SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」とは?
耳にしたことはあっても、「SDGs」がどのようなものなのか、よくわからない人もいるのではないでしょうか。そこで、まずSDGsと目標6について説明します。
2030年までに達成すべき17の目標の一つ
SDGsは、「Sustainable Development Goals」を略した言葉です。日本語では「持続可能な開発目標」と呼ばれており、国際社会共通の目標です。
2015年に開催された国連サミットで採択された事案で、2030年までの15年間に達成すべき開発の指針が示されています。
飢餓・福祉・教育・エネルギー・気候変動など17の目標と、それぞれを具体化した169のターゲットが設定されており、各国が目標達成に向けてさまざまな取り組みを行っています。
参考:SDGsとは?|JAPAN SDGs Action Platform |外務省
目標6の8つのターゲット
目標6は「安全な水とトイレを世界中に」です。誰もが安全な水とトイレを使えるようになることに留まらず、水質や生態系に関わることまで、幅広い目標が設定されています。
具体的には、以下の8つのターゲットがあります。
・安全で安価な飲料水の確保
・下水施設や衛生施設の確保
・汚染の減少などによる水質の改善
・水の利用効率の改善による水不足の改善
・国境を越えた統合水資源管理の実施
・水に関する生態系の保護と回復
・開発途上国における国際協力や支援の拡大
・水と衛生の管理向上のための支援を強化
解決すべき水問題の現状
日本では蛇口をひねれば安全な水を飲むことができ、衛生施設も整っているため、水問題と聞いてもピンとこないかもしれません。
一方で、世界にはどのような水問題があるのでしょうか? 解決すべき水問題の現状について紹介します。
安全な飲み水を使えない人は世界で約20億人
発展途上国などでは、上下水道の設備が整っていないことがほとんどです。そのため、汚染された池・川・湖・井戸などの水を、そのまま飲料水として利用している人が数多くいます。
不衛生な水を飲むことで下痢や感染症などの病気にかかり、抵抗力の弱い幼い子どもなどは命を落とすこともあります。
また、生活に必要な水を確保するのは主に女性や子どもの役割で、遠くまで水をくみに行かなければならないことも珍しくありません。
水くみに多くの時間を取られた結果、仕事でお金を稼いだり、学校に通って学んだりする機会を奪われているのです。
安全なトイレを使えない人は世界で約36億人
トイレについては、野外にあったり、設備が十分でなかったりするために、プライバシーが守られていないという問題もあります。
野外トイレが居住地から遠かったり薄暗かったりすると、女性や子どもが暴力被害に遭うリスクが高まるのです。
安全なトイレが使えないことは、教育問題にもつながっています。プライバシーが守られないトイレしかない場合、それが理由で思春期の女の子が学校を休みがちになることも珍しくありません。
休みが多くなると授業についていけなくなり、退学してしまうという悪循環も起きています。
水不足が深刻な問題に
水は飲料水や生活用水としてだけでなく、農業をはじめとするさまざまな産業にも必要不可欠です。2018年時点で、約23億人が水の需要がひっ迫している状態で、「水ストレス」を抱えて生活しているといわれています。
今後は、さらに水不足が深刻化することが予測されています。その大きな理由の一つが人口の増加です。
2050年には世界の人口が約97億3,000万人になると予測されており、それに伴って人々が必要とする水の量も増加します。そのほか、地球温暖化による気候の変動も水不足の主な理由です。
水問題に対する取り組み事例
多くの企業がSDGsの目標6のために、さまざまな取り組みを行っています。その中から注目されている企業の実際の取り組みを見ていきましょう。
簡易トイレの普及に取り組む「株式会社LIXIL」
株式会社LIXILは、2025年までに1億人の衛生環境を改善することを目標に掲げており、ユニセフと協力して地域のニーズに合わせた解決策の実施に取り組んでいます。
その一つが、下水道の設備が整っていない開発途上国に、簡易式トイレシステム「SATO」を届ける活動です。
これまで41カ国に約510万台のトイレを出荷し、衛生環境や生活の質の向上に貢献してきました。さらに、手洗い設備を利用できない地域向けに手洗いソリューション「SATO Tap」を開発し、衛生環境の改善や感染症防止の取り組みも開始しています。
参考:LIXILがSDGsに貢献できること|サステナビリティ|株式会社LIXIL
節水に取り組む「伊藤園グループ」
伊藤園グループの重要課題の一つは、地球環境を守って次世代に継承することです。その一環として、生産活動における水の使用量を2030年度までに16%削減することを目標に活動しています。
例えば、容器の殺菌に薬剤を使用せず、温水のみを使用するシステムを導入することで、薬剤を洗い流すための水の使用を削減しました。
工場では水を適切に再利用し、節水にも取り組んでいます。
参考:環境・伊藤園
さまざまな活動を行う「ウォーターエイド」
ウォーターエイドは、1981年にイギリスで設立され、世界34カ国に拠点を置き活動している国際NGOです。アフリカ・中南米・アジアを中心に、計26カ国で水や衛生環境の改善に取り組んでいます。
それぞれの地域の実情に合った取り組みをしており、これまでに約120万人以上に清潔な水を届け、約150万人に適切なトイレを届けました。
また、単に水やトイレを提供するだけでなく、手洗いをはじめとする衛生環境を保つための教育にも力を入れています。
参考:ウォーターエイドの活動|水・衛生専門の国際NGO ウォーターエイド
SDGs目標6達成のために私たちができること
水問題改善のために、私たちにもできることはたくさんあります。小さなことでも多くの人が取り組めば、大きな改善につながることも少なくありません。
簡単にできる身近な取り組みを紹介します。
節水を意識する
簡単にできることの一つが、蛇口をこまめに止めて「節水」することです。
例えば、水の流しっぱなしは、1分間に約12Lの無駄になるため、洗面や歯磨き中に水を出しっぱなしにしないだけでも節水になります。調理時に水量を調節したり、野菜や食器をため洗いしたりするのもおすすめです。
近年は、さまざまな節水グッズも販売されています。吐水流量を約半分に抑えられる「節水コマ」や、水の勢いを変えずに水量を削減できる「節水アダプター」「節水型シャワーヘッド」などを使うのもよいでしょう。
また、洗濯機やトイレなどを買い替えるときには、節水ができるタイプのものを選ぶ方法もあります。
参考:水のめやすはどれくらい? | 関市役所公式ホームページ
油は流さず拭き取る
ギトギトしている油は落ちにくいため、食器や調理器具についた油汚れをきれいに落とすには大量の水が必要です。このとき、あらかじめクッキングペーパーなどで油を拭き取り、ため洗いすることで節水できます。
また、海や川に油が流れ込むと、生態系への悪影響や水質汚染のリスクがあります。油を水に流さないことは、環境保護にもつながっているのです。
大量の油は水再生センターでの処理にも影響を及ぼすこともあるため、できるだけ油は水に流さないようにしましょう。
支援団体に寄付をする
水問題に取り組んでいる支援団体に寄付するのもおすすめです。少額でも多くの人が寄付をすれば、大きな支援につながります。
寄付金は、汚染された水を安全な水に変える「浄水剤」や、脱水症状から命を守る「経口保水塩」、水を確保する「井戸の手押しポンプ用器材」などに使われます。
アンケートに答えることが支援につながるものや、特定の商品を購入するとその売上げの一部が寄付になるものは、誰でも気軽に協力しやすいでしょう。
水問題の解決に取り組もう
SDGs目標6は、世界中の人々が安全な水とトイレを使えるようになることだけでなく、水質や生態系など地球の環境保護にもつながる重要な課題です。
節水を意識したり、油を水に流さないようにしたりという、些細な行動が水問題の解決につながっていきます。また、水問題の解決に取り組む団体に寄付することで、安全な水やトイレを使えない人を間接的に助けることもできます。
水問題の解決に向けて、まずは自分ができることから始めてみましょう。
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文・構成/HugKum編集部