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物価高のシンガポールで、0ドルから楽しめる「世界遺産の朝」
親子のシンガポール生活で、いちばん好きな朝の過ごし方があります。
まだ暑さが本格的になる前の早朝、ユネスコ世界遺産に登録されているシンガポール植物園(Singapore Botanic Gardens)へ出かけ、娘と2人で緑の中をゆっくり歩くこと。そして軽く汗をかいたあと、園内で朝食をとります。

シンガポール植物園は、入園料がなんと無料。開園時間も朝5時から深夜0時までと長く、観光名所でありながら、市民が散歩やジョギングを楽しむ日常の場所でもあります。日本から友人が遊びに来たときにも、私はよくこのコースへ案内します。朝の植物園を一緒に歩き、体を動かしたあとに朝ごはんへ。
「世界遺産の中を朝の散歩コースにして、そのまま朝食をとる」
考えてみれば、なかなか贅沢なことです。
シンガポールというと、「物価が高い」というイメージが先に立つかもしれません。でも、私が紹介したいと思うことは、お金をたくさん使わなくても、心に残る時間を過ごせる場所がたくさんあることです。
世界遺産の緑の中を歩く朝も、そのひとつです。広大な園内を歩いていると、研究や植物の保全に関わるさまざまな施設を通り過ぎます。ヘリテージツリーなどの貴重な木も、いつもの散歩道の途中にごく自然に現れます。

シンガポール人の友人から、ときどき「ちょっと散歩しない?」と誘われます。「お茶しない?」ではなく、散歩に誘ってくれるのが、私はなんだかうれしいのです。それくらい、歩くことが暮らしの中に自然に溶け込んでいるように感じます。
緑豊かな公園も多く、よく親子でピクニックをします。我が家では、ピクニックバスケットが大活躍です。娘は「シンガポールは、歩いていると気持ちがいいね」とよく言います。

子どもだけじゃなく親も「学ぶ側」になる

シンガポールで感じることのひとつが、子どもだけでなく、親も学ぶ機会が多いことです。学校では「コーヒーモーニング」と呼ばれる保護者向けの集まりが毎週のように開かれ、授業で何を教えているかだけではなく、どんな力を育てようとしているかについて、先生から説明を受ける機会があります。
とはいえ、先生の英語はなかなかのスピード。私も「今のところ、もう一度お願いします!」と思うことはしょっちゅうです。それでも、子どもが毎日どんな環境で学んでいるのかを親も少しずつ知っていけるのは、ありがたい機会だと感じています。
学習面だけでなく、海外で学ぶ子どもたちへの心のケアについて取り上げられることもありました。言葉や文化の違う環境で生活する子どもが、どんな戸惑いやストレスを感じることがあるのか。そんなとき親はどう子どもの変化に気づき、支えていけばいいのか。子どもだけに新しい環境への適応を求めるのではなく、親も一緒に学んでいくという考え方が印象に残っています。

海外で暮らすからこそ、その国の歴史も親子で学ぶ
シンガポールで暮らす中で、その国の歴史について親子で知る機会もありました。娘のクラスには、シンガポール国立博物館で日本語ガイドのボランティアをしている日本人のお母さんたちがいました。このボランティアの活動開始はなんと1981年。ガイドになるには文献を読み込む研修があるそうで、いつも忙しそうでした。
シンガポール国立博物館では、第二次世界大戦中の1942年から1945年、日本がシンガポールを占領した歴史についても伝えられています。現地で暮らし、その歴史に触れることで、日本との関わりについて改めて考えるようになりました。
私も、友人がガイドを担当する日に、国立博物館を案内してもらったことがあります。また学校では、彼女たちがシンガポールの歴史を描いた絵本を日本語に訳し、子どもたちに読み聞かせてくれたこともありました。小学生だった子どもたちも、静かに聞き入っていました。
私たち家族がシンガポールと縁を持ったきっかけは、父親の仕事でした。でも、そこで暮らすということは、便利な生活や教育環境を享受するだけではないと思います。自分たちが暮らしている国と日本が、過去にどのように関わってきたのか。その歴史に触れたことは、大きな学びのひとつです。
私自身も、シンガポールのローカル向け戦跡ツアーに日本人ひとりで参加したことがあります。そこで参加者たちが口にしていたのが「Forgive,but never forget(許しても、決して忘れない)」という言葉でした。日本人ひとりでその言葉を聞いたとき、どう受け止めればいいのか言葉が出ず、体がこわばった感覚を今でも鮮明に覚えています。

大人の姿を見て、子どもも学ぶ。MRTで感じた「思いやり」
シンガポールで子どもと移動するとき、私が便利だと感じるのがMRT(地下鉄)です。駅のホームでまず目につくのが、線路とホームを隔てるガラスのホームドア。地下鉄だけでなく地上のMRT駅にも設置されており、子どもがホームを歩いていても、線路がむき出しになっていないことに安心感があります。

席を譲る大人たちを見て、子どもも自然に学んでいく
シンガポールのMRTで驚いたことのひとつが、席を譲る人の多さです。高齢の方が乗車すると、周囲の何人もの人が立ち上がり、「どうぞ」と席を譲ろうとする。そんな光景を何度も目にしました。最初の頃は、その様子に驚いたものです。

そして興味深かったのは、娘もそんな大人たちの姿を見て育っていたことです。
日本に帰国して電車に乗ったある日、娘は座席に座ると、車内をきょろきょろと見渡していました。何をしているのかと思ったら、立っている高齢の方がいないか探していたのです。
「お年寄りがいたら席を譲る」これは、私が娘に教えこんだことではありません。毎日のMRTで、大人たちが当たり前のように席を譲る姿を見ているうちに、娘にとってもそれが当たり前になっていたのかもしれません。
娘のそんな姿を見て、日々目にしていることからも、いろいろなことを吸収しているのかもしれないと感じました。シンガポールでの子育てを振り返ると、学びの場は学校の中だけではなく、駅や電車、街の中にもあるように思います。
子どもの「選ぶ力」を、社会の仕組みが後押しする
甘いものが大好きな私たち親子。糖分の摂りすぎには気をつけたいと思いつつ、甘い誘惑にはたびたび負けています。
飲み物を選ぶときの目安になる「Nutri-Grade」
シンガポールで暮らしていると、飲み物を買うときに目にするのが「Nutri-Grade(ニュートリ・グレード)」です。飲料に含まれる糖分と飽和脂肪の量をもとに、AからDまでの4段階で表示する制度で、Aに近いほど糖分や飽和脂肪が少なく、Dに近づくほど多くなります。

CとDに分類される飲料には、消費者がひと目でわかるよう、商品パッケージやメニューなどへのNutri-Grade表示が義務づけられています。また、Dに分類される飲料は、販売を促す広告も原則として禁止されています。
この制度のわかりやすいところは、信号のような色とA〜Dの表示を見るだけで、飲み物を選ぶときの目安にできるところです。娘と飲み物を買うときも、「こっちの方が糖分が少ないね」と話すことがあります。「甘いものはダメ」と制限するのではなく、何を選ぶかを親子で考えるきっかけになっています。
健康について教えるだけでなく、子どもが日々の暮らしの中で、自分で考えて選べるようにする。Nutri-Gradeは、そんな食育を日常の買い物の中に自然に取り入れられる仕組みだと感じています。
海外での子育ては、調べ、学ぶ、の連続
海外で子どもを育てることは、親も「知らないこと」に次々と出合います。常に驚き、わからなければ調べたり、詳しい人に訊いたりする。時には「お母さん、間違ってるよ」と、娘が教えてくれます。それでまた、調べ直す。そんなやりとりを重ねるうちに、いつのまにか親子で一緒に学ぶことが日常になっています。
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