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「この夜泣きはいつ終わるんだろう」孤独な夜を過ごす中で出合った漫画がきっかけに
――「夜泣きカフェ(夜のママカフェ)」を始めたきっかけを教えてください。
野澤さん:私自身、現在4歳と1歳の2児の子育て中なのですが、長女が赤ちゃんの頃、夜泣きに本当に悩まされました。毎晩のように体をそり返らせて激しく泣き続けていて…。「寝たかな」と思い布団に置くとまた起きてしまい、抱っこをしたまま壁にもたれかかり朝を迎えたこともありました。
そんなときに、X(旧Twitter)で、漫画家・かねもとさんの『よなきごや』(※1)というWeb漫画を読み、「こんな場所があったらどんなに救われるだろう」と強く思いました。同じように漫画に共感するママからのコメントもたくさんあり、「自分だけじゃなかったんだ」と勇気づけられたのが最初のきっかけです。
その後、次女を妊娠したのと同時期にカフェを開くことを決め、オープンの1か月後にカフェの定休日である日曜日限定で「夜泣きカフェ」を始めることを決めました。
※1 赤ちゃんの夜泣きに疲れたママなど、必要な人の前に現れる架空の店舗「よなきごや」を描いた作品。Twitterで公開されて話題になり、2023年に電子書籍化された。
――夜泣きでいちばんつらかったのは、どんなことでしたか。
野澤さん:「この夜泣きはいつまで続くのだろう」と終わりの見えない夜にひとりでがんばらなきゃと向き合っていたことです。1〜2時間泣き続ける娘にイライラしてしまう。それなのに眠りについた子どもの顔を見ると急に「かわいいな」と思える。泣いている間はやっぱり「早く寝てほしい」「どこかに行きたい」と思ってしまうことを繰り返していました。
次女を妊娠したときには、うれしい反面「またあの夜が来るのが怖い」という当時の気持ちが一気によみがえってきました。
その頃、母親が赤ちゃんに手をかけてしまう悲しいニュースを目にすることもありました。事件を肯定するつもりはありませんが、その背景には、私と同じような孤独な夜の積み重ねも少なからずあるのではないかと感じました。日中であれば支援センターや一時預かりなど逃げ場もありますが、深夜に行ける場所や相談できる人はほとんどありません。両親や義両親にお願いできたとしても、気を遣ってしまう…だから、自分の状況は変えられなくても、ただ「今日もしんどいね」と言い合えるだけの場所があったらいいなと思ったのです。
――同じような思いを共感できる人がいるとホッとしますよね。
野澤さん:産後の入院時の授乳室がとても安心できる場所でした。深夜や明け方など、どの時間帯に行っても明かりが灯っていて、自分と同じように「ちゃんと飲めてるのかな?」と心配するママたちがいて、自分だけじゃないという安心感に何度も救われました。「泣いている赤ちゃんはうちだけじゃない」「悩んでいるのは私だけじゃない」とわかると少し気持ちがラクになりますよね。
産後初めて外出したママが来店したことも

――「夜泣きカフェ」はどのように運営されているのでしょうか。
野澤さん:日中は「Creative French Toast in Tokachi」というフレンチトーストの専門店を運営しています。定休日の日曜の夜21:00〜翌6:00に「夜泣きカフェ おやこのこや(夜のママカフェ)」を開店しています。
日中は全席テーブル席ですが、夜泣きカフェは3分の1ほどをプレイマットにし、ハイハイできるスペースや仮眠ができるスペースを設け、照明も少し薄暗くしています。残りの席で、ママたちにノンカフェインのドリンクなどを飲んでいただいています。女性なら誰でも利用可能です。
もともとは全て無料で運営していましたが、「利用するのが申し訳なくなるので少しでも払いたい」という声をいただくことが多く、ドリンク代(運営費)として200円をいただくようにしました。私も1歳と4歳の子どもたちを連れて常駐しています。

――困ったときに駆け込めるというのは、ママにとって心強い場所ですね。
野澤さん:寝かしつけるために夜中のドライブに出ていた方が、夜泣きカフェのことを思い出して寄ってくれたこともあります。先週は1か月健診を終えて初めて外出したというママが来られました。寝不足の様子で来られたため、ちょうど居合わせた産後ドゥーラの方に赤ちゃんを抱っこしていただき、お母さんにはプレイマットスペースで1時間ほど仮眠してもらいました。「久しぶりに安心して眠れました」と言ってくださって、その日は朝5時半まで一緒に過ごしました。
夜泣きカフェは日曜の夜に開店しているので、パパに寝かしつけを任せてママ友同士で来ることもあります。本を読んだり日記を書いたり、フレンチトーストを食べたりと自分の時間を過ごす方も多いです。
居場所作りを大切にするのは、不登校だった昔の自分を助けたかったから
――子育てをされながらカフェを開業するのは、大変だったのではないでしょうか。
野澤さん:もちろん大変でしたし、ひとりでは絶対にできませんでした。でも、だからこそ人に頼ることの大切さを学ばせてもらった気がします。クラウドファンディングを通じて想像もしなかった声が届いたのが、何よりの励みになりました。「大変だった」というより、楽しみが増えていく感覚でした。
私がやりたいのはカフェそのものというより、ママや中高生など、地域の様々な人の居場所を作ることです。でもその場所を維持し続けるためにはお金が必要になります。それを支えるためにカフェをやっている、いわば普通とは逆の形です。「夜泣きカフェ」は地域に必要な場所だと考えています。期限のある補助金や助成金に頼らず、カフェでの売り上げと、賛同してくださる地域の企業さんとの連携によって運営していきたいと思っています。
子育てを終えた世代の方から、「ママたちに何かしてあげたい」と物資を寄付していただくこともあります。子育て世代に向けた事業でありながら、地域の人たちへと思いが広がるのがうれしいですし、そのために今私は何ができるかと考えるとワクワクが止まりません。

――地域の人の居場所づくりを大切にされているのはなぜですか?
野澤さん:「昔の自分を助けたい」という気持ちもあるのだと思います。中学・高校時代、不登校や母の再婚などを経験し、学校にも家にも居場所がないと感じていた時期がありました。その当時、音楽に興味を持ち、ライブハウスへ行くために高校生の頃にアルバイトを始めました。お金のために働き始めただけだったはずが、職場で認められるうちに自分の居場所ができました。さらに、音楽をきっかけに全国各地へ行くことで人とのつながりができ、自分らしくいていいと感じる機会が増え、自分の中の世界が広がっていきました。
だからこそ、当時の自分と同じ思いをしている人の居場所や、これからを生きる子どもたちが暮らしやすい地域を作っていきたいと思っています。
小さな会社なので社会的なインパクトは大きくありませんが、様々な雇用の形を考えたいと思っています。何らかの形で社会の中で生きにくさを感じる方など、障害とくくらずひとりでも雇用の選択肢が増えたり、障害福祉が身近になったりするきっかけにもなればと思っています。
――10年越しに高校を卒業されたとInstagramで拝見しました。子育てをしながらでもやりたいことを実現していくモチベーションは、どこからきているのでしょうか?
野澤さん:仕事もプライベートも同じ「自分の人生の時間」だと思っていて、モチベーションが高いというより、やりたいこと、必要とされていることに対して動いている感覚ですね。誰かと比べるのではなく、その時々に自分が必要なものを選択する。そんな日々の連続の気がしています。
「ママたちは十分がんばっている!」かけがえのない仕事をしている自分を認めてほしい
――今、子育てではどんなことを大切にされていますか?
野澤さん:正直、子どもと過ごす時間は圧倒的に少ないです。「子どもがかわいい時期は今だけなんだから一緒にいてあげないと」と言われることも多く、自分はダメな母親なんじゃないかと悩んだ時期もありました。振り返るとその頃の私は自分の人生を見失い、子どもの前でも笑うことが減っていました。
だから今は、子どもと過ごすときはしっかり向き合い、働くときは働く、そして自分の人生を自分らしく楽しむ背中を見せることを意識しています。「子どもがいちばん近くで見るお母さんが笑顔でいる」っていうのを大事にしたいなと思っています。
――最後に、今、赤ちゃんの夜泣きに悩んでいるママへメッセージをお願いします。
野澤さん:とにかく「もう十分がんばっているよ!」と伝えたいです。ひとりで抱え込まないでほしいです。近くに来られる場所がなければ、夜泣きカフェに電話してほしいです。
以前、夜泣きカフェの利用料をたずねられたママに、「無料(当時)です。子育ては何よりも大変な仕事ですから」とお伝えしたら、わっと泣きだしてしまったことがありました。「ママだから」と、がんばるのが当たり前になっていたのだと思います。子育てというマニュアルもない、かけがえのない仕事をこなしているのだから、どうかご自身を認めてあげてください。
おやこのこや
営業日時: 日曜日21:00〜翌6:00(カレンダーを確認!)
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この記事を書いたのは
音楽大学卒業後、出版社勤務を経て、現在はフリーライター・編集者として活動中。小学生2人の母。主に教育系、不登校への取り組み、著名人インタビューなどを執筆しています。子育ての中で感じた疑問や発見を活かしながら記事を作成することを心がけています。
