活断層ってなに?
活断層(かつだんそう)は、日常生活で頻繁に耳にする言葉ではないため、今まで聞いたことがないという人もいるかもしれません。まずは、活断層がどのようなものなのか理解しましょう。断層との違いについても紹介します。
活動中の断層のこと
活断層は長期にわたり活動を繰り返し、今後も活動し続けることが予測される断層のことです。今後、地震を誘発する危険性があるものも含まれます。
日本列島は、プレートと呼ばれている岩の層が複数交わる場所に位置しています。プレートが相互に押し合い、岩の層がずれた際の衝撃が地震の原因の一つです。
日本には2,000以上の活断層があることが分かっていますが、地表にあらわれておらず、発見されていないものも多いといわれています。活断層の上に公共施設が建てられていることも珍しくないため、防災に関する対策が望まれています。
出典:国土地理院(https://www.gsi.go.jp/bousaichiri/active_fault.html)
断層との違い
断層は、プレートが周囲から押され負荷がかかることで生じる地盤のずれのことです。
もともと地盤には多くの割れ目があり、通常はかみ合った状態にあります。しかし、何かしらの強い力が掛かると、割れ目が破壊されてずれが起こるのです。
断層の中には活動していないものもあり、全てが地震につながるというわけではありません。
活断層の特徴
活断層についての知識を深めるために、特徴を見ていきましょう。活断層にはさまざまな特徴がありますが、ここでは主なものをピックアップして二つ紹介します。
同じ向きに繰り返し活動する
まず、活断層の特徴として、同じ向きに繰り返し活動することが挙げられます。
活断層は常に活動しているわけではなく、普段は固着した状態にあります。しかし、常に周囲から強い力が加わっており、少しずつひずみが大きくなっていきます。ひずみが限界まで達すると岩盤が破壊されてずれが起こり、その衝撃が伝わって地震が発生するのです。
地震が起こることでひずみが解消されるため、再び固着状態に戻ります。そのため、再びひずみが極限に達するまでは、一定期間動かない状態が続くのです。
ちなみに、プレートの動きは基本的に変化しないため、ひずみによるずれも常に同じ方向に起こります。ずれが起こる方向などの活断層の動きは、周辺の地形から把握することが可能です。
断層ごとにずれの速さが異なる
もう一つの特徴は、断層ごとにずれの速さが違うことです。
1回の活断層のずれがわずかであっても、繰り返し起こることでずれの大きさは徐々に増していきます。ずれの大きさが増加していく平均的な速さを「平均変位速度」といい、これは断層によって差があります。
日本で地震が多いのは、同じ活断層で頻繁にずれが起きているからと思われがちです。しかし、実際には活断層の数が多いことが、地震の多い理由といえます。活断層ごとの大地震が発生する頻度は、1,000年から数万年に1回程度でごくまれなのです。
また、大きな地震が起きる可能性は、断層の長さによっても変わります。長ければ長いほど、大きな地震が起こりやすいといわれています。
活断層の種類
周囲から掛かる大きな力の状態は複雑です。状況によってさまざまな動きが生じており、その影響による変位によって4種類に分かれています。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
出典: 国土地理院(https://www.gsi.go.jp/bousaichiri/explanation.html)
正断層
正断層とは、左右に引っ張られる力が加わることで、断層面の傾斜に沿って上部にある地盤がずり下がった状態のことです。ずり下がることで、上部には新しい地層が現れます。
もともと日本列島には正断層が少なく、九州地方以外ではほとんど見ることができません。しかし、山形県と秋田県にまたがる鳥海山(ちょうかいさん)の山腹では、東北地方では非常に珍しい正断層が見られます。
また、東日本大震災の影響で、東日本ではそれまで少なかった正断層型地震が増えているともいわれています。
逆断層
逆断層とは、左右から大きな圧力が加わることで、断層面の傾斜に沿って上部の地盤がずり上がった状態のことです。ずり上がることで、上部に古い地層が現れます。中でも傾斜が45度以下のものは、「衝上断層(しょうじょうだんそう)」と呼ばれています。
東北地方など北日本に多く見られ、東日本大震災で起きた地震も逆断層型地震でした。
逆断層が見られる場所として有名なのが、国の天然記念物にも指定されている愛媛県の「砥部(とべ)衝上断層」です。約4,000万年前の地層の上に、約6,500万年前の地層が押し上げられた状態が見られます。
右横ずれ、左横ずれ断層
横ずれ断層とは、周囲から圧力が加わることで、両方の地盤が水平方向にずれた状態のことです。ずれる方向によって、「右横ずれ断層」と「左横ずれ断層」に分かれます。
片方の地盤に立ったときに、もう一方の地盤が右方向にずれていれば「右横ずれ断層」、左方向であれば「左横ずれ断層」です。中部地方から西日本に多く見られますが、実際にはきれいに左右にずれるのはまれで、斜めにずれているものがほとんどです。
有名なものに、岐阜県の「根尾谷(ねおだに)断層」や、阪神・淡路大震災を引き起こした兵庫県の「野島断層」があります。
活断層型地震の特徴
地震には、「海溝型(プレート型)地震」と「活断層型(直下型・内陸型)地震」があります。日本列島で発生する地震のほとんどは、活断層が原因の「活断層型地震」です。どのような特徴があるのか紹介します。
出典:国土地理院(https://www.gsi.go.jp/bousaichiri/explanation.html)
地震の発生から短時間で揺れる
居住地の真下で発生するため震源地が近く、短時間で揺れを感じます。特に、震源が浅い場合はいきなり揺れを感じるため、警報が間に合わないことも珍しくありません。
小さい規模の地震であっても、局所的に強い揺れになることも多く、火災が発生したり家屋が倒壊したりして大きな被害につながることもあります。
1995年の阪神・淡路大震災で発生したマグネチュード7.3の活断層型地震「兵庫県南部地震」では、死者・負傷者・全壊住家が多数出ました。
縦に揺れる
地震の揺れ方は、大きく分けて縦揺れと横揺れがあります。活断層による地震は、震源地が居住地の真下であるため、振動が縦方向に伝わる縦揺れになります。
突然、下からドンと突き上げるような衝撃が起こり、数秒間と比較的短時間でおさまることが多いのも特徴です。
ちなみに、「海溝型地震」は小さな縦揺れの後に大きな横揺れが起こり、数分間と長く続くことがほとんどです。
震度は大きく範囲は狭い
活断層型地震は震源地が近いことが多いため、マグネチュードが低い地震でも直に振動が伝わり、震度が大きくなる傾向があります。
ただし、地盤の状態によって震度に違いがでることも珍しくありません。活断層からある程度離れていても、地盤が緩ければ大きな揺れになります。逆に地盤が固ければ、同じマグネチュードでも揺れや被害は少なくなります。
また、揺れるのは比較的狭い範囲のため、被害地域が限られるのも特徴です。震源地の真上にある地域が最も揺れが大きく、離れれば離れるほど揺れを感じにくくなります。
日本には多くの活断層が存在
日本には、今後も活動し続ける可能性が高く、地震を誘発する危険性がある活断層が多く存在しています。いつ大きな地震が起きるか分からないため、まずは自分の住んでいる地域の地盤を調べてみましょう。
未発見の活断層もあるので、日頃から地震など災害に備えて、万全な準備や対策をしておくことも大切です。これを機に、被害を最小限に抑えるにはどうすればよいのか、家族でじっくり話し合ってみるとよいでしょう。
海溝型地震の記事はこちら
文・構成/HugKum編集部