なでしこジャパンでも活躍!岩清水 梓選手に聞く子育てとアスリートの両立。出産を機に新たな挑戦も

女子サッカー 日テレ・東京ヴェルディベレーザで活躍中の岩清水梓選手。日本代表のDFとして、北京・ロンドンの両五輪やW杯でも活躍されました。現役選手であり、現在2歳の息子さんを育てるママでもある岩清水選手に、出産を経て変わったことや子育てとアスリートの両立についてお話を伺いました。

一時は引退も考えた!子育てとアスリートの両立について

岩清水 梓選手

【プロフィール】
日テレ・東京ヴェルディベレーザ所属。小学校1年からサッカーを始め、2006年に日本代表デビュー。ポジションはDFとして、2008年北京・2012年ロンドンの両五輪、2011年・2015年の両女子W杯など世界舞台でも活躍。出産後2021年に現役復帰を果たした。

ママとアスリートの両立について

―ママとしてアスリートとしてどのようなルーティンで過ごしているのでしょうか?

岩清水選手:普段は、午後に練習をしているので朝は息子が起きるタイミングで一緒に起きて、のんびり準備して保育園に送ってから支度をして練習に行っています。息子が保育園で夕飯を食べ終わるタイミングで迎えに行き、一緒に帰って自分はそれからご飯を食べます。
日曜は基本的に夫が息子と一緒に過ごしていて、夫も仕事の時はお互いの両親に息子をお願いしています。自分のわがままで練習を休むことはできないので、家族や身内のサポートが本当にありがたいです。

ママになってから感じる心とからだの変化

―出産を経て、アスリートとしての心境の変化はありましたか?

岩清水選手:大きな変化としては、気持ちにゆとりが持てるようになったことですね。選手として現役の時間が限られている中で、「私もお母さんになりたい!」という願望が膨らんできた時に、この先どうするべきか悩んだ時期がありました。

実際にこうして母親になることができ、ライフステージの変化を乗り越え、プロになって家族の為に仕事をするということで、すごく気持ちが整理されて精神的にも安定しました。またサッカーに新しい気持ちで向き合うことができました。

―多くのママアスリートに勇気を与える言葉ですね。子育てとアスリートの両立ができるか悩んだ時、誰かに相談しましたか?

岩清水選手:「引退」か「続ける」かの世界なので、自分の中でモヤモヤしているだけで相談をすることはありませんでした。でも妊娠がわかった時は、チームの若い選手も育ってきていたので、自分としては引退を考えていました。
両親に考えを伝えたら、母に「やめるの?続けてみればいいじゃない」と軽めに言われたんですよ。
その時、アメリカの代表選手が子どもを連れてピッチにいたのを見て「いいなー」と思っていたことや、なでしこジャパンの合宿に子どもを連れて参加していた宮本さんを思い出して、ハッとしました。

ママアスリートの実例が少ないから出産後のことが想像できず、それまで忘れてたんですよ。でも「できるんじゃないの?」と母に言われたことで、報告しに行くときは引退すると思っていたのに、帰る頃には180度変わってこれからも頑張ります!みたいな気持ちで帰りましたね(笑)。

―お母さまの後押し、素敵ですね。出産後にからだの変化はありましたか?

岩清水選手:出産後に恥骨を負傷して、起き上がることも難しい状態が続き、リハビリを始めるまで随分時間がかかってしまいました。その後も産前より骨盤底筋が緩んだことを感じていて、何も気にしないで筋力トレーニングをしていた出産前と比べて、出産を経てからは体をより意識するようになりましたね。

産後1年くらいは、普通にジャンプとかすると尿漏れがあったり、産前より気にしないといけないことが増えました。

―環境が変わった中で、アスリートとして活躍するうえで気を付けていることは?

岩清水選手:忙しい中でも、トレーニングの土台になる体調管理と食事管理には気をつけています。今までのように突き詰めるのは難しいと感じることもあるので、良い意味で妥協しているところはあります。

岩清水選手が子育てで大切にしていること、チャレンジしたいこと

子育てをしていて大変なこと・楽しいこと

―子育てをしていて大変だと感じることや悩みはありますか?

岩清水選手:息子は0歳の時から保育園に通っているのですが、初めの頃はいろいろな病気をもらってくるんですよ。復帰の時に苦しかったのが、自分はコンディションを上げていきたいのに子どもと病原体のパスが続いたことですね。自分ひとりでは体調を崩すこともなかったけど、そこは大変だと感じました。今も保育園で病気が流行するとビクビクしています(笑)。

子育ての悩みでいうと、いま息子は2歳ですが、とにかくごはんを座って食べないことですね。そんなときは動画を見せながら食べさせたりしてます(笑)。同じ年くらいの子育てをしているママに聞くと、「うちもそうだよっ。」という言葉を何度か聞いたことがあるので、今だけなのかなと思ってますけど。先輩ママの意見は、本当にいつも参考になります。

子育てで大切にしていること・親子でこれからチャレンジしたいこと

岩清水選手:危険から守るといった最低限のこと以外は、大切にしていることを特に決め込んではいませんが、「なるようになる!」といった感じです。コミュニケーションを大切にして、当たり前のことしかしてないですね。

これから先、息子が何に興味を持つかわからないですけど、サッカーでもなんでも、スポーツはやって欲しいです。いろいろなスポーツに触れ合わせてあげないと興味が湧かないと思うので、これから仕事の時間を上手く調整しながら、息子にはスポーツに触れさせる時間をできるだけつくっていきたいです。

サッカーの魅力と支え続けてくれた家族との関係

岩清水選手がサッカーを始めたきっかけやサッカーの魅力についても、お話を伺いました。

両親のサポートがあったから第一線で活躍できた

―サッカーをはじめたきっかけを教えてください

岩清水選手:小学校1年生の時に仲がよかった男の子がサッカーを習っていて「もっと一緒に遊びたい!」という気持ちで見学に行き、その場でやることを決めました。

小学生までは男の子と一緒にできますが、中学生になるとサッカーをやるところがない子が多く、私もその一人でした。

中学生になったらソフトボール部に入ろうかなくらいのテンションだったのですが、父が日テレ・東京ヴェルディベレーザの育成組織に応募していてくれて、たまたまクラブに受かって今まで続けることができました(笑)。


父が勝手に応募してくれてたのが、私の人生のターニングポイントですね。

入団テストの時に両親が一緒に付いてきてくれて、私のプレイを見た父に「何やってるんだよ!」とカツを入れてもらったことで、受かりました。もし、そこで怒られていなかったら受からずに終わっていたと思います。続けていく中でサッカーが楽しくないと感じた時期、クラブのレベルが高くて自分が下手で試合に出られないということもあり、くじけたことがありました。

その時も「レベルが高いチームで、揉まれることに意味がある」と怒られて頑張ってきた結果、成果を得ることが出来ました。怒られている時は、もちろん良い気持ちはしませんが、振り返ってみて良いアドバイスをもらっていたなと思います。

女子トップリーグ300試合出場をお祝いするため、セレモニーに岩清水選手のお父さんと息子さんが駆け付けました。©TOKYO VERDY

父は、サッカーと向き合う姿勢ややる気、精神を教えてくれて、母は言葉はないけれど、朝食から夕食まで当たり前のように作ってくれて、その3食をちゃんと食べてたから怪我をしない体をつくれたので、本当に感謝しています。

チームのメンバーがいるから頑張れる!

―サッカーの魅力って、ずばり何でしょうか?

岩清水選手:大人数のメンバーがいることがサッカーの魅力です。試合に勝った時は喜びも倍になるし、つらい時はみんなが頑張ってるから自分も頑張らなきゃと思わせてくれます。チームのメンバーがいるからこそ続けられるという気持ちが大きいです。

親子体験型イベント『イワシート』に込めた想い

『イワシート』は、育児中のママ、パパとの交流と、育児や仕事の息抜きの場を提供したいと、岩清水選手が考案した2022-23Yogibo WEリーグのホームゲーム招待企画です。

詳細情報は>こちら

―『イワシート』をはじめたきっかけを教えてください

岩清水選手:もともとは、都市型保育園ポポラーさんが頑張る親子に招待券をプレゼントしていました。スポンサー契約が終了したところで、この企画がなくなるのは寂しいなという気持ちと、ポポラーさんの意志を継ぎたいと思ったのがきっかけです。

小さい子連れのおでかけを応援したい

保育園がお休みの日に、家族のイベントのひとつになってくれたらいいなと。お金も掛かるし、小さい子を連れてのお出かけは大変で、ちょっと敬遠されがちですが、そんなときに招待券があったら、お出かけする一押しになるかなと思ったんです。それでサッカーを観戦してもらえるのはこちらとしても嬉しいことです。

本当は、親の目の届く場所に子どもの遊び場とか作りたいという気持ちがあるので、イベントをこれからより良い方向にもっとバージョンアップしていきたいですね。

『イワシート』の他にもホームタウンへの地域貢献として、パパと子どものコミュニケーションに携わるイベントも開催しました。

ママはパパと子どもが楽しんでいるところを見ていてもらったり、または子育てオフ日として、パパに任せてママは別の場所に行ってもいいんです。でもその日の記録はあとでしっかり確認したいと思うので、イベント中のパパと子どもたちの様子を、選手たちが撮影するようにしました。

そんなふうに自分が親になって目線が変わったことを活かしたイベントの開催を通して、皆さんに喜んでもらえたら嬉しいです。

今後の目標&頑張るママへメッセージ

―岩清水選手と同じように頑張っているママへメッセージをお願いします。

岩清水選手:仕事をやりながら子育てしてるという人もたくさんいると思いますが、私は仕事がサッカーだっただけで皆さんと同じような日頃の悩みであったり、同じような生活を送っています。
出産を経て、世の中のお母さんを本当に尊敬しますし、改めてお母さんってすごいなって思いました。一緒に頑張りましょう!そして、一緒に悩んでいきましょう!って感じですね。

みんな同じなんだなって思えば気持ちが楽になることもあると思うので、悩んでいる時に私みたいにサッカーしてる人も同じように悩んでるんだって思って、少しでも気が楽になってくれたらいいなって思います。

―最後にこれからの目標を教えてください

岩清水選手:プロになり環境も変わったので、自分が納得できるまでプレーできればいいなと思っています。納得がいくまでやり切って、引退する時に息子が花束持ってお手紙でも読んでくれたら、本望だなと思っています。

ママになっても諦めない!みんながいるから頑張り続けられる

©TOKYO VERDY

インタビューから数日後に行われた、皇后杯では優勝を果たした日テレ・東京ヴェルディベレーザ。試合後に息子さんを抱き上げた岩清水選手の満面の笑みを見て、感動して思わず涙を流す人の姿も。アスリートとしてママとして、頑張る岩清水選手の活躍をHugKumでは、これからも応援していきます!

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撮影/五十嵐美弥
取材・文/やまさきけいこ

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