今日からできる! 子どもの考える力と意欲を伸ばす「未来わくわく会話術」とは? ベースは一流の経営者・アスリートも実践する思考「フィードフォワード」

過去を振り返るのではなく、未来に目を向ける「フィードフォワード」は、ビジネスや教育、スポーツなどの現場に取り入れられている考え方。MLBロサンゼルス・エンゼルスで活躍中の菊池雄星選手や大学スポーツチームなどが実践していることでも知られています。たとえばスポーツの試合で負けたとき、「なぜエラーをしてしまったんだろう」と落ち込むか、「どうすれば、次の試合でエラーをしないか」と考えるか。同じ出来事でも、受け止め方によって、その後の気持ちや行動が変わってきます。前向きになれる「フィードフォワード」を親子で実践するためのコミュニケーションスキル「未来わくわく会話術」について、フィードフォワード協会理事の久野和禎代表に伺いました。

失敗を注意することが子どもの自信喪失につながる場合も

ビジネスの現場では、常に「フィードバック」が行われています。過去を見直して評価し、改善点を伝える……。ベースとなっているのは、「振り返りが大事」という考え方です。たしかに、よりよい方向に進んでいくためには、過去を見直すことも必要です。でも、フィードバックにはリスクもあるのです。

自分が失敗したときのことを思い出してみてください。イヤな気持ちになりませんか?いまさらどうにもならないことを悔やんだり、できなかった自分を責めたり……。

改善策を練るどころか、反省しすぎて落ち込んだり、自信を失ったりしてしまうことも少なくありません。特に幼い子どもの場合、フィードバックの効果はあまり期待できません。失敗などを後から注意しても、「過去の事実ときちんと向き合う」なんてことは、まだ無理。「叱られた」などのイヤな感情だけが残ってしまいがちなのです。

「これから」に意識を向ける「フィードフォワード」という思考

行動や考え方の改善につながる考え方として注目されているものに、「フィードフォワード」があります。文字通り、フィードバックとは正反対。

過去を振り返って反省するのではなく、未来に目を向けて「これからどうする?」に焦点を当てていく手法です。たとえば失敗したとき、「どうして失敗したんだろう?」ではなく、「次はどうやってうまくやろうかな?」と考えるのです。

ビジネスやスポーツの世界ではすでに取り入れられつつありますが、実は、フィードフォワードの効果がもっとも期待できるのは子どもです。もちろん、子ども自身が考え方を理解して実践するのは難しい。だから身近な大人が適切な声かけをして、子どもの意識を「これから」に向けていくことが大切なのです。

子ども版フィードフォワード「未来わくわく会話術」で自分で考える子どもに

過去にとらわれてクヨクヨするのではなく、未来を想像してわくわくしよう!そんな思いを込めて、大人とのやり取りから始まる「子ども版フィードフォワード」を「未来わくわく会話術」と名づけました。

「未来わくわく会話術」で何よりも大切なのは、子どもが「自分で考える」ことです。会話の相手である大人の役割は子どものサポートであり、正解を教えることではありません。

失敗したりイヤなことがあったりしたとき、子どもの気持ちを未来に向けるきっかけを与える。その先、どう考えるかは子ども次第です。

親の問いかけキーワードは「次はどうする?」

きっかけ作りにつながるひと言が、「次はどうする?」です。子どもがつらい気持ちを抱えているなら、まずはその感情を受け止めます。

でも、ネガティブな気持ちになった原因探しはしなくて構いません。起こってしまったことにはこだわらず、「次はどうする?」。子どもの目線を未来へ向ける言葉をかけることが重要です。

「次はどうする?」と投げかけられると、子どもはその答えを探し始めます。その過程で、自然に失敗の原因なども振り返ることになります。

「失敗した事実」と「失敗から生まれたイヤな感情」は、本来は別のものです。でも、過去の失敗を指摘されたり振り返って反省したりしてきた経験から、「失敗」と「イヤな感情」はセットになってしまっていることが多いのです。ただし、「次に生かすため」という目的がはっきりしていると、失敗を単なる事実として受け止めやすいのです。

やってみて、失敗したらまた考えればいい

「次はどうする?」を考えて子どもが出した答えは、必ずしも正解とは限りません。でも、危険を伴うようなものでない限り、本人が考えたとおりにやってみることが大切です。やってみて、失敗したら、また「次はどうする?」と考える。

大切なのは早く正解を知ることではなく、自分の力で正解にたどり着くことです。考えて行動して、うまくいかなくても立ち止まらずに、また考える。この繰り返しによって、未来を見て前進する力や自分で考える力が伸びていくのです。

「自分の気持ちに目を向ける」習慣が、未来をひらく種まきに

考える力のベースになるのが、「自分はどうしたいか」に気づくことです。「~したい」という気持ちは、過去ではなく未来につながっています。

また、「これから何をしたいのか」「どんな自分になりたいのか」を意識すると、自然にそれを実現する方法も考えるようになるでしょう。

園や学校では、周囲に合わせることや指示に従うことを求められる場面も多いため、自分の気持ちに気づきにくくなっている子も少なくありません。

日頃から、「自分はどうしたいのか」を考えさせるきっかけ作りを心がけてみてください。たとえば、「夕ごはんに何を食べたい?」「明日は何をする?」といった声がけ。シンプルな質問ですが、自分の気持ちと向き合い、「これから」を考える習慣を身につけるのに役立ちます。

大切なのは「自分で考えてできた!」という成功体験の積み重ね

子どもが朝寝坊してあわてていると、つい「早くしなさい!」「だから、早く寝なさいって言ったでしょ!」と言いたくなります。でも、「未来わくわく会話術」では、「早く起きられなかった」という過去にはこだわりません。

おすすめの声かけは、「朝から忙しくて大変だよね。明日はどうしたい?」「明日は何時に起きる?」など。もちろん、ひと言で子どもが変わるわけではありません。

でも根気よく続けるうちに、子ども自身が「もうちょっと早く起きたい」という気持ちに気づき、早起きするために自分なりの工夫や努力を始めるときが来るはずです。子ども自身が考えて実行したことがうまくいったときは、それを認めることも忘れずに。

ただし大げさにほめる必要はなく、「早く起きられたね」などとサラリと伝える程度で十分です。たとえ小さなことでも、自分の力で未来をよい方向に変えた経験には、大きな意味があります。「ほめられるため」ではなく、「自分の力でできた」という達成感が、次へのモチベーションになるのです。

未来を考える習慣が前向きに生きる力を作ります

人の脳は、一度に複数のことを考えられないといわれています。つまり、未来のことを考えている間は、過去の失敗にとらわれてイヤな気持ちになることはない、ということです。

反省することも必要ですが、行きすぎると自分を苦しめ、「失敗したくないからやめておく」という選択にもつながりかねません。

幼いうちに「次はどうする?」と考える習慣は、前向きに生きるための力になります。意識を未来に向けることで、自分で考える力が育ち、新しいことに挑戦する意欲も生まれるのです

親子で「フィードフォワード」を学べる絵本があります

文/由美村 嬉々 絵/すみもとななみ 監修/久野 和禎 講談社 1760円(税込)

みんなのために頑張りすぎてしまうリリアに、月はそっと寄り添います。子どもが自分の気持ちと向き合うためには、近くで見守る存在も必要なのです。

文/由美村 嬉々 絵/すみもとななみ 監修/久野 和禎 講談社 1760円(税込)

太陽がかけてくれた言葉で、ミックの気持ちは「これから」に向かいます。未来を思い描くきっかけとなるひと言は、親子の会話のヒントになるでしょう。

記事監修

久野和禎さん 一般社団法人フィードフォワード協会 代表

東京大学経済学部卒業、筑波大学MBA。認知科学をベースとするコーチングを学び、オリジナルメソッド「CEOコーチング」「ゴールドビジョンメソッド」を開発。「フィードフォワード®」の技法を活用して、スポーツチームのメンタルサポートなども行っている。著書に「いつも結果を出す部下に育てるフィードフォワード(フォレスト出版)」、「CEOコーチング 年商を100倍にする思考と行動の理論(日本経済新聞社)」など。

取材・構成/野口久美子

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