すごい!水族館学芸員も驚くAI図鑑『LINNÉ LENS』(リンネレンズ)を使ってみた!

水族館や動物園に子どもと出かける、あるいは子どもと野山や水辺に出かけるとき、「動植物の名前がすぐに分かれば、子どもの興味関心に応えてあげられたのに」と、親として知識の不十分さを残念に感じる瞬間ってありますよね。そんな悩みを解決してくれるかもしれない、素晴らしいアプリがリリースされたと耳にしました。ずばり、かざすAI図鑑『LINNÉ LENS』です!

そこで今回は、筆者が在住する富山県にある魚津水族館に協力をお願いし、『LINNÉ LENS』の使い勝手やその機能、実力を調べてきました。もちろん、広告記事ではありません!公平な記述を心がけて紹介しますので、ぜひともチェックしてみてください。

日本の水族館で最も歴史が古い「魚津水族館」で最新のAI図鑑を活用してみた

魚津水族館

今回、協力をお願いした水族館は、富山県にある魚津水族館。同館は現存する日本の水族館の中で最も古いという歴史を誇ります。現代の建物は昭和56年に建てられた3代目ですが、開館自体は大正2年にさかのぼります。北アルプスの渓流に住む淡水魚から、富山湾に暮らす深海魚まで、地域の水生生物を中心に330種、通年で1万点の展示をする水族館になります。

魚津水族館のバックヤード。来館者はスタッフの作業風景など飼育の舞台裏も見学できる。

一方で『LINNÉ LENS』とは、

<違いがわかると、楽しくなる。知識があると、世界が輝く>(『LINNÉ LENS』の公式ホームページより引用)

というスローガンの下、(アプリをダウンロードした)スマートホンを魚や動物に向けるだけで、瞬時に生き物の名前を表示してくれるAI図鑑になります。

『LINNÉ LENS』の画面。生き物にかざすと自動で認識が始まる。イラストなどには反応しない。

日本の水族館で飼育される生き物の9割に対応したというアプリで、その認識性能は継続的に進化していくのだとか。

生き物認識の無料お試しは「1日10種類」

ウォーミングアップを兼ねて、まずはアプリをダウンロードし、無料お試し機能を使って、魚津水族館の館外にあるペンギンコーナーに向かいました。無料お試しの場合は、1日10種類まで生き物の認識が行えます。

早速、気持ち良さそうに秋空の下で日光浴をしている1頭のペンギンにスマートホンをかざすと、何のボタンを押さないでも、自動で種類の認識がスタートしました。そのスピードは驚異的で、1~2秒のうちに「ペンギン目」→「ペンギン科」と画面上で絞り込みが行われ、フンボルトペンギンと認識が示されました。すぐ背後で見切れていた(画面に入り込んでいた)ペンギンについては、ケープペンギンと表示されます。今回、館内を同行してくれた魚津水族館の学芸員・不破光大さんに挨拶を済ませた後でこの話を伝えると、

「フンボルトペンギンとマゼランペンギンは一般の人には見わけがつかない場合も多いので、なかなかの実力ですね」

との言葉がありました。

海水魚のアカムツ。ノドグロとも呼ばれる。画面内に複数の生き物が入り込む場合、一気に数体の認識が始まる。

とはいえ率直な感想として、無料お試し機能の1日10種は少なすぎます。日常の町歩きで見かけた生き物に興味本位でスマートホンを向ける分には、十分かもしれません。

しかし、水族館のように多くの生き物が同一の水槽に複数展示されている場合、画面に入り込んだ生き物は全て認識の対象になってしまいます。1回か2回、展示コーナーにスマートホンを向けただけで、無料お試し機能1日10種は終了してしまいます。間違ってスマートホンに人が一瞬映り込むと、すかさず人間まで認識されて、大事な1種を消費してしまう結果に…。その意味で水族館や動物園で利用する場合は、課金(1カ月360円、3カ月720円、12カ月1,450円)を前提に考えたいですね。

水族館の学芸員も「すごい」と驚きの認識性能

館外に居るフンボルトペンギンで腕試しをした後は、いよいよ館内に向かいます。学芸員の不破さんの同行の下で館内を周り始めます。最初は淡水魚から始まり、徐々に海水魚へ。見分けが難しいという魚に絞って教えてもらい、実際に『LINNÉ LENS』を使ってみるという作業を繰り返しました。

その実力は、驚くべき高さでした。ヤマメ、ニッコウイワナなど釣り人なら分かる程度の魚は難なく認識し、ややトリッキーな難問では、確信度85%でシマヨシノボリ、確信度99%でトヨウシノボリノボリの違いを見破って、

「すごいですね」

と不破さんを驚かせます。しかし、水槽の底に静かに横たわる生き物にかざすと、間違った表示が……。

この魚は何でしょう?

認証を行う角度が悪かったのかもしれません。スマートホンの画面上には確信度59%でドンコと表示されます。

表示はドンコ。実際はアユカケ(カマキリとの名前も)

不破さんによれば正解はアユカケで、水槽に張り付けられた解説写真にスマートホンを向けると、確信度93%でカマキリ(アユカケの別名)と表示されました。解説写真を正しく識別した点を考えると、やはりスマートホンの向け方が悪かったのかもしれません。

「アユカケはカマキリとも言うのですが、カマキリと表示すると、虫のカマキリと同じ名前になってしまいますので、当館ではアユカケと表示しています」

この辺りの不破さんの話は、AI図鑑と学芸員が思わぬ形で「コラボ」する形になり、とても興味深かったです。アプリを使った学芸員主導の館内イベントなど、今後はさまざまな可能性が広がりそうですね。

プロの学芸員と、熱心な釣り人の中間くらいの認識能力?

海水魚でも、『LINNÉ LENS』は高い認識力を見せ続けました。ゴンズイのような分かりやすい海水魚は99%の確信度で的中させ、カワハギとウマヅラハギのような似た魚も、それぞれ確信度76%、58%ながら、1~2秒で違いを見破っています。確信度が低かった理由は、水槽自体が少し暗かったからかもしれません。クエもアオリイカも93%の確信度で難なく言い当てます。

しかし、回答を誤るケースも見られました。例えば出世魚であるカンパチとブリを取り違えたり、黒い筋の数が異なるヨスジリュウキュウスズメダイをミスジリュウキュウスズメダイと認証したりと、素早く動き回る魚にはまだ弱い部分があるようです。

実際はヨスジリュウキュウスズメダイ。尻尾の部分に黒い筋があるかないかで違いが分かれるが、魚が盛んに尻尾を動かすため、AI図鑑は認識に苦戦した。

また、そもそもAI図鑑に名前が存在しない、全く歯が立たない深海魚なども一部に飼育されていて、不破さんによれば、

「プロの学芸員と熱心な釣り人(あるいは漁師)との中間くらいの実力」

だと、『LINNÉ LENS』の現時点での実力を率直に評価してくれました。ただ、『LINNÉ LENS』はAI図鑑らしく、この先も認識性能は継続的に進化していきます。聞けばプロの学芸員も分からない魚が存在したとき、専門の検索図鑑で見るべき場所(同定個所)を確かめながら、調べると言います。

『LINNÉ LENS』は親子のような一般の利用者のために開発されたアプリですが、そのうち認識性能が大幅に進化すれば、学芸員などプロが業務で使用できるレベルにまで達するかもしれませんね。

岩に擬態したオニダルマオコゼも瞬時に認識

不破さんの提案で、ユニークな条件下での認識性能チェックも行ってみました。例えば体の半分しか水中に見せていない、砂に潜ったダイナンウミヘビにスマートホンを向けたり、周囲の環境に擬態したオニダルマオコゼ、人の手によって作られた金魚のランチュウ、色彩をユニークに改良したグッピーを認証してみたりと、あれこれ試してみます。結果は全て的中。そのたび、不破さんからも称賛の声が上がります。

周囲の岩に擬態したオニダルマオコゼ。AI図鑑は擬態にもだまされない。

しかし、水中から顔しか出していないゴマフアザラシに関しては、バンドウイルカとの認証が出ました。素人目にも「これは少なくとも、イルカではないだろう……」と分かるような光景でした。アザラシは激しく動き回っていました。やはり素早い動きをする生き物は、苦手としているみたいですね。

ちなみに水中生物の展示化石には反応しましたが、『LINNÉ LENS』は魚の模型には無反応でした。全国で初めて魚津水族館で発光現象が確認されたマツカサウオのキャラクター像が、水族館の入り口に設置されています。そちらも予想通り、無反応でした。

全国で初めて、魚津水族館で発光が確認されたマツカサウオのキャラクター。口の下の青い円形部分が発行部位。生き物の解説写真には反応するが、この手のキャラクターにAI図鑑は反応を示さない。

全くの余談ですが、不破さんによると魚津水族館の館長は、このマツカサウオのキャラクター写真をご自身のLINEのアイコンに設定しているのだとか。今から100年以上前の1914年8月13日、嵐で停電した館内を職員が見回りしているときに、初めてマツカサウオが発光していると発見したと言います。旅行で北陸の富山に訪れ、魚津水族館に足を運ぶ機会があれば、マツカサウオには特別な関心を寄せたいですね。

魚津水族館。午前9時~午後5時開館。一般個人750円。小・中学生410円。幼児100円。休館日は年末年始。

以上、『LINNÉ LENS』の使用感を魚津水族館の協力の下で確かめてみましたが、いかがでしたか? もちろんですが、親子のお出かけの場面だけでなく、釣りやスキューバダイビングなど大人の趣味でも活用できます。

課金は1カ月で360円。実際に使ってみた感想としては、機能の高さと面白さで、値段的に全く高くは感じませんでした。ただ難点は、バッテリー消耗の激しさです。筆者のiPhoneが少し古いタイプだからか、1時間程度の断続的なアプリの使用で、80%ほどあったバッテリーが、一気に8%まで減ってしまいました。お出かけ先や旅行先で使用する場合は、確実に充電器を持参したいですね。

文/坂本正敬

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