子育てに役立つ! 【アンガーマネジメント】で自分や相手の怒りをコントロール!

アンガーマネジメントとは、1970年代にアメリカで始まった、怒り(アンガー)と上手につきあう(マネジメント)心理トレーニングです。アンガーマネジメントを身に付けることで、よりよい人間関係の輪を広げることができるようになります。

 

アンガーマネジメントの基本

感情をコントロールするスキルを持つために必要なアンガーマネジメントの基本を伝授します。自分のできる範囲から徐々に取り組んでいくと、3週間後には日々のアンガーマネジメントが習慣になっていくでしょう。

(き)気持ちと気持ちをつなぐコミュニケーション

アンガーマネジメントは、仲間を心地よくつなぐことができます。気持ちには良いも悪いもなく、ポジティブな気持ちもネガティブな気持ちもその人にとって大切な気持ちなので、否定せずにそのまま受けとめます。その後、よりよい方向に改善するために何ができるかという解決方法を考える未来志向の気持ちコミュニケーションです。

(ほ)隠れている本当の気持ちを知る

怒っている人の心には、気づいてほしい本当の気持ちが隠れています。怒りの引き金になるのは「疲れた」「寂しい」「痛い」「忙しい」など、第一次感情といわれるネガティブな気持ちです。つまり、第二次感情である「怒り」は、第一次感情を減らさない限りコントロールできません。これが怒りのわき起こる仕組みです。

(ん)価値観の基準になる「べき」を知っておく

同じ出来事を見ても、怒る人と怒らない人がいます。それは、出来事のとらえ方が違うので、感じ方が違うのです。このとらえ方の基準になるのが「べき」です。

「9時までに登園するべき」「名前は書くべき」「給食を残すべきではない」など、それぞれが持つ価値観や希望、願望を表す言葉です。「こうあるべき」の状態が崩されたとき、人は「怒り」を感じます。目の前の現実と思い描いている願望のギャップが大きいほど、怒りは強くなります。でも、「べき」は人それぞれ違います。世の中にはいろいろな「べき」があり、自分とイコールではないことを知っておくと、「そういう人もいるよね」「そういう考え方もあるよね」と思えるようになり、怒らなくてもいいことが増えていきます。

怒っている人から自分を守るためのアンガーマネジメント活用法

自分が怒りをコントロールできても、他人から発せられた怒りを受けとめなければならない場合もあります。アンガーマネジメントの基本に沿って考えることで、怒られても無駄に自分の心を傷つけずにすむ方法があります。

【1】怒りの感情ではなく内容を聞く

よりよい関係を築くためには、怒っている相手のすべてを受けとめなければいけません。怒りの感情で聞くのではなく、内容を聞きましょう。内容を聞くことに集中すれば、相手の怒りの感情に伝染しません。相手が「どうしてほしいか」を一生懸命聞いてください。相手の欲求がわかれば、問題を解決するための行動が見つかるはずです。未来志向で気持ちコミュニケーションをとろうとする姿勢は、必ず相手に好印象を与えます。

【2】怒りの裏側に集中してみる

一方で、いつまでたっても相手の欲求が見えてこない場合は、怒りのはけ口にされている可能性があります。怒りのわき起こる仕組みを知らない人は、自分の怒りの引き金になるネガティブな第一次感情に目を向けることができません。本当にわかってほしい気持ちの伝え方がわからず、怒りで伝えようとします。その場合、「怒りの裏側にどんな第一次感情が隠れているか」に集中してみましょう。「つらさをわかってほしい」「忙しさをわかってほしい」「困り感をわかってほしい」など第一次感情が見えれば、怒りを直に受けとめる必要はなくなります。

【3】普段から観察し、「べき」を拾い集める

自分の心を守るためには、相手の怒りの地雷を踏まないことも重要です。怒りっぽい人は多くの「べき」を持っている可能性があります。どんな「べき」が裏切られるとどれぐらい怒るか知っていれば、普段から気をつけることができます。怒っている相手をよく観察して「べき」を拾い集めましょう。「連絡はこまめにするべき」「ケガをさせるべきではない」などです。さらに余裕があれば、優先順位も考えてみましょう。「べき」の強弱をレベル分けしておき、強レベルの「べき」は裏切らない努力をします。もし、相手の強レベルを裏切って怒られた場合は、仕方ないと諦めてしまいましょう。

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自分の怒りをコントロールするふたつの簡単テクニック

腹の立つ出来事が目の前で起こり、怒りを感じたときに情動をコントロールできると、怒りから回避できます。これは、腹の立つ出来事に衝動的に反射しないということです。アンガーマネジメントを取り入れるはじめの一歩は、この「衝動のコントロール」です。腹が立つことが起こって怒りの感情がピークに達するまでの時間は長くて6秒です。その6秒間をなんとかやり過ごせば落ち着きます。そのためのテクニックをふたつ紹介しましょう。

【1】6秒ルール

方法 手のひらに腹が立ったことを書いてみる。

効果 実際に指で書く行動により、ひと呼吸おき、客観的に考えることができる。

【2】カウントバック

方法 数を数える。100からマイナス3ずつ引いて計算する。英語で数えるなど。

効果 頭を使って計算したり数えたりすることで、怒りから意識をそらすことができる。

 

大切なのは、怒りを手放すことです。アンガーマネジメントは怒りの感情をぶつけることなく、怒っている理由や目的、今後の解決方法や欲求を相手にわかるように伝える方法です。そのために、衝動的にならず、興奮状態から落ち着くためのテクニックを使うことをおすすめします。

記事監修

野村 恵里

coloful communications「心と気持ちコミュニケーション教室」代表。保育士。旭川荘厚生専門学院専任講師。日本アンガーマネジメント協会ファシリテーター。著書『保育者のためのアンガーマネジメント入門』『保育者のための子どもの「怒り」へのかかわり方』(ともに中央法規刊)。

 

『0・1・2歳の保育』2018年夏号 構成/大石裕美 イラスト/上島愛子

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