近年、「サステナビリティ」という言葉をよく耳にするようになってきましたが、いったいどのような内容なのでしょうか? サステナビリティの意味や取り組むことのメリット、積極的に取り組んでいる企業事例を紹介します。
サステナビリティとは
新聞やニュースなどでよく耳にする「サステナビリティ」とは、どのような意味の言葉なのでしょうか? サステナビリティの基本的な意味について解説します。
直訳すると「持続可能性」
サステナビリティは「Sustainability」というつづりの英語で「sustain(持続する)」と「ability(能力)」の二つから成り立つ言葉です。直訳すると「持続可能性」という意味になります。
地球環境と人間社会が良好な関係を保ちながら共存し、発展し続けていこうとする考え方のことです。
企業活動をするうえでも、地球環境や社会、経済などに配慮しながら、企業価値の上昇を目指すことを表します。
CSRとは意味が異なる
企業活動においては「CSR」という言葉も注目されています。CSRは「Corporate Social Responsibility」の略で「企業の社会的責任」のことです。
企業が自社の利益だけを考えるのではなく、顧客・従業員・取引先などの要求にも応え、それを満たすべきという考え方を指します。そのために企業は法令を遵守したり、説明責任を果たしたりという社会的責任を持たなければいけません。
サステナビリティとCSRは「よりよい社会を目指す」という意味で方向性は同じです。
しかし、サステナビリティは企業だけでなく、国や個人など社会全体が対象で、CSRはあくまでも企業の事業活動に限られます。
対象範囲は異なりますが、企業がCSRを意識した経営活動をすることで、結果的にサステナビリティの向上にもつながるのです。
サステナビリティの概念形成
これからの社会を考えていくうえでも重要なサステナビリティですが、その原点はどこにあるのでしょうか? サステナビリティの概念形成の歴史を見てみましょう。
1987年国連に提出された報告書から
サステナビリティという概念が、国際社会において初めて登場したのは1987年です。
「環境と開発に関する世界委員会」が公表した報告書「Our Common Future(われら共有の未来)」の中で、「持続可能な開発(sustainable development)」という概念が掲げられました。
この持続可能な開発とは「資源は有限であり、環境の保全を考えるのであれば節度を持った開発が必要」ということを意味します。これが現在のサステナビリティのルーツです。
参考:持続可能な開発(Sustainable Development)|外務省
1992年地球サミットで広く認知される
サステナビリティという言葉が広く認知されるようになったのは、1992年にリオデジャネイロで開かれた地球サミットです。
このときに持続可能な開発を実現するためには、人類がどのように行動すればよいかを記した「アジェンダ21」が採択されました。
これは地球環境への影響を最小限にしたうえで、経済的にも発展させることを目的とした計画です。以降、サステナビリティは「環境と社会が共存していくための考え方」として認知されるようになりました。
サステナビリティとSDGsのつながり
SDGsがクローズアップされたことで、サステナビリティがより注目を集めるようになりました。では、SDGsとはどのような内容で、サステナビリティとはどのようなつながりがあるのでしょうか?
SDGsとは「持続可能な開発目標」
SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略で、2030年の達成を目指す「持続可能な開発目標」のことです。2015年の国連サミットにおいて、全193カ国の間で採択されました。
開発途上国と先進国が一丸となり、環境・社会・経済の三つの側面から持続可能な開発を目指すものです。このSDGsの根底には、サステナビリティの「持続可能な開発」という概念があります。
そのため、SDGsはサステナビリティの考え方を、具体的な目標に落とし込んだものといえるでしょう。
17の目標
SDGsでは17の目標を定めています。内容は大きく三つに分かれ、一つは「社会」に関する目標です。貧困や飢餓をなくす、全ての人の健康的な生活を確保する、ジェンダー平等の実現などの6項目を定めています。
もう一つは「経済」に関する目標で、雇用の安定や経済の発展、人や国の不平等をなくすなどの6項目です。三つ目は「環境」に関する目標で、気候変動への対応や、陸・海の資源を守るという3項目があります。
そして、暴力の撲滅や法律の遵守、パートナーシップの強化が2項目あり、各国は合計17項目の目標達成に向けて努力しています。
169のターゲット
SDGsでは各目標に対して、平均10個程度のターゲットが設定されています。このターゲットとは、目標を達成するためにどのように行動して、何を達成すればよいかを示しているものです。
例えば、3番目の目標「すべての人に健康と福祉を」においては「2030年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生10万人当たり70人未満に削減する」と具体的な数値が示されています。
ターゲットをクリアするための対策を一つずつ進めていくことで、最終的に17個の目標達成につながるのです。
参考:SDGsとは? | JAPAN SDGs Action Platform | 外務省
サステナビリティ経営のメリット
サステナビリティを意識して企業経営を行うことは、社会貢献につながるだけでなく、企業側にもメリットがあります。では、どのようなメリットが得られるのでしょうか?
企業の価値や業績が上がる
サステナビリティ経営を行うことで、企業価値が向上し、業績アップが期待できます。企業の業績を上げるには、提供しているサービスや製品の質の高さが重要ですが、それだけに影響されるわけではありません。
消費者は、社会や環境に対して価値のある活動をしている企業にポジティブなイメージを持つことが多く、商品を選ぶ理由の一つになります。それが業績アップにつながるのです。
また積極的にサステナビリティに取り組むことで、新たなビジネスチャンスも生まれ、企業価値に大きな影響を与える可能性があります。
コストの削減につながる
サステナビリティへの取り組みを進めると、企業のコスト削減につながります。例えば環境問題への対策として、省エネやリサイクルの促進、ペーパーレス化などを実施すれば、事業活動にかかるコストを減らせることになるのです。
また、業務を効率化することは人件費削減にもつながるでしょう。
このような対策を実施するためには運用の変更が生じたり、初期投資が必要になったりするかもしれません。しかし、長期的に見れば、コスト面でもプラスになることが多いと考えられます。
従業員の満足度が上がる
サステナビリティ経営を行う企業では、従業員満足度が上がるのが一般的です。社会面で課題となる、賃金の平等化や職場環境の整備などに取り組むことで、従業員は働きやすくなります。
また社会・環境問題にも積極的に関わっていけば、従業員のモチベーションアップにつながり、働きがいも感じられるでしょう。
従業員満足度が高い企業は、採用においても優秀な人材を集めやすく、会社の成長にもつながります。
サステナビリティに取り組む企業
現在、数多くの企業がサステナビリティを意識した経営に取り組んでいます。その企業の一例と、取り組み内容を紹介します。
ユニリーバ
ユニリーバは、食品・洗剤などの家庭用品を販売する企業です。ユニリーバでは2010年に「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」(USLP)を導入し、すでに10年以上サステナビリティに取り組んでいます。
自社工場で使用するエネルギーは、全て再生可能エネルギーに切り替え、世界中にある全ての工場で埋め立て廃棄物ゼロを達成するなどの成果を上げてきました。
そしてこの先も「2023年までに森林破壊を行わないサプライチェーンを実現する」「2039年までに製品からのCO2 排出を実質ゼロに」など、具体的な目標を掲げています。
サステナビリティ・ニュース | 地球と社会 | ユニリーバ・ジャパン
トヨタ自動車
大手自動車メーカーであるトヨタ自動車は「トヨタ基本理念」を元に、社会・地球の持続可能な発展への貢献を方針として掲げています。
また、2050年までの地球環境に関する長期的な取り組みとして「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表しました。その中では、「新車CO2ゼロ」「工場CO2ゼロ」「ライフサイクルCO2ゼロ」など三つのゼロチャレンジがうたわれています。
そして「水環境インパクト最小化」「循環型社会・システム構築」「人と自然が共生する未来づくり」も、このチャレンジで実現を目指す項目です。
花王
ヘルスケア用品や化粧品を販売する花王は、サステナビリティ推進の一環として「Kirei Lifestyle Plan」を策定しました。「こころ豊かに暮らすこと」を目的とし、さまざまな改革を実施しています。
容器に100%再生プラスチックや植物由来のプラスチックを採用するなど、これまでも環境に配慮した取り組みを進めてきました。
今後も2030年をめどに、電力の100%再生可能エネルギーへの切り替えや、CO2削減への具体的な目標を掲げています。
サステナビリティが求められる時代へ
企業の経営において利益を得ることは重要ですが、それだけでは事業を継続できなくなるケースがあります。消費者や投資家から高い評価を受けるには、環境や社会への貢献を意識し、事業活動を進めていくことが必要です。
地球環境はさまざまな影響で変動し、人類の生き方には多様性が求められています。このような時代であるからこそ、この先サステナビリティがより求められるようになるでしょう。
文・構成/HugKum編集部