『金の斧』ってどんなお話?
イソップ寓話の『金の斧』は、ある日、森で木を切っていた木こりが斧を泉に落としてしまい、女神様に落とした斧は、金の斧か、銀の斧か、と問われる物語です。一度は耳にしたことがある人が多いお話だと思いますが、どんな教訓が隠されているのでしょうか。
イソップ寓話『金の斧』とは
『金の斧』としても知られるこの寓話は、古代ギリシャの伝説的な物語。作者はアイソーポス(イソップ)とされていますが、イソップ寓話集には複数の作者がいるとされ、明確にアイソーポスが書いたとする証拠があるわけではなく、イソップ寓話集に含まれている数百の寓話の中の一つです。
一方、『金の斧』と同じ物語ですが、「ヘルメスと木こり」として知られるバージョンは、古代ギリシャの神話に基づいており、ヘロドトス(Herodotus)が紀元前5世紀に執筆した「歴史」(Histories)という書物の中でも触れられています。しかし、そこにも特定の発表年や著者に関する確たる情報がないため、いつ誰が書いたかははっきりしていません。
イソップ寓話は古代の口承文学の一部として伝えられ、さまざまなバージョンや変種が存在します。
原題:”Περὶ τοῦ χρυσοῦ τέλεος(ギリシャ語)”、英語原題”The Honest Woodcutter”または”The Golden Axe”
国:古代ギリシア
発表年:紀元前5世紀ごろ?(不明)
アイソーポスってどんな人?
イソップ寓話は、古代ギリシャの伝説的な寓話作家アイソーポス(古代ギリシャ語: Αἴσωπος、Aísōpos)が主作者とされています。日本ではギリシャ語読みのアイソーポスより、英語読みのイソップのほうが知られています。
原作は女神ではない
『金の斧』は「ヘルメスと木こり」としても知られる物語で、基本的なプロットや教訓はほぼ同じですが、泉の精霊は女神ではなく、男性神として登場します。
当初日本でヘルメスを水神と訳したためか、「女神」として児童書に出てくることが一般的になりましたが、本来、ヘルメスはオリュンポス十二神の一人、男性神です。
また、英語では「ヘルメスと木こり」と同時に「Mercury and the Woodman(マーキュリーと木こり)」という題でも知られており、ヘルメスではなくローマ神話の男性神「マーキュリー」として登場することもあります。
マーキュリーは、英語で水星の事をマーキュリーと言うように水の神様として知られていますが、ヘルメスとマーキュリーは基本、同一神とされることが多いです。これは、紀元前4世紀ごろ、共和政ローマ時代に東方進出したローマがギリシャを制圧した際に、ローマ宗教とギリシャ宗教を統合したためです。
あらすじ・内容
『金の斧』短いお話ですが、あらすじをまとめます。
詳しいあらすじ
きこりが森で木を切っていると、あやまって斧を泉に落としてしまいます。木こりは斧がないと生計が立てる事が出来ないため、どうしたものかと悲嘆にくれていると、泉の中から水の精霊、女神様が金の斧をもって現れ、木こりが探しているのはこの金の斧か、と聞きます。
しかし、木こりは「違う」と答えます。
女神様は水の中に消えると、次は銀の斧をもって現れ、木こりのものか聞きます。木こりは「それも違う」と答えると、女神様はまた水の中に消え、次は鉄の斧をもって現れます。
木こりは「それが自分のものだ」と答えると、女神様は木こりの正直さに感心し、金の斧も銀の斧もすべて持って帰るように言います。
その話を聞いた木こりの強欲な友人は、自分もあやかろうと、わざと自分の鉄の斧を泉に落とします。
同じように女神様が現れ、金の斧を見せると、強欲な木こりは目をギラつかせて「自分のものだ」と得意げに言います。そして、銀の斧も落としたので、それも拾って欲しいと頼みます。
すると、女神様は「お前は嘘をつきましたね、私はうそつきは大嫌いだ」というと、金の斧と共に水の中に消えてしまいます。
強欲な木こりは、金の斧も銀の斧も手に入れられないどころか自分の斧も失うという結果になります。
あらすじを簡単にまとめると…
ある日、木こりが木を切っていると、あやまって泉に斧を落としてしまいます。泉の女神が現れ、落とした斧はこの金の斧か、銀の斧か、と尋ねるも、木こりはどちらも違うと答え、鉄の斧を見つけてもらうと同時に金銀両方の斧ももらいます。
その話を聞いた木こりの友達は、わざと同じように斧を落とし、金も銀も自分のものだと言うと、嘘を見破った女神様に怒られ、金銀どちらの斧も手に入れられないどころか、鉄の斧も失う結果になります。
主な登場人物
登場人物は以下の3人となります。
正直者の木こり
あやまって泉に斧を落としてしまう木こり。
強欲な木こり
正直者の木こりの話を聞いて、正直者の木こりの真似をするが嘘が災いする。
泉の女神
木こりたちの落とし物を助けるために泉から現れる精霊。
2つの教訓
『金の斧』には2つの教訓があります。
正直者は報われる
この物語では、正直さに感心した神様によって褒美を得るという事から、誠実さと正直さ、また感謝の意を持つことの大切さを教えるとともに、人間としてのモラルや徳を説いています。
欲張ると損をする
嘘をつくと罰せられるという事と、嘘をつくと結果的に損することを教えています。
『金の斧』を読むなら
それでは『金の斧』の本をページ数、漢字、ルビ有り無し、などで易しい順にご紹介します。
イソップえばなし ~【デジタル復刻】語りつぐ名作絵本~
立原えりか (著), 鈴木康彦 (イラスト) 形式: Kindle版 単行本 19ページ 1991/8/10
文字が読めるようになったら~。 漢字なし、カタカナなし、ひらがなのみ。
金のおのと銀のおの イソップものがたり (はじめての世界名作えほん)
小学校低学年~。易しい漢字あり、ルビあり。
金のオノと銀のオノ 【日本語/英語版】 きいろいとり文庫
形式: Kindle版 2019/11/21
英語版併記あり。Kindle Unlimited 対象本。小学校中学年~。単行本 40ページ。
日本でも同じような教訓が
日本でも「嘘つきは泥棒の始まり」とか「お天道様は見ている」というように、嘘をついたり悪事を働くことは結果的に自分の身を滅ぼすことになり、災いが降りかかってくるという教えがあります。
また、日本昔話の「はなさかじいさん」ではここ掘れワンワン、とポチが穴を掘ると財宝が出てきて、それに嫉妬した強欲な隣人がポチに穴を掘らせるとゴミばかりが出てくる、というシーンがありますよね。洋の東西や時代を問わず、同じような教訓やモラルを問うお話があることが分かります。
小さなお子さんでも分かりやすい短いお話ですので、読み終わった後に、強欲の木こりの何がいけなかったのか、そしてなぜ損してしまったのか、一緒に考えてみましょう。
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文/加藤敬子 構成/HugKum 編集部