わが子が元気にすくすくと成長するためには、三食きちんと食べて早寝早起きが大切……とわかってはいても、理想通りにはいかない日も多いですよね。今日から無理なく始められて、着実に続けていける「生活リズムの整え方」を、保育のプロに教えていただきました。
「寝る子は育つ」は本当だった
「寝る子は育つ」ということわざは、科学的にも証明されています。夜寝ている間に、「成長を促すホルモン」が分泌されます。しかも、21時から0時の間は他の時間の倍以上の分泌がある、睡眠のゴールデンタイムです。
また、夜は真っ暗な部屋でぐっすり眠り、日中は明るい太陽の下でたくさん遊ぶことで、「情緒を安定させるホルモン」や「気持ちをはつらつとさせるホルモン」がしっかりと分泌されます。これらが、子どもの成長に大きな影響を与えるのです。
1~3歳は、11~12時間睡眠が理想
1歳から3歳までの理想的な睡眠時間は、お昼寝と夜を合わせて11~12時間程度です。理想は「夜9時間+お昼寝2時間」。お子さんの睡眠時間はどれくらいでしょうか? 夜寝るのが遅いと睡眠時間が足りなくなります。さらに、睡眠のゴールデンタイムを逃すと、成長ホルモンの分泌が少なくなってしまいます。
子どもの成長に大切な「良質な睡眠」をしっかり確保するには、「早寝早起き」の生活リズムが大切。
生活リズムを整えると、子供に3つの“いいこと”が育つ!
1 集中力が育つ
集中力を高めたり感情をコントロールするホルモン「セロトニン」は、ぐっすり眠って目覚めた朝に太陽の光をたっぷりと浴びると、分泌が増えます。
セロトニンの分泌が減ると、イライラしたり攻撃的になってしまいます。
2 抵抗力がつく
夜、真っ暗な部屋で静かに眠っていると、「メラトニン」というホルモンが分泌されます。
メラトニンには感染症などへの抵抗力を高める働きがあるので、ぐっすりといい睡眠がとれている子は病気になりにくい傾向があります。
3 自己肯定感が育つ
人は睡眠中に記憶を整理しています。たくさん眠ることで体験したことがインプットされ、自分のものになっていくのです。
これによって「やったことがあるからできる」という自信を持ち、自己肯定感が高まります。
生活リズムを整える7つのコツとは?
「早寝早起き」の生活リズムにシフトしていくために、今日から始められるコツを伝授します。自分たちが始めやすいものからまずトライしてみるといいでしょう。
1 まずは「起きる時間」から
理想の睡眠時間は「6時に起きて21時に寝る」ですが、すぐには難しいもの。生活リズムを「早寝早起き」にシフトするには、まず「早く起きる」ことから始めるといいでしょう。
「早く寝る」より「早く起きる」ほうが、体にとって簡単なのです。昨日より30分早く起きることから始めてみましょう。朝、カーテンを開けて太陽の光をたっぷり浴び、全身を触りながらスキンシップして、目覚めを促します。
お悩み 早起きが続きません
いきなり「6時起床!」ではなく、「30分早起き」を2週間続けて、慣れてきたらさらに30分早める、と繰り返してみましょう。
2 日中はなるべく外出する
日中外出して体をたくさん動かすことで、ほどよい疲労感によって夜ぐっすり眠ることができます。さらに、太陽の光をたくさん浴びるとセロトニン、メラトニンの分泌を促し、体内時計を正しく保ちます。
理想は、お昼寝を挟んで午前と午後の2回、1時間半ずつ外出すること。走ったりジャンプしたり遊具で遊んだり、夢中で体を動かすことでセロトニンの分泌が促され、心身ともに健やかな成長につながります。
お悩み 公園が遠くて出かけるのが大変です
お出かけといっても必ず公園へ行く必要はなく、お散歩やお買い物でもOK。午前は公園で遊んで午後はお散歩、もいいですね。
3 お昼寝は15時までに
お昼寝の時間が遅いと夜なかなか寝られず夜更かししてしまい、翌朝起きられなくてリズムが狂う、という悪循環に陥ってしまいます。理想のお昼寝時間は「12時から2時間」。午前中の予定やお昼ごはんの時間で多少のズレはあっても、遅くても15時までには終わらせましょう。
15時を過ぎても寝ているときは、起こしても構いません。13時までにお昼寝に入れるよう、なるべく午前中たくさん体を動かしましょう。
お悩み 夕方になると眠くなってしまいます
夕方眠くなるならもう少しお昼寝が必要です。13時までに暗い部屋で一緒に横になって静かに過ごすなど、体を休める習慣を。
4 夜ごはんはがんばらない
大人は、一日の食事の中で「夜ごはんがメイン」というイメージがありますが、子どもにとっては実はそうではありません。夜は食べた後寝るだけなので、手早く食べられる消化のいいもので十分。子どもには、「おにぎり」と「具だくさんお味噌汁」だけでもOKです。
その分、「お昼がメイン」と意識して、バランスのいい昼食を心がけるといいでしょう。親子で楽しいランチタイムを過ごせるといいですね。
お悩み 帰宅後に時間の余裕がありません
夜ごはんを簡単にすると準備がラクになり、時短になります。「買い物はまとめて」「朝少しでも用意」を心がけると、さらに余裕ができますよ。
5「スマホお休みタイム」を設ける
気がついたら時間が経ってる!というときは、無意識のうちにスマホを見ていませんか? 一番あわただしい時間帯である「18~21時」は、スマホを見ない「スマホお休みタイム」と決めておくのもいいでしょう。
通知が来ると気になってしまうので、スマホの「おやすみモード」などを利用して、通知が来ないよう設定してみては? 子どもが早く寝たら、ゆっくり返信できますよ。
お悩み グループでのやりとりが気になります
「18~21時はスマホお休み」とSNSのプロフィール欄に書きこんだり、日ごろから伝えておくと、すぐに返事をしなくても角が立たないでしょう
6「入眠儀式」を意識する
「寝る前にはいつも必ずこれをする」という「入眠儀式」を、日課にするといいでしょう。
おすすめはやっぱり絵本。好きな絵本を1冊子どもに選ばせて、お布団の中で読み聞かせをします。読んだ後電気を消して、小さな声でおしゃべりしたりスキンシップするなどリラックスタイムを過ごしましょう。
慣れてくると、「絵本を読んで電気を消すとだんだん眠くなってくる」という習慣が身についていきます。
お悩み ベッドに行ってから遊び出します
リラックスする雰囲気づくりが大切です。「入眠儀式」を意識してゆっくり時間を過ごしましょう。2週間~1か月程度で習慣になっていきます。
7 子育て支援センターを活用する
今日は早起きできた、昨日の夜は夜泣きが大変だったなど、日々の生活リズムについて気軽に話し合える仲間がいるといいですね。「悩んでいるのは自分だけじゃないんだ」と気持ちがラクになるはずです。
子育て支援センターに出かけると、0歳児から幼児までいろんな年齢の子どもたちが遊びにきています。みんな「子育て中の仲間」なので、愚痴や失敗談を共有したり、年上の子の親には経験談を聞いたりと、気軽にいろんな話をしてみて。
お悩み 相談できるママ友がいません
SNSを活用するのもいいでしょう。「#寝かしつけ」などのハッシュタグで検索すると、同じようにがんばっている仲間が見つかるかも
生活リズムQ&A
Q お風呂と夜ごはん、どちらを先に済ませるほうがいいですか?
A 先に夜ごはんがいいでしょう。食べた後、寝るまでに時間があるほうが消化・吸収が進み、睡眠の質が上がります。
また、入浴すると体温がぐんと上がった後、一気に下がります。このタイミングで眠りにつくとスムーズに入眠でき、ぐっすりと深く眠ることができます。食後すぐにお風呂に入ると消化によくないので、できれば少し時間を空けるのが理想です。
Q パパの帰宅時間に合わせると、どうしても就寝時間が遅くなってしまいます。
A パパと子どものふれあいも大切にしたいところですが、この年齢の子どもはやはり「早寝早起き」を一番に考えましょう。パパとのふれあいの時間は、朝に持てるといいですね。
寝かしつけの時間にパパが帰宅すると子どもが起きてしまい、つい「なんで!」と怒ってしまいがちですが、ここはぐっとこらえて。
寝る時間が子どもの成長にとって大事だということをきちんと夫婦で話し合いをして、協力しあうことが大切です。
Q 2歳になり、あまりお昼寝をしません。なしでも大丈夫なのでしょうか?
A 夜たっぷり寝ていて、日中も眠そうにする様子がないのであれば、お昼寝はしなくてもOKです。
「11~12時間」という「理想の睡眠時間」はあくまで平均値。もっとたくさん寝る必要がある子もいれば、少ない時間でも元気な子もいます。その子のリズムで元気に過ごしているなら、問題ないでしょう。
Q 上の子と下の子で生活リズムが合わなくて困っています。
A この時期はやはり、「早寝早起き」のリズムに合わせたほうがいいでしょう。年齢差があると、下の子が寝る時間なのに上の子はまだ起きていたい、というときがありますよね。でも、上の子が起きていると下の子も気になって寝られないので、上の子に「寝たふりだけでいいからつき合って!」と話してみて。
早寝早起きは年齢問わず誰にとってもいいものなので、できれば上のお子さんも「早寝」のリズムになればいいですね。その場合、「早起きしたら朝の時間は自由に過ごしていいよ」と伝えてみるのもいいでしょう。
石田幸美先生からのメッセージ
就学までに生活リズムが身につくと、後が安心
学校に入ると毎朝決まった時間に起きる必要があります。また、生活リズムは学力と密接に関係しているのです。
入学前に慌てて生活リズムを整えようとしても、これまでの習慣を変えるのはとても大変なこと。今の時期に習慣づけてしまえば、親子共に後が安心です。
生活リズムが整うと、ママ・パパがきっとラクになります。
子どもが夜早く寝れば、その後は大人の時間をゆっくり過ごせるなど、ママ・パパにとってもいいことがたくさん。
この時期は、大人の生活リズムに子どもを合わせるのではなく、子どもの生活リズムに大人が合わせるよう心がけてみてください。
石田幸美先生
山梨県甲府市にて、志を同じくする保育者と社会福祉法人「なのはな」菜の花こども園を設立し、主幹保育教諭として保育に携わる。保育士歴25年。
イラスト/ハヤシフミカ 取材・文/洪 愛舜 構成/童夢 『ベビーブック』2019年1月号