麻布学園国語教諭が教える、小学校入学前に子どもの「ことばの力」を育てる遊び

子どものことばを育ててくれる、おすすめの「遊びアイデア」を国語教諭が伝授

子どものことばは、ふだんの生活の中で養われるものです。市販のドリルや通信講座を取り入れる人もたくさんいますが、そのような学習は小学校に入ってからでも十分です。それよりも、遊びを通して親子のふれ合いを大切にしたいものですね。
小学校に入学したときに、文字が書けなくても問題はありません。他の子が書けたとしても、必ず追いつきますから心配は無用です。それよりもずっと大切なことは、「ことばの力」「聞く力」「表現できる力」をつけることです。
ここからは、子どもはもちろん親も楽しめるような、ことば育ての遊びやアイデアをご紹介していきましょう。

 

単純だけど奥深い「しりとり」と「あたまとり」

しりとり

個人差はありますが、三~四歳ぐらいからは少しずつ「しりとり」を楽しめるようになってきます。やり方はご存じのとおり、ことばの最後の文字をとって、次のことばを言うゲーム。最後に「ん」がついてしまったら負けという単純な遊びです。小学校入学前でもルールさえ理解できれば楽しむことができるはずです。人数も場所も問いませんから、ことば遊びの中では最もポピュラーですね。

ヒントもOK!言葉への関心を高める機会に

しりとりでは子どもが自分の知識を総動員してことばを探すことで、ことばへの興味や関心が高まるという効果が期待できます。なかなか思いつかなくて困っているときには、ヒントを出してあげてもいいですね。
「ほら『い』がつく赤くて粒々のあるくだものは何だっけ?」
「い、いちご」
といった感じでしょうか。最初のうちは、ことばを言えたときに思い切りほめてあげると、ますます頑張るようになると思いますよ。
そのときは思いつかなかったり、知らなかったりしても、お母さんやお父さんが言うことばから少しずつ覚えていくこともあります。気づいたら子どもの方が上手だった、なんていう日もすぐにやってくるでしょう。
このように、しりとりは幼児期のことば遊びとしては最適なのですが、何回もやっていると同じことばが連続しやすくなります。「いちご」「ゴリラ」「ラッパ」「パイナップル」「ルビー」あたりはまさにしりとりに登場することばの王道でしょう。ことばのつながりがパターン化されてくると、どうしても飽きてしまいますね。

 

あたまとり

そこで、しりとりに慣れてきたなあと思ったら、次は「あたまとり」に挑戦してみてください。
「あたまとり」とは、そのことばの最初の文字を、最後の文字に当てはめたことばを探す遊びです。

たとえば「しか」の最初のことばは「し」ですね。そこで次の人は最後に「し」がつくことばを探します。

「しか」「こし」と続けることができますね。さらに「きなこ」「えき」「いえ」「さい」…と続けていくのです。

子どもが有利? 頭の固い大人が苦戦する「あたまとり」

しりとりとは発想が違いますから、そうスラスラとは出てきません。頭の中はすっかりしりとりのルールで整理されているので、しばらくは親子ともども苦戦します。いや、むしろ頭がかたくなった大人にはかなりキツイ遊びだと思います。
このような遊びを毎日の習慣にするとなれば、ほとんどの親は悲鳴をあげることでしょう。そんなつらい遊びは続くはずもありません。ちょっとしたお出かけの際などに取り組むことができればそれで十分です。たとえば電車の移動中、ドライブをしていて渋滞してしまったとき、病院の待合室など(こちらは小声で)。すきまの時間を使って、親子で「しりとり」や「あたまとり」を楽しんでみていただけるとよいと思います。

 

テーマを決めてことばを探す遊びいろいろ

ことば遊びにもう少しバリエーションをつけたいときは、テーマを決めてことばの言い合いっこをするのも楽しいものです。わが家でも人気のことば遊びをいくつかご紹介しましょう。

動物や植物などものの名前を言い合う

たとえばテーマが「動物」なら、交互に思いついた動物の名前を片っ端から言っていきます。「ぞう」「きりん」「ライオン」「くま」「うさぎ」「チンパンジー」…。さながら仮想動物園のような気分です。
これの遊びはテーマをいろいろに替えられるので、子どもを飽きさせません。「花の名前」とか「虫」「洋服」「台所にあるもの」「リビングにあるもの」というように、いろいろなテーマを設定して遊びましょう。
電車での移動中なら、車内にあるものを言っていくのも楽しいですよ。「いす」「こうこく」「つりかわ」…といった具合に。応用がききますので、テーマ探しから楽しめると思います。

国旗選手権

これは私と娘の二人でつくった遊びです。まずは、国旗と国の名前の一覧表や、あれば世界地図がいっしょについているようなポスターなどを用意してください。

国旗、国、カタカナに触れるきっかけに

さあ、このポスターを見ながら遊びます。わが家の場合、娘が直感でベスト3を決めます。特に何のルールもなく、その日の気分で決めるという、ただそれだけの遊びです。その日の気分や、ニュースなどで聞いた国の名前、色がきれいかなど実に適当な基準で選んでいますから、一位は毎回違う国になります。
オリンピックの年などは、世界各国の名前や国旗を目にする機会が多いので、この遊びはかなり盛り上がるでしょう。この遊びでベスト3を選ぶという発想も、オリンピックの中継を見て、順位には「金、銀、銅」というメダルがあることを娘が知ったからだと思われます。ロンドンオリンピックのときには、この「国旗選手権」で毎日のように日本が一位を獲得していました。そして、娘が日本選手を応援する気持ちにもつながった遊びになりました。
この遊びのメリットは、国旗を覚えるだけではなく、世界の国の名前に関心を持つようになることです。また、ほとんどの国名はカタカナで表記されているので、自然とカタカナに親しむことができますね。ここで紹介したルールは私と娘でつくったものですが、それぞれのご家庭でやりやすいようにアレンジして楽しんでほしいと思います。

スイーツの名前を言い合う

先にご紹介した動物や植物などものの名前を言い合う遊びとほぼ同じなのですが、この遊びは、空想の食べ物も登場するので別の楽しみもあります。

のびのびした想像力、発想力を養う

たとえば、はじめは「いちごババロア」「モンブラン」「チョコレートパフェ」などとスタンダードな名前を言っていますが、そのうちネタが切れてくると、苦しまぎれに「大根ババロア」「ほうれんそうモンブラン」「れんこんアイスクリーム」など、なかなかお目にかかれない組み合わせもどんどん出てきます。
ユニークなスイーツが出てくるたびに、親子でおなかを抱えて笑い転げています。あまりにも楽しいので、またおかしな組み合わせのことばを言ってやろうと、必死で考えたりするわけです。バカバカしい遊びですが、おもしろそうな組み合わせかどうかを考えるだけでも、想像力を刺激します。これもぜひお試しください。
このようなことば遊びをおすすめするのは、理由があります。それは、身の回りにあるもの、すべてのものには「名前がある」ということを、遊びを通して教えることができるからです。
少し話が飛びますが、見ることも聞くことも、そして話すこともできなかったヘレン・ケラーがまだ幼かったころ、家庭教師のサリバン先生が、ものには名前があることを伝えようと努力を重ねた、という有名なエピソードがあります。ヘレンはそのことに気づいてから、自分の身の回りにはいろいろな世界が広がっていることを知るようになります。ことばの力を養うということは、その子の世界を飛躍的に広げること。そのベースとなるのが「ものの名前」なのです。

イメージできると、同じ経験でも感じ方に格段の差が生まれる

たとえば、ハイキングに行くときには植物の名前をたくさん知っている人ほど、そのハイキングは充実した楽しい経験になると言います。鳥の声もそうですね。
「ああ、かわいい鳥の声がするなあ」だけではなく「あれは〇〇という鳥の声だな」とわかるだけで、鳥の姿は見えなくてもその姿をイメージすることができます。見たもの、聞いたことをことばに表すことができるかどうかで、同じ経験でも感じる楽しさは格段に違います。
私は子どものころ電車が好きだったので、電車に乗るたびに、片っ端から駅名を覚えて遊んでいました。そこから線路がどうつながっているのか、どこの駅での乗り降りが多いか、またそれはなぜか、周囲にはどんなものがあるのか、といったことにも興味が広がっていったものでした。
ことばに興味がある人は、それを通していろいろな楽しみを見つけられる人です。たくさんのことばを知っていれば、いろいろなことが楽しめるし、学校で作文を書かされるときに困ることもおそらくないでしょう。

 

いつもの散歩もことばを育てるチャンス

 

子供との散歩も、ことばを意識すると、また違った楽しさがあります。毎日、規則的に散歩に出かけているご家庭もあるかもしれませんが、時間もとられますし、習い事やら、もしかしたらお受験の勉強もあるので、特別に散歩の時間はとっていないご家庭の方が多いかもしれません。しかしことばの力を養う幼児期こそ、意識的に散歩に出かけることがオススメ。
外に出るといろいろなものが目に入ります。毎日同じコースを歩いたとしても、たとえば目に映る空の色は晴れていたら抜けるような水色だったり、曇っていればどんよりとした灰色だったり。夕方ならあかね色に輝く雲を見ることもできるし、一番星を見つけることもあるでしょう。

日常の中で、光、風、景色の変化をゆったりとことばにする

季節によって感じる風の冷たさや暖かさ、湿っぽさなども違います。川沿いを歩けば、川面の色も季節や空の色によってずいぶんと違いますし、太陽が出ていれば水面がキラキラと輝くときもあります。水辺にはいろいろな草も生えていますから、蝶やトンボなど虫も飛んでくるかもしれません。これは特別に自然が豊かな地域に行かなくても、都会で十分に探せる自然です。
そしてぜひ、見たことを意識的にことばにしてください。「きみどり色の草がきれいだね」「あれはアシだよ」「アゲハチョウが飛んできたね」と、状況を少しずつことばに表していきます。はじめのうちは、子どもはただそのことばを聞いているだけですが、何回か聞いているうちに、やがて自分から「アゲハチョウだ!」「空が青いね」と話し始めるはずです。

雲の形、季節の草花も、会話のキャッチボールに

私も娘との散歩では、できるだけ自然のものに目を向けるようにしています。雲の形をものにたとえて「かいじゅうみたいな雲だね」とか、草花を見て「タンポポだよ」と教えてあげたり。植物の名前にくわしくなければ「◯◯かなあ。あとで調べてみようね」と、その場をしのぐこともあります。
ともすると、散歩の機会にことばを学ばせよう、知識として定着させようという思いが先走ってしまい、シャワーのようにことばを浴びせてしまいがちです。しかし大切なことは「あれ、今日はこうだね」という発見をし、見つけた喜びを親子で共有することです。
もちろん、毎日散歩するのは大変かもしれません。まずは週末だけにするとか、お父さんのいる日にいっしょに散歩に行ってもらうとか、そういったことを習慣にしてみてはいかがでしょう。一週間の生活もメリハリをつけることで、週末の散歩がより楽しめると思いますよ。

 

小学生になる前の子どもをもつ親の、バイブルとなる本

小学校入学前にことばの力をつける魔法の本棚

「小学校入学前にことばの力をつける魔法の本棚」

幼児期の子どもに最も大切なのは、周囲の大人が手と心をかけることです。麻布学園の国語科教師で一児の父でもある著者が、ことばの力をつけるために家庭でできることを一冊の本にまとめました。幼児期にやるべきことだけでなく、安心して小学校生活に入れるよう、入学後の国語力のつけ方、辞書の使い方、自由研究などについても紹介しています。巻末には223冊のおすすめのブックリスト付きです。

(小学館 本体1,300円)
著/中島克治(麻布学園国語科教諭)
麻布中学・高校を経て、東京大学文学部卒業。東京大学大学院人文科学研究科博士課程に進んだ後、麻布中学・高校国語科教諭となる。著書に『小学生のための読解力をつける魔法の本棚』『小学生のための読解力をつける読書紹介文ノート』『中学生のための読解力を伸ばす魔法の本棚』『本物の国語力をつけることばパズル』(全て小学館)がある。
出典/『小学校入学前にことばの力をつける魔法の本棚』 再構成/HugKum編集部 写真/石川厚志

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