『娘のトリセツ』著者の人工知能研究者・脳科学コメンテイターの黒川伊保子さんに、男女脳の仕組みの違いから、“今日からできるパパの娘育て”を伺った前回。
続いて今回は、パパと娘のコミュニケーションに潜む「落とし穴」について解説します。見過ごしがちな注意点を早くから理解することで、健やかな娘育ちはもちろん、パパとママのパートナーシップの改善にもつながりますよ。
あなたはいくつ当てはまる?「娘育ての落とし穴」チェックリスト
□娘とは「恋人」のように仲がいい
□妻とは冷え切っているが、娘のことは可愛い
□仕事ばかりで、趣味という趣味がない
□家族に弱みは見せるべきではない
□娘を褒めるのは「結果を出した時」である
さて、いくつ当てはまりましたか? 一つでも当てはまるものがあれば、じつは「要注意」! その理由について、ひとつずつ解説していきましょう。
娘育ての要注意ポイントを解説!
「娘とは“恋人”のように仲がいい」
まだ幼い娘とパパは、当然仲良しでしょう。「そのこと事態はよいのですが、疑似恋人のように娘を甘やかし、ちやほやしているなら問題です」(黒川さん)。前回お伝えしたように、「自分が大好きな女の子」の脳は、思春期に向けて自我をどんどん膨らませていきます。「女の子の自我をうっかり増大させ続けてしまうと、大人になってから、本人が苦しむことに。あなたの周囲に、自意識が高すぎて、いつもイライラしている女性に思い当たるフシはありませんか?」(黒川さん)
「妻とは冷え切っているが、娘のことは可愛い」
ドキッとしたパパ、いませんか。これは先述の、「女の子脳の“自我の刈り込み”」につながっています。「女の子が成長の過程で、“世界は自分中心ではない”と知ること。そして、その重大な役目を担うのは、ほかの誰でもないパパです。パパが“娘より妻ファースト”の姿勢を見せることで、両親仲がいいという幸せな事実とともに、女の子は“自分がいちばんではない”ことを知るのです」(黒川さん)
「仕事ばかりで、趣味という趣味がない」
「娘の脳裏に、カッコいいパパを焼き付けるには、ぜひ趣味を楽しんで」と、黒川さん。キャンプや山登りのように、娘が小さいうちから楽しめるものもおすすめです。「パパが率先して趣味を持つことは、娘に、世界にはたくさんの価値観、世界観があることを知らせることになります。自我が肥大して、他人の目を気にしてばかりの女性に育ててしまわないよう、幼いうちからいろいろなものの見方を教えてあげてください」(黒川さん)
「家族に弱みは見せるべきではない」
父として夫として、それの何が悪いのかと思うかもしれません。でも、これからはぜひ、「今日、こんな失敗をしちゃったんだよ」と、時には家族に弱みを見せてください。「なぜなら、そのきっかけが、妻や娘との対話を生み出し、女性脳に充足感を与えるからです。脳は、インタラクティブ(相互作用)で活性化します。そして、“自分の働きかけで相手が反応する”ことを欲しているのです」(黒川さん)
「娘を褒めるのは、“結果を出した時”」
パパが娘を愛するのは、とても素晴らしいこと。でも、「父親の愛が、何かのバーターであるのは、絶対にダメ」という黒川さん。「いい子だから、頑張ったからという理由で娘を褒めていると、やがて父親の評価軸をクリアすることに躍起になってしまいます。学校に行けば先生の、社会に出れば上司や偉い人の歓心を買うことに腐心するような大人へと、追い込んでしまうのです」(黒川さん)。
娘への愛は、無条件であること。それが何よりも大切。娘とのコミュニケーションについて、もっと詳しく知りたいパパは、ぜひ『娘のトリセツ』をご一読ください。
文・構成/井尾淳子、小学館 出版局 生活編集部
記事監修
人工知能研究者
黒川伊保子(くろかわ・いほこ)
(株)感性リサーチ代表取締役社長。1959年長野県生まれ。人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリスト、随筆家。奈良女子大学理学部物理学料率業。コンピュータメーカーでAI(人工知能)開発に携わり、脳とことばの研究を始める。著書に『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』(講談社)『娘のトリセツ』(小学館)『コミュニケーション・ストレス 男女のミゾを科学する』(PHP新書)など多数。