SDGsとは、Sustainable(サスティナブル)・Development(デベロップメント)・Goals(ゴールズ)の略で、「持続可能な開発目標」という意味。地球の暮らしを守るため、2030年までに解決したい17の課題目標が2015年に定められました。「親子で学ぶSDGs」では、今、全世界が取り組んでいる持続可能な循環型社会のための「新しい社会と暮らし」の実践例を紹介していきます。ナビゲーターは、武蔵野大学環境システム学科のオサム先生こと明石修准教授です。
モノを買ったりサービスを受けたときに支払う「お金」。そもそもお金ってなんだっけ? そんな素朴な疑問がムクムクと湧き起こってくる、新しいお金の仕組みがスタートしました。その名も「共感コミュニティ通貨eumo(ユーモ)」。お金の価値観や使い方が変わるeumo の生みの親である、株式会社eumo 代表取締役の新井和宏さんに、お話を伺いました。
使えば使うほど幸せになるお金、「共感コミュニティ通貨eumo(ユ ーモ)」ってなに?
2020年7月に、「共感コミュニティ通貨eumo」が利用できるスマホアプリがリリースされました。最近、巷に出回っている電子マネーの決済アプリなのかと思いきや、今までのお金に対する価値観がガラリと変わる、革新的なお金の仕組みが誕生したようです。円から縁へ、共感をベースにした新しいお金の循環からは、どのような世界が見えているのでしょうか。
―――まず、「共感コミュニティ通貨eumo」とは、どのような通貨なのでしょうか?
新井和宏さん(以下、新井さん) eumo とは、共感でお金が循環する仕組みで、使えば使うほど幸せになる通貨の単位です。全国のeumo 共感加盟店で利用できる独自の電子通貨(アプリを使用)ですが、応援したいお店や団体にギフトとしてチップを贈ることができたり、お金という手段が目的にならないように使える期限が決まっています。いわゆる“腐るお金”なので、貯めることができず循環します。また、それぞれのコミュニティごとに通貨が設定できるコミュニティ通貨機能も備えています。
―――どうして、このような通貨と仕組みを作ろうと思ったのですか?
新井さん 私は、金融の業界で仕事をしてきました。でも、リーマンショックの頃に大病を患い、立ち止まらざるを得なくなったとき、「そもそもお金ってなんだろう?」という本質と向き合うことになったのです。今、資本主義社会がいきすぎて、格差は広がる一方で、たった26人が世界中のお金を占領するという、富の偏在が起きています(2019年、国際NGO「オックスファム(Oxfam)」が、世界で最も裕福な26人が、世界人口のうち所得の低い半数に当たる38億人の総資産と同額の富を握っていると報告書で発表)。
にもかかわらず、すべての価値はお金という物差しで測られ、利益を生むための競争社会で、資源と労力は搾取され、地球も人も疲弊しています。これは、お金の定義が悪いのだと気づきました。正直者がバカを見るような今の世界を変えるには、新しい金融の仕組みを美しくデザインすることが必要だと思い、eumo にたどり着きました。
スマホにアプリをダウンロードし、チャージをしたら、eumoの価値観を共有するお店やコミュニティでeumoを使う。詳細はホームページをチェック! https://currency.eumo.co.jp/
―――eumo に託した、お金の新しい定義とは?
新井さん 法定通貨であるお金とは、みんなの共同幻想で成り立っています。貨幣そのものに価値はありません。そもそもモノやサービスを受け取るための手段でしかないのに、いつの間にか目的になってしまっている。ここを変えられる仕組みがあればいいわけです。お金とは、個人が所有するものではなく共通のもので、「ありがとうの気持ち」を循環させるため、「人が幸せになる」ための手段であると。eumo を通じてお金の定義が変われば、お金よりも大切なものが残せる素敵な社会になるはずです。そんな世界を「共感資本社会」と名付けて、目指しています。
―――共感資本社会について、もう少し教えてください。
新井さん 共感という目に見えない、お金に換算できない価値を大切に育み、それを基礎(資本)として活動していける社会のこと。共感がベースにあれば、お金に振り回されることなく、幸せを目的にできる社会がつくれるはず。ですから、eumoは、面倒くさいことがいくつかあります。例えば、コインは3ケ月で期限が切れたり、加盟店になるには推薦人が3名必要だとか。この時代に不便極まりない(笑)。この面倒くささを乗り越えるには「共感」しかあり得ないし、人と人のつながりが必要不可欠。共感でつながり、人としての本来の力を取り戻す、そんな幸せな世界を共創していきたいと思っています。
茨城県「マーフィーズファーム」、京都府「飯尾醸造」、岐阜県「オーベルジュ飛騨の森」など、eumoを利用できる共感加盟店が続々誕生。
新しいお金eumoの使い方
「幸せになるための手段」とお金を定義し直したeumo。お金は貯めるものではなく、循環させるもの。さっそく、「ありがとう」の気持ちをeumo に託し、新しい循環型の世界を楽しみましょう。
スマホにeumoの決済アプリをダウンロード。eumoが使えるお店を利用したら、店舗のQRコードを読み取り、会計金額を入力(あるいは、店舗側が決済端末に金額を入力後、QRコードを利用者が読み取る)。
チップ額とメッセージを入力(任意)して、気持ちを伝える。
画面を確認して、支払いを完了。
ご縁がつながり、交流が生まれる。
チャージ方法
お店の端末や空港などにあるチャージ機(調整中)でチャージ。オンラインでのクレジットカードチャージも調整中。
記事監修
明石修准教授(オサム先生)
武蔵野大学環境システム学科准教授。主宰する「明石ラボ」では、人と自然が共生したサステナブルで循環型の社会はどのように実現できるのか、について日々、学生たちと研究と実践を行っている。専門分野は、自然エネルギーや持続可能な食と農(パーマカルチャー)、モノの消費と循環経済など。 https://akashi-lab.com/
「親子で学ぶSDGs」は『小学一年生』別冊HugKumにて連載中です。
1925年創刊の児童学習雑誌『小学一年生』。コンセプトは「未来をつくる“好き”を育む」。毎号、各界の第一線で活躍する有識者・クリエイターとともに、子ども達各々が自身の無限の可能性を伸ばす誌面作りを心掛けています。時代に即した上質な知育学習記事・付録を掲載し、HugKumの監修もつとめています。
『小学一年生』2021年2月号 別冊『HugKum』 構成・文/神﨑典子 写真提供/株式会社eumo