2023年は日食、月食など天体ショーが目白押し!スマホで天体撮影するコツと見どころカレンダー

特別な天体望遠鏡や専用レンズを使わなくても、スマホだけでここまで天体撮影ができる⁉ 天体観測愛好家で歯科医の島谷浩幸ライターが、スマホで惑星を撮影するコツと、2023年の天体ショーのスケジュールを紹介します。

スマホで星の撮影ができる!

天文少年だった筆者は、数十年を経た現在でも天体観測を行い、星空に関する情報をSNSやブログを通して提供しています。

さて、皆さんはスマホで日常的に写真を撮る機会があると思います。子どもたちの行事や祝い事だけでなく、普段の何気ない様子や風景写真も撮ることがあるでしょう。こんなにも気軽に写真を撮れる時代になりましたが、もし夜空を見上げて明るく月が輝いていたら、「ちょっとスマホで撮ってみようかな」と思ったことがある人もいらっしゃるのではないでしょうか?

昨年秋には皆既月食があり、しかも天王星が月に隠される現象(食と言います)も同時に観測できるという、今世紀最後となる絶好の機会があったのも、記憶に新しいと思います。多くの方々がスマホで写真を撮ってSNSにアップしていましたね。

かく言う筆者もTwitterで、以下のように報告しました。

赤く見えるのが、皆既月食真っ最中の月。しかも、写真を撮った時間は天王星食も同時進行中。右端には、赤い月に向けた私の天体望遠鏡も映っています。大阪の大都会の中での撮影でしたが、とても鮮明に観測することができました。スマホで月を撮ると、こんなに小さくなりますが、赤茶けた色彩の雰囲気は出ていると思います。

筆者が子どもだった頃は、ちょっとした星の写真を撮るのでさえ時間と労力を要する作業でした。微かな星の光をたくさん集めるために、星の動きに合わせてカメラも動く特殊な装置を使用し、何時間もかけて撮影する必要がありました。それから40年近くが経ち、画像技術の進歩は目覚ましいものがあります。

パシャ。
ほんの一瞬で星を写すことができるなんて、子どもの頃には夢にも思いませんでした。今はそんな便利な時代ですから、使わない手はありません。さっそく、スマホで惑星の写真を撮ってみましょう!

グレート・コンジャンクションもスマホで撮ってみた

上の画像は2020年12月17日に筆者が撮影した木星、土星、そして月の写真です。大阪の堺市・菰池越しにスマホで撮影しました。

ここまで木星と土星が近づくのは1623年以来、397年ぶりだそうです。近づくとは言っても、実際の空間的距離が近くなるのではなく、たまたま同じ方向に見えるという〝見かけ〟の接近です。最接近は、この撮影から4日後の21日から22日にかけて。満月の見かけの直径の5分の1ほどの近さまで接近しました。

この貴重な天体ショーは「グレート・コンジャンクション」と呼ばれ、世界的にも話題になりました。

木星の上にうっすら見えるのが土星

上はアップの写真です。左の月は欠けていますね。右に黄色で明るく輝く木星、すぐ左上には黄白色で淡く見える土星です。

星の明るさは1等星、2等星などと数字で表されます。数字が小さいほど明るく、肉眼で見ることができるのは6等星と言われていますが、街明かりのある都会ではせいぜい4等星くらいまでしか見ることができません。

ちなみに、木星はマイナス2等星、土星は0等星。月は満月だとマイナス13等星と言われています。いずれも街中で十分観察できる明るさです。

木星のマイナス2等星がどれほどの明るさかと言うと、恒星(太陽のように自分で輝いている星)で一番明るい「おおいぬ座」のシリウスがマイナス1.5等星ですから、それよりも明るいのです。土星の0等星は、七夕の織姫星でもある「こと座」のベガに近い明るさです。

次に見ていただくのは、2023年1月30日の夕方に撮影した木星と金星の写真。

上に輝くのが木星、中央の下で輝くのが金星です。木星はマイナス2等星、金星はマイナス4等星で金星のほうが明るいのですが、夕暮れでまだ明るさが残る地平線に近いため、同じくらいの輝きに見えています。

実は昨年の春に新しい機種のスマホに変えましたので、画像がシャープになっていますね。アップにすれば、もちろん画像はぼやけてしまいますから、お使いのスマホの機種の画質に応じて、見やすい写真を撮るように心掛けてください。

スマホで天体撮影するときの注意点

星空の撮影は、周りに明かりがない暗がりで行いましょう。周囲が明るいとスマホのレンズ内で光が反射してしまい、乱れた画像になってしまうからです。

暗がりを見つけることが難しい場所であれば、スマホのレンズに手でひさしを作って影にすれば、うまく撮影することができます。

また、歩く際の安全面のため懐中電灯などの持ち運びできる照明器具も持参するようにしましょう。

2023年の天体ショーはいつ?

どうですか、皆さん。「今度は私も撮ってみたい!」という気持ちになってきたのではないでしょうか。でも、「いつ、どの方角の空を見上げたらいいの?」と困ってしまう方も多いのでは…。

星空の情報は国立天文台など、様々な機関や施設が情報発信していますので、ネットで簡単に調べることができます。

・国立天文台 https://www.nao.ac.jp
・アストロアーツ https://www.astroarts.co.jp

実は、今年の春から夏にかけてのシーズンは、先ほども紹介した木星と金星の撮影に非常に適しています。

夕方以降の西空を見上げてみてください。3月2日に最接近をする両惑星ですが、先ほど見ていただいたような木星と金星の競演はしばらく続きますので、ぜひ撮影してみてください。

木星(上)と金星(下)が画像中央で接近しているのがわかる。2月27日撮影

その他にも、今年は肉眼でも楽しめるたくさんの天体ショーがあるので、いくつかピックアップして紹介しましょう。
3月は惑星たちの輝く姿を撮影してみてはいかがでしょうか。

・3月2日 木星と金星が大接近
・3月24日 細い月と金星が大接近、九州や沖縄では金星食
・3月28日 月と火星が大接近、火星は赤く見えます。

また、4月以降には太陽や月の食を見ることができます。

・4月20日 部分日食

沖縄、九州南部、四国南部、紀伊半島南部、東海から関東の海岸地域で見られます。

・10月29日 部分月食

夜半過ぎから明け方にかけて、全国的に見ることができます。ロマン溢れる星空の世界を、親子そろって手軽で身近なスマホでぜひ楽しみましょう☆

◆筆者が代表を務める由流里舎の天文部では、天体観測や星空情報など星に関する話題を提供し、私のTwitterアカウントやブログ「由流里舎農園」でお伝えしています。

記事執筆

島谷浩幸

歯科医師(歯学博士)・野菜ソムリエ。TV出演『所さんの目がテン!』(日本テレビ)等のほか、多くの健康本や雑誌記事・連載を執筆。二児の父でもある。ブログ「由流里舎農園」は日本野菜ソムリエ協会公認。Twitterも更新中。

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