機会があって、「面白いな」と感じて。そこから自然と興味が広がっていきました。

――最初から得意だったのでしょうか?

池澤さん:いえ、全然そんなことはなくて。当時は今のようにAIもなかったので、エラーが出ると自分で原因を探すしかなくて、原因を突き止めるまで1日かかることもありました。大変ではあったんですけど、ちゃんと動いたときの達成感は大きくて。その積み重ねが、楽しさにつながっていったのかなと。

「これは乗るしかない」AIという変化

――現在はどのような活動をされているのでしょうか? また、テクノロジーの変化についてはどのように感じていますか?

池澤さん:ソフトウェアエンジニアとして企業で働きながら、タレント活動や、子ども向けのプログラミング講座の講師、コンテストの審査員などもしています。

テクノロジーの分野はもともと変化が激しいのですが、その中でもAIは、これまででいちばん大きな変化だと感じています。ある程度の変化には対応してきたつもりですが、今回は規模がまったく違うというか…。「これはもう乗るしかない」と思うような変化。日々AIに触れながら、キャッチアップを続けています。

昨年9月に実施された「ITトレンドEXPO 2025 Summer」に登壇した池澤あやかさん(池澤さんXより)

「使いこなす」が前提の時代へ

――AIは突然現れて、一気に広がった印象がありますが、池澤さんご自身も驚かれましたか?

池澤さん:「ここまでできるようになったの?」と驚いたのを覚えていますし、その後の進化のスピードもかなり速いと感じています。学習するデータ量が増えることで、性能も一気に引き上げられている印象ですね。

――今は企業でも、AIを使うのが当たり前になってきているのでしょうか?

池澤さん:私が働いている会社でもかなり推奨されています。今はもう「AIを使いこなすこと」が前提で、「どれだけ業務改善に活用できたか」が評価指標に入っているくらいです。使わないと遅れてしまう、そんな感覚に近いですね。

子どもを取り巻くデジタル環境はどう変わった?

「使わない」はもう現実的ではない

――子どもを取り巻くデジタル環境も、この数年でかなり変わってきているのでしょうか。

池澤さん:デジタルをまったく使わずに過ごすのは、もう難しい時代になってきていると思います。学校でも、いわゆるGIGAスクール構想で、1人1台端末を使う環境がかなり広がっていますよね。公立でもそうした体制が進んでいて、学びの中でもデジタルが当たり前になっていく流れです。

――家庭でも「まだ早いのでは」と思っていても、完全に切り離すのは難しそうですね。

池澤さん:教材としてタブレットが配られることもありますし、学校でも家庭でも、ある程度デジタルと付き合っていく前提で考えるほうが自然かなと思います。「使わせるか、使わせないか」ではなく、「どう使うか」を整えていくことが大切になってきますね。

小さい子どもを持つ親の悩みは、やはりYouTubeとの距離感

1歳でも悩む「どのくらい見せる?」「何見せる?」問題

――プライベートでは、一昨年ママになられたとお聞きしました。池澤さんのまわりのママが、デジタル関連で悩まれていることとして多いのは、どんなことだと感じますか?

池澤さん:私の娘は今1歳8か月でまだ小さいのですが、このくらいの年齢だと、やっぱりいちばん多いのはYouTubeとの向き合い方です。「どれくらい見せていいのか」「そもそも見せてもいいのか」。悩んでいる方は多い印象ですね。

2024年に第一子を出産した池澤あやかさん(池澤さんXより)

――かなり身近なテーマですね。

池澤さん:家事をしている間だけ、少し見ていてほしい、という場面はどうしてもありますよね。だから、まったく見せないというよりは、「どんなコンテンツを」「どのくらい見せるか」。その距離感に悩んでいるご家庭が多いと感じます。

――池澤さんは、お子さんにどんなものを見せていますか?

池澤さん:我が家では、テレビ東京の乳幼児向け番組「シナぷしゅ」がYouTubeでも配信されているので、それを見せることが多いです。「赤ちゃんにテレビは見せないほうがいい」と言われることもありますが、一方でスマホではいろんな動画が見られてしまうので。その中で、安心して見せられるものを選びたいなと。

「シナぷしゅ」は、「赤ちゃんにも良質なコンテンツを」と立ちあげられた番組だそうで、そうした背景もあって安心感があります。1回20分くらいで区切りやすいのも、ちょうどいいですね。

「見る」から「使う」へ。双方向のやりとりは、大きな価値

――見せるコンテンツを考える以外に、何か気を付けていることはありますか?

池澤さん:長時間見せ続けるのはやっぱり気になるので、もう少しじっとしていてほしいときには、祖父母とビデオ通話をすることも多いです。

――それは、おじいちゃんおばあちゃんも喜びそうですね。

池澤さん:ただ“見る”だけではなくて、双方向でやりとりができるのがいいなと思っていて。会話として使えるのは、デジタルならではの良さですね。もう少し大きくなったら、オンライン英会話のような形で取り入れるのもよさそうだなと感じています。

デジタルは「学び」にもなる

子どもたちの可能性は、想像以上

――デジタルは、使い方によって、子どもたちの可能性を引き出してくれるツールにもなりそうですよね。

池澤さん:時々、学生向けのアプリコンテストに審査員として関わらせていただく機会があるのですが、どの作品も本当にクオリティが高くて驚きます。

特にAIが出てきてからは、その力をうまく取り入れているケースも多くて、大人顔負けの完成度! 勉強サポートのアプリや、寮のコミュニティアプリ、農家のお子さんが作った梨の選別アプリなど、発想も技術もとても幅広くて、見ていて面白い。デジタルは、子どもの創造力を膨らませて、それを形にする手段にもなっていると思います。

「第15回アプリ甲子園」で審査員を務めた池澤さん(2025年11月17日プレスリリースより

差がつくのは、親の“情報感度”

――デジタルに積極的に取り組んでいる子どもたちに、共通点はありますか?

池澤さん:コンテストに参加している子たちを見ていると、共通するのは親御さんの情報感度の高さです。そもそも子どもが興味のある分野のコンテストを見つけてくるのも、親御さん自身の情報感度が高くないと難しいのかなと思います。

また、親が新しいことに興味を持っていたり、実際に触れていたりするのも重要なのかなと思います。そうした姿を見せていれば、自然と子どもにもその情報が届くという側面もあると思います。

――親も一緒に取り組むとしたら、どんなものがいいのでしょうか?

池澤さん:文部科学省・総務省・経済産業省と民間企業などが連携している「未来の学びコンソーシアム」が運営している「小学校プログラミング教育ポータル」というサイトがあって、小学校での授業の考え方や、先生向けの実践事例、教材情報などがまとまっています。

その中で紹介されているものの中でも、「Scratch(スクラッチ)」はおすすめです。

「Scratch」作成画面

池澤さん:アメリカ・マサチューセッツ工科大学のメディアラボが無償で公開しているビジュアルプログラミング言語で、画面上にあるブロックを組み合わせてプログラムを作る仕組みなのですが、作ったプログラムによって、画面上のキャラクターが動いたりして、見た目にもわかりやすい。

テキストでコードを書く必要がないので、小さなお子さんでも直感的に操作できますし、「自分で作ったものが動く」という体験がしやすいのも魅力ですね。親子で一緒に触ってみる入り口としては、とてもいいツールだと思います。
こうしたブロックを使ったプログラミングを覚えると、コンピューターの中だけではなくて、micro:bitを使った電子工作もできるようになるなど、工作でできることの世界も広がるのでおすすめです。

「作りきる経験」は、これからの時代の土台になる

――こうしたプログラミングは、将来にもつながっていきそうです。

池澤さん:知識として知っているだけではなくて、実際に自分で何かを作る経験って、社会に出てからも活きてくる。これからデジタルはもっと進化していくと思いますが、その中でも「自分で作りきる」という経験は、どんな時代でも土台になる力なのかなと感じます。

――勉強面でいうと、手を動かして書いたり、繰り返し解いたりするアナログのほうが定着しやすいのでは、という声もありますよね。

池澤さん:確かに、手を動かして書くことや、同じ問題を何度も解くことには良さがありますよね。そうした積み重ねで身に付く力もあると思います。

池澤さん:一方でデジタルは、間違えた問題を自動的に繰り返し出してくれたり、別のアプローチで出題してくれたりします。実際に私が使っていたものでも、飽きずに続けられる工夫がされていて、漏れなく復習できる仕組みになっていました。そうした点を考えると、デジタルだから定着しにくい、ということは一概には言えないのかなと思います。

AI時代に求められる「親と子のスタンス」

――デジタルの力…今だとAIに頼りすぎると、自分で考えて実行する力がなくなってしまうのでは、と不安に感じる方もいらっしゃいます。それについてはどう思われますか?

池澤さん:これは子どもも大人も同じですが、AIはただ使うものというより、「一緒に課題に取り組む存在」として捉えることが大切になってきます。自分の中で目的をしっかり持ったうえで、その達成のために活用する。いわばコワーカーのような存在ですね。

実際に、大人でもただAIに任せるだけだと、アウトプットがあまり良くならないケースもあります。一方で、うまく使えている人は「一緒に考えるパートナー」として活用している印象です。関わり方ひとつで結果も変わってくるので、そうした意識は大事になってきますね。

これから必要なのは「柔軟に学び続ける力」

――親側の学びも重要なんですね。

池澤さん:一度身につけたスキルに慣れてしまうのは、誰にとっても自然なことです。ただ、それだけでは変化の速い今の時代には追いつきにくいですよね。

これから大切なのは、柔軟に学び続けること。完璧に理解しようとしなくても、「ちょっと触ってみる」「一緒に試してみる」くらいの感覚でも十分だと思います。子どもと同じ目線で新しいことに向き合っていく。その積み重ねが、結果的にいちばん力になるのかなと感じています。

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お話を伺ったのは

池澤あやかさん タレント・ソフトウェアエンジニア

2006年、第6回「東宝シンデレラ」オーディションで審査員特別賞を受賞し、芸能界デビュー。慶應義塾大学環境情報学部在学中にプログラミングに出合い、卒業後はフリーランスのソフトウェアエンジニアとしても活動。現在はIT企業にてアプリケーション開発に携わりながら、子ども向けプログラミング講座の講師やコンテスト審査員、メディア出演など幅広く活動している。プライベートでは一児の母。

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この記事を書いたのは

篠原亜由美 ライター

法学部卒業後、通信教育などを手がける教育業界の企業に勤務し、その後ライターとして、女性誌や複数のWeb媒体で、暮らしや子育てを中心としたライフスタイル分野で取材・執筆を行っている。2児の母で、子どもはすでに成人しており、中学受験や大学受験を経験。実体験をもとに、同世代の女性に寄り添えるような記事を心がけている。

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