「乾杯」の本来の意味は「酒を飲みほすこと」
「乾杯」という語を国語辞典で引くと、ほとんどの辞典は「酒を飲みほすこと」と説明しています。でも、これって少し違和感はありませんか?子どものお誕生会などで、「カンパーイ」と言ってジュースを飲むこともあるでしょう。お酒じゃなきゃ「乾杯」って言えないのでしょうか?
「乾杯」は子ども向けの国語辞典でも、「酒を飲みほすこと」と説明されています。最近の辞典の中には、「酒などを」としているものもありますが。
「乾杯」が酒でなければならないワケ
「乾杯」の本来の意味は、「酒を飲みほすこと」です。「杯(さかずき)を乾(ほ)す」ということで、「杯」は「酒(さか)杯(つき)」の意、つまり酒を飲む器のことなのです。それを飲みほすということは、酒でなければならないわけです。
儀礼としての「乾杯」は世界共通のようです。日本でもかなり古い時代から「乾杯」という語が使われていました。たとえば平安時代中期の宮廷の儀式を記した『新儀式』には、天皇の賀の祝いのときの「乾杯」について書かれています。それによりますと、まず親王が進み出てひざまずき、天皇に杯をすすめて長寿を祝って乾杯をしたようです。もちろん杯の中身は酒です。
ジュースで「カンパ~イ」はマナー違反?
ただ、ことばは、意味を広げて使われるようになることがけっこう多いのです。中身が酒でなくても、家庭などで子どもと一緒にジュースで「カンパ~イ!」とやるのもそうです。
国語辞典では、まだ本来の意味しか載せていないものも多いのですが、これからは意味を広げて「酒などを」と記述する辞書も増えてくると思います。
ただし、マナーとしての「乾杯」は、アルコールが飲めなくても酒ですべきだという立場もあるようです。私はマナーの専門家ではないのでその辺のところはよくわかりませんが、ことばとして本来は酒だったわけですから、本来の意味はちゃんと残して、意味を広げて解釈してもよさそうな気がします。