「子育て」から「子育ち」へ !子どもの主体性を育む接し方のポイントを専門家に学ぶ

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教育と訳されるeducationの語源はeduce。「能力や可能性を引き出す」という意味です。本来の意味を知る福沢諭吉はeducationを「発育」とすべきと主張したそう。この連載では、教える側ではなく学ぶ側を主体とした発育をコンセプトに、最先端の教育事情を紹介します。

 

子育ち研究家、ライターとして活躍する長岡真意子さん。5人のお子さんの子育てをとおして、子どもの主体性を大切にする「子育ち」というキーワードを考えるようになったそう。子どもの力を信じる「子育ち」とはどのようなものなのでしょうか?

「子育て」から「子育ち」へ 主体性を大切にする育て方

「“子育てをする”と使うように、『子育て』の主語は親です。『してあげる』という意識がどうしても強くなり、それがいきすぎると子どもの自発的な体験が遮られてしまいます。一方、『子育ち』なら、子どもが主役。子どもにはもともと育つ力があるのだから、そこに焦点をあてるという意味で子育ちという言葉を使っています」

2男3女の母である長岡真意子さんは、「子育ち研究家」の肩書きについてそう語ります。

親の「こうなってほしい」という理想像に近づけるために、子どもの内側からあふれる好奇心や興味を待つことをおろそかにしてしまう経験を持つ人も多いでしょう。あるいは反対に、小さな興味の盛り上がりに対して過度に反応してしまうことも。

「例えば、『子どもはどうやら昆虫が好きみたい』という小さな盛り上がりの段階で、何十冊も本を買ってきて名前を覚えさせるのはいきすぎたサポートです。『昆虫の名前を知っていて天才!』など褒めちぎることも、『褒められるからやる』という行為につながってしまう可能性があるので、注意が必要。さじ加減が難しいところですが、子どもの力を信じて、子ども自身が安心して探求できる場所や環境を整えることに注力しましょう。小さな興味であれば、その環境だけ与えて自由に探求させればいいし、探求心が強まって子どもが求めてきたら、そこで初めて親が動くというスタンス。親が先回りしてしまうと子どもは『自分はこうしたい』を出せなくなってしまうので、『子どもが自分のやりたいことを周りに伝えるスキルを培う』と考えるといいかもしれません」

長岡さんの2男3女は現在中学生から大学生。オンライン授業で全員ステイホーム。

 

とはいえ、それは「子どもの言うがままに従う」ことではありません。長岡さんは、主体性を育むことは、子どもの気持ちと親の気持ちを持ち寄り、話し合って両者が納得する着地点を探ることだといいます。「我が家では、よく家族会議を開きます。リビングにホワイトボードが置いてあり、『靴下が脱ぎっぱなし』『シンクにお皿がたまっている』など、どんな小さなことでもいいので、生活の中で気づいたことを誰でもメモできる状態にしてあります。それをもとに家族会議を開き、『これはどうしたらいいかな?』と話し合う機会をつくります。そこで皿洗いを当番制にしようなど提案が生まれます。でも、またできていない日も出てくるので、さらに『なんでできなかったんだろうね?』と会議をします。それを繰り返すことで自分が生活の主体になり、『やってもらって当たり前』ではなく、自分も家族を構成する一員であるという当事者意識が芽生えます。親も『やりなさい』と上から目線で叱りつけることではなく、家族をチームと考えて力を合わせる意識が必要。そうやって話し合う過程に意味があると思っています」

子どもの成長を見守る、子育ちの姿勢には、親自身が自分を思いやる“セルフコンパッション”の意識も欠かせません。「子どもの成長というと、どうしても周りの子と比べてしまいます。それは仕方のないことですが、態度に出してしまうと子どもの心を傷つけるので気をつけましょう。成長は、子ども自身の育ちに目を向けることが大切。右肩上がりに成長するなんてことはありませんが、1年、2年という単位で考えると、成長したと感じられることがたくさんあるはずです。見守る親は、子どもに対してそれくらいおおらかだといいですよね。

子育て中の親御さんは『子どものために』が強く、自分のことが後回しになってしまいます。でもそんなときこそ、毎日寝る前に自分に向けて『今日もよくやったね』と声をかける習慣をつけましょう。自分を思いやる習慣はおおらかさにつながり、子どもにも忍耐強く接することができるようになるはずです」

子どもの主体性を育む接し方のポイント

失敗をチャンスととらえる

失敗を学びのチャンスと受け止め、「残念だったね」などと共感しながら改善点を話し合います。

「ダメ!」ではなくできることを伝える

頭ごなしに「騒ぐな!」と言うのではなく「小さな声で話そう」など、できることを伝えます。

「できない」のではなく「まだできない」だけ

今できないことには、「まだ」を付け足し「まだできない」と言いかえると希望をもたせることができます。

相手の言葉を受け取るかどうかは選択できる

他者から傷つく言葉を言われても、それに自分が同意しないなら受けとる必要はないと教えましょう。

「ダメ出し」より「ヨイ出し」をする

できていないことばかりを見るのではなく、良いところをこまめに見つけて「ヨイ出し」をしましょう。

「褒める」より「感謝」「感動する」

「褒める」は上から目線で、報酬を与えるのと同じ。一緒に喜び、感謝するほうが主体性につながります。

命令から質問形に変える

「宿題しなさい」と萎縮させる言い方ではなく「宿題はいつする?」とより主体的に考えられる言い方を心がけて。

日課チャートを作る

「着替える」、「歯をみがく」といった日課チャートを一緒に作って壁に貼り、自ら行動できるよう促します。

記事監修

子育ち研究家・ライター
長岡 真意子

「ユア子育ちスタジオ代表」。チリ出身男性と入籍、アラスカに移住。2男3女の母。5人の子がギフテッドプログラムに入り、ギフテッド教育コミュニティに関わる。現在プエルトリ在住。著書に『敏感っ子を育てるママの不安がなくなる本』(秀和システム)がある。1月26日には、第2弾となる同タイトル「立ち直る力」育成編が刊行予定。

作・著者名長岡真意子秀和システム1,300+税

世の中の5人に1人は「HSC(High Sensitive Child = 敏感っ子)」ってご存知ですか? 「ちょっとしたことで、火がついたように泣き続ける」「服のタグや縫い目の感触を嫌う」「痛みにものすごく敏感」など、あなたのお子さんに当てはまることがあれば、「HSC」かもしれません。本書は、とびきり敏感な子5人を育てたママさんライターが、HSCを理解して長所を伸ばす子育てのノウハウやお母さんのセルフケアまで解説します。

 

「発育のススメ」は『小学一年生』別冊HugKumにて連載中です。

記事監修

雑誌『小学一年生』|1925年の創刊の国民的児童学習誌

1925年の創刊以来、豊かな世の中の実現を目指し、子どもの健やかな成長をサポートしてきた児童学習雑誌『小学一年生』。コンセプトは「未来をつくる“好き”を育む」。毎号、各界の第一線で活躍する有識者・クリエイターに関わっていただき、子ども達各々が自身の無限の可能性に気づき、各々の才能を伸ばすきっかけとなる誌面作りを心掛けています。時代に即した上質な知育学習記事・付録を掲載しています。

『小学一年生』2021年2月号 別冊『HugKum』構成・文/山本章子

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