Q:子どもに、お金のことはどう教えればいいですか?
お正月、子どもは祖父母などからお年玉をもらいます。でもこの年齢で、お金ってわかるの?お金について教える必要は?
●わかるのはお金の役割
子どもは、お店屋さんごっこが好きですね。例えばおもちゃの鯛焼きを並べて、にわか鯛焼き屋さんに。「4つください。はい、500円ね」と、紙でつくったお金を払うと「少々お待ちください。はい、おつりです」と1万円くれたり。おつりのほうが多いので笑ってしまいます。
めばえっ子は、買い物に行った時など、お母さんがお金を払って品物を買うやりとりを見ていて、「お金の役割」は何となく理解してきています。でも「お金の価値」は、わかっていないのです。
このくらいの年齢で、お金そのものに興味を持っている子は、日本ではほとんどいないでしょう。ですから、お金については、「お店の品物は、お金を払わなければ自分のものじゃないんだから、触っちゃダメよ」とルールを教えたり、「欲しい欲しい」と騒いでも、「お金がないから買えないよ」としつけることで充分だと思います。
●実際に使う体験をする
4歳を過ぎたら、時間や心に余裕がある時に、子どもにお金を使わせるといいかもしれません。スーパーで、お母さんとは別会計に、何か一つ、100円渡して買わせてみるとか(もちろん、お店が混雑していない時を選んで)。レジでお金を払い、店員さんからおつりをもらって「ありがとうございました」と言われるのは、子どものいい経験になります。
たまに小銭入れに10円玉をたくさん入れて持たせ、コンビニなどで袋菓子やアイスクリームを買わせるのも方法です。子どもは、ずっしりと重たく、いっぱい入っている小銭入れを持ってうれしいけれど、使うとペショッとなってがっかり。「こんなに減っちゃった」と目に見えてわかるから、お金を使うってどういうことか実感できるでしょう。
最近の都会の小学生は、電車やバスに乗る時に、交通系ICカードを使うので、切符を買うことができないそうです。そのため、どこからどこまで乗るといくらかかって、自分のお金が減るということが実感できない。
現代は、子どもが現金を払うチャンスを、大人が意図的につくってあげる必要があると思います。
●お金より価値のあることを
「お手伝いしたら、いくらあげる」というような、何でもお金に換算するのは日本の文化にそぐわないでしょう。それよりカーテンの開け閉めを子どもの役割にしたり、食事の時「ママがつくったから、○○はお箸並べてね」とか、子どもも家族の一員として、家の仕事をシェアするほうが、ずっと豊かな生活だと思います。
あるいは、暮れの大掃除の時、「天井の電気を掃除するお父さんの踏み台を押さえる」みたいな、大人の大変な仕事を手伝わせると、「僕は大事な仕事をしているんだ」と晴れがましい気持ちになります。こうしためばえっ子なりの責任感は、お金には換算できません。
子どもが霧吹きで窓にシュッシュと水をかけ、お母さんが雑巾で拭き取ったり。家族がそれぞれの持ち場で働いて、終わったら「みんな頑張ったから、今日はごちそうを食べよう!」と奮発する。そのほうが、どんなにわかりやすく、うれしい“ごほうび”でしょう。
《ママ・パパへひと言》
お年玉はもともと、神様に備えた鏡餅を年長者が家族に分配し、一年分の力を授かるというものだったとか。それが長い歴史を経て、目上から目下にお金をあげる風習になり、やがて子どもだけに、となったそう。でも今は、「親の社交のたまもの」という色合いが濃いのでは?
めばえっ子の場合は親が預かり、「お年玉を貯めておいて、××を買おうね」とすれば、すぐに使うのではなく、待つ体験や、お金をくれた人への感謝の気持ちが学べます。それが大事だと思います。
子育て担当
平山許江 先生 ひらやま もとえ
保育楽者
東京学芸大大学院への入学などをはさみ、幼稚園に20年勤務。大学教授を歴任し、現在、青木教育研究所所員。日々、保育の楽しさを探究中。著書に『子育てはどたばたがよろしい』(世界文化社)
イラスト/松木祐子