メロスはそもそも何をしてしまった?
私を待っている人があるのだ。少しも疑わず、静かに期待してくれている人があるのだ。(中略)走れ! メロス。
上は「走れメロス」の中の一節です。死刑宣告を受けたメロスは、妹の結婚式のために、親友を人質として3日の猶予をもらいます。結婚式を終えたメロスは、期限までに戻らねば親友が彼のかわりに死刑になってしまうため、必死で帰路を急ぐのですが…。
そもそもメロスは何の罪で死刑になっているのでしょうか。
①盗みをした罪
②市民をさらった罪
③王をだました罪
④王のあやまちを責めた罪
正解は④
正解は、「④王のあやまちを責めた罪」でした。
その後の展開に比べて、この経緯を忘れてしまっている人は案外多いのではないでしょうか?
メロスは王のどんなあやまちを責めたのか、本作のあらすじは次の章で詳しくおさらいしていきましょう。
『走れメロス』が友情の物語なのは覚えているけど…
『走れメロス』がどんな経緯をもった「友情の物語」だったか、覚えていますか。ここでは、本作のあらすじや作者についてをざっくりと解説します。
正義感や友情とともに、人間の弱さや葛藤をも描いた物語
舞台は、ギリシャ時代のイタリア南部・シチリア島のある都市。
人を信じられず多くの市民を殺す王がおり、正義感の強いメロスは人々を救うべくそのあやまちを責めます。その結果、死刑を言いわたされたメロス。最後に妹の結婚式をあげたいと、親友を人質にして3日待ってもらうことにしますが……。式を終え、親友のもとへ走るメロスに、いくつもの試練がおそいかかります。
親友・セリヌンティウスとの絶対的な信頼感に基づいた友情のほかにも、死刑になる覚悟で王にあやまちを指摘できるほどのメロスの正義感や、それでも葛藤してしまう人間の弱さや脆さ等々……人間のさまざまな側面を描いた一作です。
作者は『人間失格』のあの人
なかには「日本文学なの?」と驚かれる方もいるかもしれませんが、本作の作者は『人間失格』や『斜陽』などでも知られる太宰治。『人間失格』のイメージが先立っていると、「熱い」雰囲気がある本作は、なんとなく意外にも思えますよね。
物悲しい/暗いというイメージを持たれがちな太宰治ですが、実際にはユーモアあふれる作品も多数生み出しています。
読書の達人・齋藤孝先生が「読書の楽しみ方」をじっくり紹介
『走れメロス』を読む際のポイントにも触れる本書では、1万冊以上の本を読んできた齋藤孝先生が、小学生のうちに読んでほしい日本と世界の名作を110作ご紹介。
なかでも「これだけはかならず読んでほしい」10作品を取り上げ、先生とっておきの読み方や読書時の視点を具体的に解説しています。
『坊っちゃん』では感情の動きを意識した「絵文字読み」を奨励したり、『ロミオとジュリエット』では翻訳による台詞の違いを味わったり……
作品ごとに、注目したいポイントや、持っておきたい視点を提案してくれるので、読書の楽しみ方を自然につかむことができます。
ぜひ、親子での読書の手立てに役立ててみては。
あなたにはこちらもおすすめ
文/羽吹理美 構成/HugKum編集部