きっかけは嘘をつき始めた子供たち
我が家には2人の息子たちがいます。長男6歳、次男が4歳です。戦いごっこが大好きな典型的な男の子たちなのですが、最近とても困ったことが…。
それが「嘘をつく」という行為です。「このおもちゃを散らかしたのはだれ?」と聞けば弟は「お兄ちゃん」だと言います(本当は弟が散らかしている)。水をこぼしてしまった兄に「お水をこぼした子はだあれ?」と聞けば「弟だ」と言います。
子供は成長の過程で「嘘」を覚えます。それは子供の成長であり、一つ賢くなったことといえばそうなのですが、嘘は嘘。決して許してはいけません。しかし、親がなんど戒めても、子供たちは怖くないとばかりに嘘をつき続けました。
「この世界には、見ていないと思っても、自分の悪事を見ている存在がいる!」と感じてほしいと思い、たまたま何かないかなぁ・・と探していたところ、秋田の観光行事の一環で、旅行者が体験できる「なまはげ戒め問答」なるものがあると知りました。「なまはげ」って確か、子どもを叱ってくれるのよね。よし! と観光を兼ねて、一家で体験に男鹿半島に出かけてきました。
「なまはげ」が旅館にやってくる!?
そもそも、なまはげとはいったいなんでしょうか? みなさんも姿形はイメージが付くかもしれませんが、じゃあ具体的には何?と言われると言葉に詰まってしまいます。
なまはげとは、秋田県男鹿半島で行われてきた年中行事です。来訪神と言われ、鬼の姿をしてはいますが、男鹿半島では神様として敬われています。年末になると、「悪い子はいねがー」「泣ぐコはいねがー」と声を発しながら、鬼の姿をした村の御男性陣が各家を回り、子どもたを探して暴れます。家の者たちは訪れたなまはげを丁重に迎え、日常の悪事をしっかり叱ってもらい、そして送り帰します。
なまはげは、2018年「来訪神:仮面・仮装の神々」として、ユネスコ無形文化遺産保護条約の「人類の無形文化遺産」として登録されました。男鹿半島をはじめとする秋田県では非常に歴史深い神様です。
秋田・男鹿温泉郷で行われている「なまはげ問答体験」
なまはげ問答体験は、毎年12月から3月末までの期間限定で予約をすることができます。
男鹿温泉郷にある、5つの宿泊施設で体験できます。
「始めたきっかけは、より多くの人たちになまはげを体験してもらいたかったからです」と、企画を運営している、男鹿温泉郷協同組合の方はおっしゃいます。
「本来のなまはげは年末にしか体験できません。しかし、なまはげという文化をより多くの人に体験してもらうにはどうしたらよいかを考えました。実は男鹿温泉郷にあったとある宿で、モニターとしてなまはげを体験する事業がありました。今はその宿はないのですが、この事業を見直し、新たに発展させたのが、なまはげ問答体験です。なまはげという文化を、男鹿半島だけではない、より多くの人たちに知ってもらい体験していただければと思っています。」現在、ワンシーズンに20組ほどのお客様が申し込みされており、その多くが、東北や関東といったエリア。申し込みをするのは、2歳~7歳くらいの子ども連れファミリーが多く、文化の体験をさせたい、そして同時に子育ての悩みをどうにかしたい!という目的をもって来訪されるそうです。
まず宿の予約から
まず、宿の予約をとります。その際、宿には戒め問答をすることも伝えましょう。
宿がとれた時点で、戒め問答の予約を行いましょう。
*宿では戒め問答の予約はできないので、必ず、男鹿温泉交流会館へ問い合わせをするようにしてください。
アンケートを先に書きましょう
戒め問答開始1時間前くらいに、体験用のアンケートに記入します。
「なまはげ問答」は、事前に「なまはげに何を叱ってほしいか」を伝えることができるのです。アンケートには、最近困っていること、子供に直してほしいことを書きます。それだけでなく、子供の長所も書く欄があります。この長所をしっかり書くことがとても大切です。
さて、なまはげがやってきます
なまはげが来るまでは部屋でのんびりくつろぎます
この後くる来客など知る由もなくくつろいでいる息子2です。
平和な時間が過ぎていきます・・・と、突然ドアが「トントン」。
お父さんが「どうぞ」と、言うとドアが開きます。
そこには、二体のなはまげが・・・!!!!
子供は突然の異形のものにびっくり・・というより、時間が止まったかのように動きません。「うおおおおおおおおおおおおお!」という声と共に、なまはげが足踏みをしはじめます。すると、事態を把握したのか、息子2(4歳)が大絶叫! 息子1(6歳)は、事態が呑み込めず硬直状態。なまはげが「悪い子はいねええが!?」「泣き虫はいねえが!?」と子供たちを追いかけます。
笑いそうになりますが、こらえて子供を守りましょう
ここで大事なのが、爆笑してなまはげに子供をささげること・・・ではありません。
なまはげからしっかりと子供を守りましょう。抱きかかえ、大丈夫だよ、と言い聞かせます。伝統的ななまはげでは、親がなまはげから子を守ることで、親としての威厳を子に示すともあります。親は頼れる存在であり、自分を守ってくれる存在であることをきちんと子供に示す必要があります。
なまはげにお酒をつぎましょう
なはまげは「鬼」ではありません。「神様」です。神様が部屋にお越しくださった、という状態となるので、きちんともてなさなければなりません。
戒め問答体験では事前にお酒と杯を用意してもらえます。そのお酒と杯を、お父さん→子供達→お母さんの順でなまはげについでいきます。
ちなみに、後出しとはなりますが、このなまはげ問答、お父さんの存在が非常に大切となりますので、お父さんはわれ関せずではなく、しっかりとマニュアルを読み、参加していきましょう。
問答がはじまります
事前に解答したアンケートをもとに、なまはげたちが子供たちに問答をはじめます。
「お前たち! 最近うそばかりついて困らせているそうだな!?」
子供たちは驚きます。なぜ初めて会ったばかりのなまはげが、自分たちの悪事を知っているのか!?と…。
目を丸くして、どうして知っているの?と戸惑います。
なまはげは続けます。
「野菜を食べたといって、嘘をついたそうだな!」
「おもちゃをを壊したのはあいつだと嘘をついたそうだな!」
誰も知らないと思っていたであろう悪事が次々と叱られ、子供達は「はい・・・」「なんで・・・」と、さっきまでの恐怖とは別の怖さを感じ始めたようです。
「ばれないと思っていても、俺たちはちゃんとみていたんだぞ!」
となまはげに言われ、子供たちのドキドキは止まりません。
最後にはちゃんと褒めてくれます
しかし、なまはげは悪いことばかりでなく、いいこともちゃんと 見ているよ、と教えてくれます。
「お前は小さい子にとても優しいそうだな!きちんと守ってあげれるんだな!強いんだな!」
「お前は根性がとてもあるそうだな!ぐっと耐えてあきらめずにがんばるそうだな!」
そういわれて、子供たちは怖いながらも、すこし得意げにもなります。最後に、なまはげと「もう嘘はつかないこと」を約束して、戒め問答体験は終わりました。
トラウマになるか心配だったけど、それ以上に自信がついていた
正直なまはげは親もびっくりするくらい怖かったです。なので、子供たちはトラウマになってしまうかな? という心配もありました。しかし、子供達自身が「悪いこと」と自覚していることを叱られたことが、自分自信を戒めるきっかけになったこと、そして、長所をしっかりと褒めてもらえたことが逆に自信につながったようにも思えます。悪いことも、よいことも、誰も見ていないと思っても、必ず見ている何かがある。子供達もわからないなりに感じてくれたようです。
構成・村田 愛(アレルギーっ子の旅するサイトCAT Child × Allergy×Trip代表)