「点字つきさわる絵本ってなあに?」見える人も見えない人も楽しめる絵本を体験してきました!

“点字つきさわる絵本”を知っていますか? 点字がついているだけではなく、“さわって絵も楽しめる”ある特別な工夫が施されているのです。
一体どのようなものか、銀座・教文館9Fナルニア国で開かれている“さわって楽しむ絵本展”で体験してきましたので、その魅力をご紹介します。

点字つきさわる絵本ってどんなもの?

点字つきさわる絵本というと、「目が見えない人用の絵本じゃないの?」と思われるかもしれません。ですが、決してそれだけではないんです。

“さわって楽しむ絵本展”の様子

点字つきさわる絵本の特徴

点字つきさわる絵本は「見える人も見えない人もいっしょに楽しめる絵本」を合言葉にさまざまな工夫を凝らして作られているのです。

まず初めに、点字つきさわる絵本は、どうやって作られているのかご紹介します。

①特別なインクで盛り上がりをつけている

紙の上のデコボコがわかりますか?

スイカのかたちだけではなく種も、目の見えない人がわかるよう立体になっていますよね

 

点字つきさわる絵本は文章を点字にするだけではなく、絵にも特別なインク(UVインク)を使って絵の一部を盛り上げて“さわって絵も楽しめる”ようにしているのです。

見える人も見えない人も、これなら一緒に楽しめますよね!

②「製本方法」が通常の絵本と異なる

「点字つきさわる絵本」は絵を盛り上げて作っているので、ふつうの絵本のように大きな圧力をかけて製本してしまうと点字や絵がつぶれてしまうそう!

そこで、製本時の圧力で点字や絵がつぶれてしまわないように、一枚の紙を人の手でジグザグに折る「蛇腹(じゃばら)製本」という形式をとったり、「リングとじ」にしたり。厚紙の合紙製本の場合も、特別な工夫をしています。

通常の絵本と違ったとじ方も特徴のひとつですね。

(左:蛇腹(じゃばら)製本 右:リングとじ)

 

③さわる絵にも、さまざまな工夫が!

ほかにも、点字つきさわる絵本は、「絵をさわって読む」ことができるように、たくさんの工夫が施されています。

例えば、さわる絵は、実際の絵からわざとずらして配置をすることがよくあります

なぜなのでしょう?

この、『ノンタンじどうしゃぶっぶー』(点字つきさわる絵本)も、実際にはノンタンと自動車がくっついた絵ですが、盛り上げている絵の方はノンタンと自動車が少し離れています!

 

その答えは、目が見える人ならノンタンが手に自動車を持っているとすぐに分かりますが、目の見えない人は、ノンタンと自動車を重ねてしまうと何の絵だかわからないからなのです。

それゆえ、2つのものが重なっている絵の場合には、あえて離してさわる絵が施されています!

会場にもくわしい解説がありました

 

ほかにも、絵本の見開きに、たくさん絵が入っている場合は、あえて絵柄を少し減らすそう!

理由は、絵が多すぎるとさわって確かめている間に、分からなくなってしまうからとのこと……。触って読むときにわかりやすいよう、いろいろと配慮されているのですね。

点字つきさわる絵本は、見えない人がさわったときにわかりやすいよう作られていることを知りました。

目の見えない親と目の見える子ども、あるいは、目の見える親と目の見えない子、どちらも絵本を楽しむことができると、とても喜ばれているのだそうです。

点字つきさわる絵本に、目を閉じて挑戦!

点字つきさわる絵本は、書店で購入することも、図書館で借りることもできます。

親子でチャレンジしてみると

早速、図書館で借りて、私たち親子も、実際に楽しんでみることにしました。今回借りた絵本は「てんじつき さわるえほん さわるめいろ」というシリーズ。

一見すると、ただの模様に見えますが、この模様の上に盛り上がった線があります。その線を触りながらゴールへたどっていくという迷路の絵本なのです。

普通の迷路以上に難しい!

目をつぶりながらやってみると、途中で行き止まりに! 分岐点まで戻らなければと思うのですが、「どの線までたどったっけ?」と分からなくなってしまいました。

目をあけてチャレンジしてみても、図の形に惑わされてしまいます!

これは、普通の迷路以上に難しい……子どもだけではなく大人もかなり本気になり何度も挑戦しましたよ。

さわる迷路に目をつぶって挑戦している、小1の息子

「さわって楽しむ絵本展」開催中

今回訪れた、銀座・教文館9Fナルニア国で開催されている、「見える人も見えない人も、いっしょに楽しめる“てんじつきさわるえほん”フェア」は、「点字つき絵本の出版と普及を考える会」が、その20周年記念として企画。

その「点字つき絵本の出版と普及を考える会」は、絵本を点字に訳す活動を長年行ってきた全盲の岩田美津子さんが、自ら各出版社の編集者や印刷会社、作家などに声をかけて立ち上げました。

ロングセラーの絵本も点字つきさわる絵本に

あの名作も、読み合い語り合うことができるようになりました。

上列左から時計回りに『てんじつき さわるえほん さわるめいろ』(小学館)、『あらしのよるに』(講談社)、『ノンタン じどうしゃぶっぶー』(偕成社)、『しろくまちゃんのほっとけーき』(こぐま社)、『いない いない ばあ』(童心社)、『はらぺこあおむし』(偕成社)、『ぐりとぐら』(福音館書店)、『さわって ごらん だれの かお?』(岩崎書店)、『さわって たのしむ どうぶつずかん』(BL出版)

最後に、「点字つき絵本の出版と普及を考える会」20周年記念動画をご覧ください!

 

【見える人も見えない人も、いっしょに楽しめる“てんじつきさわるえほん”フェア】

さわって楽しむ絵本展~点字つき絵本の出版と普及を考える会20周年記念展

会期:現在開催中 ~9/27(火)

会場:教文館9Fナルニアホール(〒104ー0061 東京都中央区銀座4-5-1)

公式サイトはこちら>>

高崎市でも「さわって楽しむ絵本」を展示

同時期に群馬県高崎市でも、点字つきさわる絵本が楽しめる展示が始まります。

【メルヘンと遊びの世界展25「ふつう」ってなぁに?】

会期:9月10日(土)〜9月19日(月・祝)

会場:高崎シティギャラリー(住所:高崎シティギャラリー/群馬県高崎市高松町35-1)

詳細はこちら>>

一度にこれだけの点字つきさわる絵本がそろうこの機会、点字絵本に興味のある方だけではなく、「さわって読むってどういうことなのかな?」と思った方もぜひお出かけください!

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※今回は「この企画を広く知っていただきたい」という会のメンバーの願いから、ホールの中は写真撮影の許可を頂きました。

取材・文/徳永真紀

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