日本版声優の原田泰造&鈴木福の親子コンビのやり取りに共感!
優しすぎるケアロボットと純粋な少年の友情が大きな反響を呼んだ『ベイマックス』(14)を手掛けたドン・ホール監督の最新作『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』が、11月23日(水・祝)より公開されました。
ディズニー・アニメーションらしくファンタジックで壮大な冒険活劇でありつつ、誰もが経験するような家族の絆が描かれていることで、「自分事」として感情移入することができる物語です。
本作の主人公はサーチャー・クレイド。サーチャーは偉大なる冒険家の父・イェーガーが、家族を顧みず、自分の夢を叶えるために日々を過ごす姿を見て「こんな人間にはなりたくない」と、“安定こそが一番”という思いを抱くようになります。
時は経ち、サーチャーも大切な息子・イーサンを授かり、平凡ながらも農業に勤しみ、幸せな日々を送っていました。ことあるごとにサーチャーはイーサンに“日々の日常”の大切さを説きますが、イーサンはどこかで、そんなサーチャーの考えに疑問を持ちます。
サーチャーの日本語吹き替え版声優を務めるのが、ここ近年は個性派俳優としても引っ張りだこであるネプチューンの原田泰造。そしてサーチャーの息子・イーサンを演じるのは、子役として活躍し、現在は俳優として活動の場を広げている鈴木福。先日行われた公開記念イベントでは、お互いの声の演技を“共感できる”と称賛し合っていましたが、何とも不器用な2人の関係性を想起させる表現力には強く感情移入できます。
息がぴったり合った親子を演じていた原田さんと鈴木さんでしたが、演じたサーチャーとイーサン親子の性格は正反対。安定を求めるサーチャーに対して、イーサンは、祖父の血が色濃く出ているのか、好奇心が旺盛です。父の言うことに真っ向から反対はしないものの、どこかで物足りなさを感じているイーサン。その2人の微妙な関係性は「あるよねー」と思わせるようなリアルさがあります。
ディズニー・アニメーションならではの映像美に感嘆
そんな2人の関係を大きく変えてしまうのが、サーチャーとイーサンが住む美しく豊かな国アヴァロニアに訪れた危機です。
国を支える重要なエネルギー源である植物“パント”が力を失い、世界が崩壊の危機に陥ってしまいます。アヴァロニアの大統領・カリストから、国の一大事を救うべく異世界への冒険を託されたサーチャー。
父の影響から冒険嫌いになったサーチャーは、カリストからの頼みに前向きではなかったけど、周囲の期待を受け、地底に広がる“もうひとつの世界”に旅立つことになります。
この地底にある“もうひとつの世界”は、水や大地が生き物のように変幻自在に動き回る不思議な世界。さまざまな異形のカラフルな生き物が、ところ狭しと動き回る幻想的な世界は「さすがディズニー・アニメーション」とうなってしまうほど、ワクワク感にあふれています。
壮大なる海の世界を縦横無尽に泳ぎ回る不可思議な生命体たち。そんな世界を旅するサーチャーをはじめ息子のイーサン、妻メリディアン、そして愛犬レジェンド。この映像の解放感や奥行き、迫力には、子どもばかりではなく、大人でも圧倒されそうです。
祖父、父、息子という3世代の家族が紡ぐ物語に感情移入
冒険のさなか、サーチャーの父であるイェーガーと遭遇するクレイド家。冒険することをこよなく愛するイェーガー、そんな父親の姿を見て、安定が一番と考えるサーチャー、父の思いを幼少期から感じているものの、祖父イェーガーのような冒険家に憧れるイーサン。3人が一堂に介したシーンは、ある意味カオスでありながらも、観る人の置かれている状況によって、どの立場にも感情移入できてしまうのが、この作品の魅力です。
親子であっても、それぞれの個は独立しているもの――。そんな考えが尊重される一方、やっぱり「親子だよね」と自分と似ている部分に喜びを感じたり、ちょっと嫌だなと思ったり……。
親子と言っても、その距離感や考え方は、十人十色。クレイド家も、昔ながらの“家族”という集合体に近しい部分がありつつ、この時代ならではの要素もたっぷりと詰まっています。
ディズニー・アニメーションらしい、壮大な冒険ファンタジーと、普遍的な家族愛という組み合わせが、作品に大きな深みを与えています。SFやファンタジーとしてのエンターテイメントと、“自分事”として考えらえるリアリティ。一見すると正反対のようなテーマが見事に融合し、楽しいながらも骨太な作品に仕上がっています。
文/磯部正和
監督:ドン・ホール 共同監督・脚本:クイ・グエン
声優:ジェイク・ジレンホール、ジャブーキー・ヤング=ホワイト、デニス・クエイド……ほか 日本版声優:原田泰造、鈴木福、大塚明夫……ほか
公式HP:Disney.jp/StrangeWorld
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