マシなことを見つけてあげよう!【行正り香のおうちDE教育改革!Vol.1】

みなさん、こんにちは。
料理研究家の行正り香です。
この9月からHugKumで、私の子育てや教育観について連載をスタートさせて頂くことになりました。


さて、みなさんから見れば、私は料理研究家としてのイメージが強いかもしれませんが、
実は、2007年から教育に関するお仕事もしています。そのひとつが、「カラオケEnglish」。(https://karaokeenglish.com/)英語を読めない子供から、英語を読むのが苦手な大人が<音読をくり返すことで英語を学べる>アプリです。

こちらを開発したのは、自分の娘たちの英語教育がキッカケです。なんとか日本にいながら、娘たちをバイリンギャル(笑)にしたい。でも留学コストは私がアメリカに行ったときの10倍。おまけに娘たちは、お世辞にも勤勉と言えるようなタイプではない。そんな娘たちをバイリンギャルにするために、何ができるか?考え抜いて、実験しつくした(笑)果ての答えが、カラオケEnglishです。

こちらの連載では、私が母親として、どのように教育に向き合ってきたか?どのようなことを優先して、実践してきたか?英語教育は何をやって失敗してきたか?ということや、ICT教育のことも含めて、お話をシェアさせていただけたら幸いです。

料理研究家から英語教育ビジネスに

今回は、第1回目。まずは私の自己紹介から始めさせていただきます。私は福岡出身。大きな声では言えませんが、高校時代は成績がビリから一桁台でした。ある日父から言われました。「り香ちゃん、勉強好かんなら、大学行かんでいい。高卒で働きなさい。半径5キロ以内で一番になる何かを探すか、それがなかったら、マシなものを見つけて仕事にしなさい」と。 どう考えても、一番になるようなものは何もない。けれど唯一、英語の発音だけは先生から褒められたな。ひとつしか褒められたことはなかったので、「よし!これを私の職業にしよう」と、選んだ道が10ヶ月の高校留学です。

その後、何とかがんばっているうちに、学びに火が付き(笑)、その後は思いがけず短大に行き、さらには自分でもびっくり!UCバークレーに編入して卒業することができ、日本に戻って就職することとなりました。卒業後は広告代理店に入社。CMプロデューサーとして仕事をしながら、在職中に料理本を出版し、その後、二人の子供を出産したのでした。

自分が産んだ子供の顔をはじめて見たときのことです。私はギョッとしました。 笑った顔が、私が赤ちゃんの時にそっくりなのです。「困った」と思いました。「この子の人生も、ビリから一桁台か。受験勉強で落ちこぼれることは間違いない。」かわいそうだなと、胸が痛くなりました(笑)。私は偶然セカンドチャンスを与えてもらえて、代理店に勤めたり、料理研究家として書籍を出版したり、やりがいを感じる仕事に出会うことができました。でも私に似ている娘さん。日本の教育ワールドで、私と同じような子供時代を過ごせば、多分アウトです。いや、受験勉強ワールドから、退場かもしれない。

 

私は、受験勉強は向いていなかったけど、不思議なことに、アメリカの先生たちに興味を与えられると、「学びたい」「知りたい」という強い欲を持つようになりました。子供に情報を教えるのではなく、興味を与えることが大切だと、DVDや動画、サイトなど娘たちにや役立つ優れたコンテンツを探しはじめました。探してみると、英語で学べるなら、デジタル教材がたくさんある。でも日本語で学べるものはない。学校や社会が変わることを待っていては、娘たちは成人してしまう。今、やるしかない。そう思い立ち、会社を辞めて(退職金も株も、全部使っちゃいました、笑)作ったのが「なるほど!エージェント」という動画サイトです。カラオケEnglishは、こちらで開発したキャラクターやイラストを生かした、英語学習バージョンとなります。こうして人様のお力を借り、自作で作ったコンテンツで、私の娘たちの教育は始まりました。

マシなことを探す。そして褒める。

昔は、良い学校を出て、良い会社に就職すれば人生安泰の時代でした。でも娘たちが働く未来は、きっと違います。人が作ったレールに乗っかるだけでは生きていけない時代となります。世界との競争は増え、社会はもっとサバイバルが必要になり、日本だけでなく、外国と仕事をすることも、一つのスタンダードとなる可能性があります。また人間の仕事はロボットに置き換わるとも言われていますが、だからこそ逆に、テクノロジーを使う仕事は増えると言われています。
そんな予知しにくい未来の社会を生きる子供たちに対して、親としてできることは何でしょうか。学歴もそのひとつかもしれませんが、私はもっと大事なことがある、と感じました。それは子供達が「自分は何かできる!」と漠然と感じる自信です。最初から特技などある人間などいません。でも親にできることは、 “一つでもマシなことを探してあげて、褒めてあげること”だと思っています。踊るのでも、人真似でも、クレヨンしんちゃんの声真似でも何でもいい。「上手だね!」と褒めてあげると、それが将来の「マシなこと」につながり、その先の自信につながります。

私が想像する未来は、組織で働こうと、個人で働こうと、マシなこと、好きなことを仕事に出来、突出した何かを持てるどうかが大切になる世界です。決められたことを、決められた通りに行う仕事ではなく、自分が興味を持って探求したことの先に、マシだと確信を持ったことの先に、仕事が生まれるような気がしています。

私は娘たちの マシなもの”を見つけて、それを褒める“教育を実践してきました。いつか彼女たちが 「自分はこれが好き!これが得意なの」そう、自信を持って自立できるまで、ある意味私は、娘たち盲目的ファンのような存在です。何をしているかよく分からなくても、「すっごーい!すばらし〜い!」と反射的に声がけしております。(笑)「恥ずしいから、人前では絶対やめて。」と注意されることはありますが、思春期ガールズに反抗されまくるということは、、、ありません。

みなさまもぜひ、子供たちのマシなものをたくさん探して、まずは「自信」という土台を作ってあげてください。

記事執筆

行正り香|料理研究家

料理研究家。福岡市出身。高校時代にアメリカに留学後、カリフォルニア大学バークレー校の政治学部を卒業。帰国して大手広告代理店に勤務しながら料理本を出版。退職後は「なるほど!エージェント」を立ち上げ、料理家としても、テレビや雑誌などで幅広く活躍中。現在は英話学習アプリ開発「カラオケEnglish」なども手がける。『19時から作るごはん』『行正り香のインテリア』(ともに講談社)など、著書は50冊以上。また、献立づくりの悩みを解決するアプリ「今夜の献立、どうしよう?」でレシピ提案やコラムや料理のコツを動画で配信している。

 取材・文/神谷加代

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