お話を聞いたのは、思わず取り組みたくなる防災術や、防災に関する課題解決をテーマとした防災企画を提案しているNPO法人ママプラグの宮丸みゆきさんです。
子連れ防災の注意点
Q.私も小さい子どもがいるのですが、避難するとなると大変です。子連れでの防災は何に気を付ければよいでしょうか?
自宅が危なければ必ず避難すべきですが、できるだけ自宅避難ができるよう、まずは自宅を安全な場所にしておくということが大切です。ガラスの飛散防止や家具の転倒防止などの対策をしておくといいですね。
また、赤ちゃんのいるご家庭は、扉のストッパーや机の角にぶつかりを防止するカバーなどを設置されている方も多いと思いますが、これは地震などの時も身を守ってくれます。そういった視点で考えると、意外とすでに対策ができていることも多いかもしれません。
備蓄と避難時の持ち物
Q.乳幼児がいる場合、備蓄で特に気をつけるべき点は?
自宅の安全が確保されていて避難生活が送れるという場合は、備蓄をしっかりしておくとよいでしょう。小さいお子さんがいるご家庭ですと、オムツやミルクなどはなるべく多めに準備しておくことが大切ですね。オムツは成長を考えた大きめのサイズでもいいので、ストックを必ず用意しておきましょう。
避難用品として赤ちゃん用のミルクを用意されている方も、哺乳瓶はそれほどたくさん準備できないかもしれません。熱湯や電子レンジなどが使えず、消毒できない可能性もあるので衛生面が心配ですよね。
哺乳瓶ではなくコップでミルクを飲ませるカップフィーディングという方法があります。はじめは難しいかもしれませんが、練習すると上手に飲めるようになります。被災時はもちろん、外出先でも紙コップで授乳ができるので便利ですし安心ですよね。ぜひネットなどでやり方を調べて試してみてください。
Q.子連れで避難する際に持って行った方がいいものはありますか?
子連れで避難と考えるとどうしても荷物が多くなってしまいがちです。
避難所では水など誰もが必要とするものは手に入りやすいのですが、サイズがあるものや特定のニーズがあるものはなかなか手に入りません。オムツや下着、常備薬など、自分の子どもが必要なものを優先して入れておきましょう。
その上で、子どもを抱っこして持てる重さなのか、試してみることが大切です。抱っこの時には両手が空くように抱っこ紐が必須です。抱っこで避難する時に忘れがちな子どもの靴も入れておいてください。
また、一人で歩けるようになったお子さんは避難の際に人混みなどではぐれてしまうかもしれませんので、避難リュックを一人一つ持たせてあげましょう。子どもの避難リュックには、家族の連絡先やアレルギー、薬の情報などを書いたパーソナルカード、おやつ、時間が潰せるおもちゃなどを入れておくと良いと思います。
自分で自分のものを持ってくれると親の負担も減るのでぜひ用意してくださいね。
避難リュックはお子さんと一緒に準備するといいですね。防災について話すきっかけにもなりますし、親も知らない、子供のこだわりや持って行きたい好きなものがあるかもしれません。
子どもへの声かけ
Q.防災について子どもにどう伝えればよいのでしょうか?
あまり怖がらせすぎないことです。「台風や大雨、いろんなことが起きるから、困らないように準備するんだよ」と前向きに伝えることが大切です。
保育園や幼稚園、小学校でも避難訓練は行っていますが、家でも災害が起こった時にどの部屋に逃げるのか、どの体勢になるのがよいのか、よく話し合って練習をしてほしいと思います。机の下にもぐることはできても、意外と正しい体勢のとれていないお子さんが多いです。机の下に頭だけ入れていたのでは、机が飛んでいってしまったり自分が転んだりする可能性があるので、両手を広げて机の脚をつかみ、両膝をしっかり床につけることを意識してください。
Q.小学生以上の子どもへ伝えておくことは?
小学生以上になると、通学や遊びの時間など、子どもだけの時間が出てきます。自分自身の身を守れるように、自分で判断できる力をつけておくことが重要だと思います。
遊びに行く時はどこに誰と行くか親にしっかり伝えておくことや、地震があった時に行く場所、行ってはいけない場所などを伝えておくことが大切です。また通学時に地震が起こったらランドセルで頭を守れるように、練習しておくといいですね。
親子でやってほしい「防災ピクニック」
Q.親子で取り組める防災を教えてください。
親子で楽しみながらできる防災訓練として防災ピクニックを提唱しています。
これは避難リュックを持って近くの公園まで行き、非常食を食べてみるというものです。ポイントは4つあります。
①荷物の量をチェック
荷物を持って移動できるかどうか、持って歩いた時に大変ではないかを確認しましょう。
②危険な場所はないかチェック
途中で危険な場所はないか確認しましょう。古いブロック塀やガラス貼りの建物、工事中のところや植木鉢が並んである家など落ちてきそうなものがないか探しながら歩きます。ハザードマップには載っていないような危険な場所があるかもしれません。
同時に公衆電話や頑丈な建物など、助けになるようなスポットも探しておきましょう。
③非常食を食べてみる
非常食を食べてみましょう。ハサミがなくても開けられるか、持ってきたグッズだけで上手に食べられるのかということや、家族全員が美味しいと思えるかどうかも大切です。避難生活で体調を崩すこともあるので、栄養バランスも考えてみてください。
④その場で遊んでみる
避難場所で遊んでみましょう。足場の悪いところを歩いてみたり、公園のトイレを使ってみたりするのもいいと思います。最近は和式トイレを使えないお子さんも多いので、和式トイレの姿勢の練習をしてもいいですね。
楽しいピクニックで防災に備えよう
この防災ピクニックは、楽しみながらくり返しできる防災訓練なので、できるだけ頻繁にやってほしいと思います。お子さんの成長は早いので、できることや必要なものも変わってきます。散歩の部分だけ、食べる部分だけ、など一部だけでもいいので、気軽にやってみてください。
ポイントは嫌がることはやらないこと、楽しんですることです。不安になってしまう被災時、避難生活で少しでも安心できるように、避難グッズで楽しい思い出を作ってほしいと思います。
いざという時のために、日ごろから出来ること。ぜひ親子で楽しみながら取り組んでみてください。
今回お話を聞いた「NPO法人ママプラグ」とは?
ママプラグはもともと、出産や子育てで社会から離れているママと社会をつなぐ機会を作ることを目的として、自らも母親であるメンバーたちで始まった活動です。
ママプラグは、東日本大震災で被災し避難している親子に向けた支援をしたことをきっかけに、女性目線・親子目線の防災情報がないことを実感し、被災者の体験談から生まれた本を出版しました。現在は「家族の防災」をテーマに、講座や講演、ワークショップ、書籍出版・監修などを行っています。
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文・構成/酒井千佳