だれもが知る!太宰治の代表作
【1】走れメロス
自分の身代わりとして捕らわれた友を救うため、処刑されるために必死に走るメロスの姿が、人の心を信じられない王に信頼することの尊さを悟らせます。
教科書にも採用されている作品で、文体の力強さとハラハラするストーリー展開で、一気に読ませる短編の名作です。
【2】人間失格
何度も映画化や漫画化などがされている太宰治の代表作。
幼いころから「人間」というものが理解できず、孤独を感じながらも人を愛そう、理解しようともがき苦しみながら生きる主人公・大庭葉蔵に太宰自身の苦悩や考えが反映されています。
彼の抱える苦しみや悩みは誰もが心に抱える普遍的なものでもあり、時代を超えて多くの読者を惹きつける魅力ある作品です。
【3】斜陽
元貴族だった華族一族が戦後に時代の波にもまれて没落していく様子を太宰特有の陰鬱さで描いた作品。
ラストシーンでは主人公・かず子が運命を受け入れながらも自らの意志で運命を切り開いていこうとする姿が鮮やかに描かれており、時代を超えて強く生きる女性の姿に心を打たれます。
魅力さまざま!太宰治の有名作品
【1】富嶽百景
太宰の師であり良き理解者でもあった作家・井伏鱒二の住む甲州を訪れ、数か月にわたり滞在したときのことを、富士山に関する彼の思いやエピソードなどを交えながら描いたエッセイ的作品。
結婚後の精神的にも充実していたといわれる時期の作品で、暗い作品のイメージとはうって変わって、一貫して明るくユーモアがあり、のびやかな文体が魅力です。
【2】女生徒
中学生の女の子の心情を描いた一風変わった作品です。
中学生女子が、朝起きてから起こる1日のさまざまな場面での自分の気持ちをとりとめなく吐露していきます。
その内容がおどろくほど女子の心理をとらえており、現代の女子中学生が読んでも共感できるのではないでしょうか。
【3】お伽草紙
戦時中に太宰が防空壕で子どもに読み聞かせていた昔話をもとに、独自の解釈を加えて創作したもの。
誰もが知る「浦島太郎」「舌切り雀」「カチカチ山」も、太宰が登場人物の心情を解釈すると、どこかおかしく悲しい人間の深層心理が感じられる物語に。
厳しい時代にもユーモアや自由な想像力を失わなかった太宰の一面をうかがい知れます。
【4】きりぎりす
貧乏画家だった夫が、人気がでるにつれて変貌していき、それを嘆く妻の視点で描かれた短編小説。
太宰が得意とされる女性の告白体で書かれており、リズム感のよい文章で書かれた女性の心情に一気に惹きつけられます。
表題作「きりぎりす」のほかにもユーモアや話術の巧みさ、教養の深さなどを感じさせるもの太宰中期の作品が収録されています。
【5】パンドラの匣
結核療養所で死に怯え、病気と闘いながらも明るく精一杯生きていく少年と彼の周囲の人々との交換を書簡形式で描いた「パンドラの匣」。
社会への門出を迎え揺れ動く中学生の内面を日記形式で描いた「正義と微笑」が収録。
どちらも実際の日記を素材とした作品で、明るく希望に満ちた青春小説です。
【6】津軽
太宰が自分の故郷である津軽を訪ね、その際のできごとや心情を綴った作品。
旅の中で自らのルーツを振り返り「育ての親」と慕っていた女性と再会するなど、自叙伝的な面もありながら、青森の歴史や風土、人々の魅力などが描かれた旅行記としても楽しめます。
太宰の育った風景や青森の魅力が感じられ、彼の本質に触れられます。
【7】グッド・バイ
連載途中に太宰が自殺してしまうことから、未完の遺作として知られる作品です。
大勢の愛人がいた主人公が愛人たちときれいに関係を終わらせるため、訳ありの美女を妻と偽って愛人たちのもとに連れて行き、別れ話をしていく…というストーリー。
自殺直前に描いていたとは思えないほど、明るくコミカルな作品で、どんな結末を迎える予定だったのだろうかと思わずにはいられません。
おわりに
太宰作品というと暗く破滅型の印象が強いかもしれませんが、ユーモアあふれる作品も豊富です。
自殺未遂を繰り返しながらも、周囲が放っておけないような魅力あふれる性格でもあったと言われる太宰治。
古い作品なのに難しくなく、読みやすく親しみやすいものが多いので、ぜひ気軽に楽しんでみてください!
文・HugKum編集部