全盲の岩田美津子さん「目が見える息子に絵本を読んであげたい」点字つきさわる絵本製作への思い

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全盲の岩田美津子さんは、見える人と見えない人とが一緒に楽しめる絵本作りを行っています。そんな強い思いをもった岩田さんに、「点字つきさわる絵本」の誕生秘話と魅力について伺いました。

見える人と同じように楽しめる「点字つきさわる絵本」とは

今回ご紹介する、絵も立体で、文字も活字と点字の両方で書かれた、目の見える子も見えない子もいっしょに楽しめる「点字つきさわる絵本」とは、一体どのようなものなのでしょうか?

「点字つき絵本の出版と普及を考える会」の代表で、全盲の岩田美津子さんに「岩田美津子ものがたり(作:やさきさとみ)」のマンガに沿って、お話を伺いました。

お話を聞いたのは…

岩田美津子さん|点字つき絵本の出版と普及を考える会 代表
1952年福岡県生まれ。1984年4月自宅に「点訳絵本の会岩田文庫」を開設、てんやく絵本の製作と貸し出しを始める。1996年10月こぐま社の協力を得て、国内初の点字つき絵本『チョキチョキ チョッキン』を出版。1998年4月「IBBY朝日国際児童図書普及賞」受賞。「点字つき絵本の出版と普及を考える会」代表。

「我が子に絵本を読んであげたい!」想いがきっかけ

ー「点字つき絵本が必要だ」と感じた、きっかけを教えてください。

 

岩田さん:私は目が見えません。ですが、息子は目が見えるので、絵本をもってきては「これなあに?」と、手で絵本をさわらせるんです。

 

岩田さん:ぜひ読んでやりたいのですが、全盲の私がわが子と読める絵本が当時はありませんでした。「ないのであれば作るしかない!」そう思ったのが始まりです。

絵本に点字をつける“てんやく絵本”が完成

マンガ内の小西さんは「大阪市立天王寺図書館 司書小西萬知子さん」

 

―こうして誕生したのが、“てんやく絵本”(下記の写真の左)『しろくまちゃんのほっとけーき』ですね!

この絵本は、現在、銀座で開催中の「さわって楽しむ絵本展」で実際に見ることができます。

左が、“てんやく絵本”第一号『しろくまちゃんのほっとけーき』。 右:現在は、出版社から、点字だけではなく、絵もさわるような工夫を施された“点字つきさわる絵本『しろくまちゃんのほっとけーき』が市販されるようになりました

 

岩田さん:その後、てんやく絵本の文庫を作って貸出しも始めました。

点字つき絵本の必要性を実感

岩田さん:文庫を借りてくれた目の見えないお母さんが、てんやく絵本を「初めて子どもに絵本を読んであげることができお母さんになれた気がする」とおっしゃってくれて嬉しかったです。

 

―お母さんとしてようやく子どもに何かをしてあげられた気がする、そういう深い実感だったのですね。

 

岩田さん:そうなのです! また、家族の中で、目が見えないおじいちゃんおばあちゃんもてんやく絵本があれば、お孫さんに絵本を読んであげられる、家族の一員として役割を果たせます、とおっしゃってくれて。

リモート取材の様子。てんやく絵本にまつわるエピソードを語る岩田さん

「点字つきさわる絵本」の誕生

目が見える人と目が見えない人、“たがいに絵本を楽しむことができる”てんやく絵本の必要性を強く感じましたという、岩田さん。

世の中が動き始めた!

―そこから“点字つきさわる絵本”の出版を考えたのは、なぜでしょうか?

岩田さん:目の見える人たちは、書店や図書館で自由に絵本を手に入れることができますが、目の見えない私たちには、自由には手に入れられないのです。

そのためには、出版物として手に入りやすくならないといけないと考えました。

岩田さん:ついに、こぐま社の方と“点字つきさわる絵本”『チョキチョキチョッキン』という作品を作りました!

“目の見えない人のために点字がついている”だけではいけない、子どもの本として評価に耐えうるもの、見えない人用だけではなく、目の見える人と、ともに楽しむことができる絵本ということにこだわりました。

そうしないと、絵本として広がりません。

そして、この本には“このような絵本であれば、私たちも目の見える人たちとともに楽しむことができるんです”というメッセージを込めたのです。

点字つきさわる絵本『チョキチョキチョッキン』こぐま社

2年以上試作を重ね、初めて市販された点字つきさわる絵本『チョキチョキチョッキン』。拾った大きな紙をカニがチョキチョキ切ると、魚になったりペンギンになったり。特殊製法で、字も絵もさわってよむことができます。

点字つき絵本をより広めるために

『チョキチョキチョッキン』を出版した当時、目の見えない人たちから「このような絵本を待っていた!」と、ものすごい反響があったそう。

この絵本をきっかけにいくつもの出版社から、少しずつ点字つき絵本の刊行がされるようになり、世の中が動き出したことも実感したとか。

そして、点字つき絵本をより広めるために、出版社さんや作家さん、印刷所さんなどに声をかけ、2002年に発足したのが、「点字つき絵本の出版と普及を考える会」です。

ⓒ点字つき絵本の出版と普及を考える会・やさきさとみ(しぷり) 2022

点字つき絵本の出版と普及を考える会20周年記念展「さわって楽しむ絵本展」への思い

点字つき絵本の出版と普及を考える会は発足して20年が経ち、記念展示会を現在開催しています!

-「さわって楽しむ絵本」フェアでは、なにを一番伝えたいですか?

岩田さん:「まず、さわってみて!」と言いたいです。目の見える人たちは、「さわる」という機会が圧倒的に少ないと思いますが、「さわって感じる」という感覚は、見える人にも見えない人にも共通のものです。

ふだん行わない「さわる」ということを意識して、そこから想像することには、きっと新たな発見があると思います。

また、赤ちゃんは「さわる」ということが大好きです。まだ字が読めない赤ちゃんも「さわる絵本」でしたら一緒に楽しむことができます。

こうした魅力をみなさんに知ってもらい、出版社さんにも関心を持ってもらうことで、“点字つきさわる絵本”の数がもっと増え、気軽に手に入る世の中になっていってほしいと思います。

「目の見える人にも、点字つきさわる絵本の存在を広めたい」という思いが伝わってきました! 本当にありがとうございました。

最新刊! 点字つきさわる絵本『おかしの どうぶつえん』

筆者も「まず、さわってみて!」という岩田さんの言葉に感銘を受け、点字つきさわる絵本の最新刊、『おかしの どうぶつえん』(小学館)を読んでみました!

動物たちが“おかしのクッキー”になって動物園に集まっているというかわいい絵本です。

 

動物たちの絵が盛り上がって作られているので、さわって形や模様を感じることができます。

「このまだら模様の動物はなんだろう?」

「あっ、しましまの模様があるからシマウマだ!」

などなど、目で捉えてきた形と、さわって感じる形がうまく結びつかず、なんだか不思議な感覚です。さわった後、目で見るたびに、「そうだったんだー!」と驚きの連続でした。

さわってたのしいレリーフブック おかしのどうぶつえん

「さわって楽しむ絵本展」で、絵本をさわって感じる体験をしてみよう!

見える人も見えない人も、いっしょに楽しめる「さわって楽しめる絵本展」では、点字つきさわるえほんも購入可能です。

点字に興味のある方の入り口としても、絵本の新たな楽しみ方のきっかけとしても、ぜひ「さわって楽しむ絵本展」を体験してみてください。

【見える人も見えない人も、いっしょに楽しめる“てんじつきさわるえほん”フェア】

さわって楽しむ絵本展~点字つき絵本の出版と普及を考える会20周年記念展

会期:現在開催中 ~2022年9月27日(火)まで

会場:教文館9Fナルニアホール(〒104ー0061 東京都中央区銀座4-5-1)

公式サイトはこちら>>

点字つきさわる絵本

現在では、30冊近い点字つきさわる絵本も刊行されていますので、こちらもチェックしてみてくださいね。

リストはこちら>>

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