『北風と太陽』って、どんなお話?
『北風と太陽』は風と太陽が旅人の服でその強さを競い合う物語で、作者はイソップとされています。
イソップ寓話『北風と太陽』とは
『北風と太陽』は古代ギリシャの寓話の一つで、現在でも、風と太陽が実力を争うというストーリーから、処世術としての教訓を伝えるために使われることが多いです。
原題:”Η βοριάς και ο Ήλιος”、英題表記”The North Wind and the Sun”
国:古代ギリシャ
発表年:推定 紀元前6世紀ごろ
アイソーポスってどんな人?
ギリシャ語名ではアイソーポス、英語名ではイソップで、 イソップ寓話の作者とされる人物です。ただ、その存在は未詳です。日本では英語読みのイソップのほうがギリシャ語読みのアイソーポスより知られています。
特徴と代表作
イソップ寓話は、登場人物が動物や自然であることが多いのが特徴。動物や自然が道徳的な教訓や人生の教えを伝えるという物語です。代表作には「アリとキリギリス」「ウサギと亀」「キツネとぶどう」などがあります。
あらすじ・内容
それでは、短いお話ですがあらすじを簡単にまとめてみます。
※物語のネタバレを含むので、結末を知りたくない方はご注意ください。
詳しいあらすじ
ある日、北風と太陽が「どっちのほうが力があるか」空で言い争っていました。
下を見ると、旅人が一人歩いています。すると北風は、「あの旅人の服を脱がせることができた方が勝ちだ」と言います。
最初に北風が、風をびゅーびゅー吹かせて旅人の服を脱がせようとします。ところが、旅人はあまりの寒さに上着をしっかり抱え、体を覆ってしまいました。北風が風を吹かせれば吹かせるほど、旅人は襟を立てて顔をうずめ、帽子を深くかぶりました。とうとう北風は旅人の服を脱がすことはできませんでした。
今度は、太陽の番。太陽は、温かい光をサンサンと旅人に照らします。すると、旅人は、暑くなって上着を脱ぎ出しました。さらに太陽が光を照らすと、旅人はついに暑くて我慢できないと服を脱いで川へ飛び込んでしまったのです。
北風は、悔しくて何も言えず、太陽の前から逃げていきました。
あらすじを簡単にまとめると…
ある日、北風と太陽が「どっちの方が力があるか」言い争っていました。そこで、北風と太陽は、歩いている旅人の服を脱がせたほうが勝ちという勝負をします。
先攻は、北風。北風は風をびゅーびゅー吹かせて、旅人の服を吹き飛ばそうとしますが、旅人は寒いと感じ、服を脱ぐどころか、上着をしっかりとしめてしまいます。続いて、太陽の番。太陽が光をサンサンと照らすと、旅人は暑くなって、あっという間に服を脱いでしまいました。これで、太陽の勝ちということになりました。
北風が勝つストーリーも?
実は『北風と太陽』の物語には、「北風が勝つ」パターンのストーリーもあります。
上のあらすじでは「旅人の服を脱がせたほうが勝ち」という勝負でしたが、実はこの勝負の前に「旅人の帽子を脱がせたほうが勝ち」という勝負もしていたのです。
「帽子を脱がせる」勝負では、まず太陽が旅人を強い光で照らします。しかし、その日差しの強さに、旅人はいっそう深く帽子を被ってしまいました。つぎに挑戦した北風が旅人に向かって強い風を吹いたところ、帽子を簡単に吹き飛ばすことができました。
ということで、北風と太陽は1勝1敗。勝負は引き分けです。
このお話は、何事も過ぎたるは及ばざる事を伝えており、臨機応変に対応することの大切さを説いています。
今回、北風が勝つという話は「座右の寓話」という書籍を参考にしました。ただ、こちらは、実在するイソップ寓話かどうかははっきりしていないようです。
参考:「座右の寓話」
教訓
『北風と太陽』からは、どのような教えがあるのでしょうか。
『北風と太陽』から学ぶ教訓
太陽が勝つストーリー(服を太陽の暑さで脱がす)の教訓、もうひとつの説の北風が勝つストーリー(帽子を吹き飛ばす)と2パターンの教訓をご紹介します。
太陽が勝つパターン
北風のような厳しく暴力的な方法ではなく、温かさや思いやりを持って誘導するほうが人の心を動かすことができ、成功への鍵であるというメッセージが込められています。
この寓話は、他人との関係やコミュニケーションにおいて、優しさと相手への理解が人を動かす秘訣だと説いています。
北風が勝つパターン
帽子のの勝負では、北風が勝ったことから、物事は時と場合による、という解釈もあります。優しさ、穏やかさだけで相手を動かせるかというと、必ずしも正しいとは言えず、アメとムチのように、時には厳しさも必要であり、臨機応変さが大切だと言う教訓です。
特に、教育の現場やスポーツや社員研修などのコーチングなどの場面では、優しさだけで成長することは難しく、時には厳しい指導も成長の手助けになることはあるでしょう。
『北風と太陽』はことわざの意味にも
先の教訓から、『北風と太陽』というフレーズで、「まるで北風と太陽だね」とか「北風と太陽作戦で商談を勝ち取った」など日常会話からビジネスシーンまで、ことわざのように使われることも多々あります。
恋愛も「北風太陽作戦」が良いと言われることもありますし、先生が生徒に教えるときも「北風先生より太陽先生」と言われて教育の場で生かされる事もあります。
また、北風は北半球では寒さを運ぶ象徴ですが、南半球へ行けば逆。南極からの寒い南風となるので、南半球では「南風と太陽」と改変されていることがあります。
主な登場人物
シンプルなお話なので、登場人物もすごく少ないです。イソップ寓話は、動物や自然を擬人化しキャラクターとして使う特徴があり、道徳や教訓などをメッセージとして伝えます。
北風
寒冷で強力な風を象徴し、力を強調する役割を果たします。
太陽
温かさと優しさを表現し、温かさと思いやりを強調します。
旅人
風と太陽の力強さや温かさにさらされる人物で、物語の中心的な登場人物です。
おすすめ本・絵本
それでは『北風と太陽』の本をページ数、漢字、ルビ有り無し、などで易しい順にご紹介します。
きたかぜとたいよう(岩崎書店)
形式:Kindle版 単行本 2011/3/4
ひらがなのみ。挿絵が多く、読み聞かせにぴったり。28ページ。文字が読めるようになったら。
北風とたいよう(ブティック社))
易しい漢字あり、ルビあり。Kindle Unlimited 対象本。小学校低学年~。
北風と太陽 【日本語/英語版】 きいろいとり文庫
形式: Kindle版 2019/10/3
漢字あり、ルビあり。Kindle Unlimited 対象本。英語版も同時収録、英語の勉強に役立ちます。小学校中学年~。27ページ。
北風ママ・パパにならないために!
子どもの反抗的な態度にため息が出ることは、年頃のお子さんを持つ親なら誰しもが経験があるはず。そんな時、北風と太陽を思い出してみてください。何かをさせようと強制すると人は動きません。むしろ、反対の動きをすることも。
「旅人の服」を脱がせた太陽のように、お子さんの「心の鎧」を脱がせてあげるときは、相手の立場や気持ちを理解しながら、優しく誘導する太陽ママ・パパになってみては。押してダメなら引いてみる、という譲歩が意外と功を奏するかもしれません。
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文/加藤敬子 構成/HugKum 編集部