「ガリヴァー旅行記」の知られざる世界。小人国、巨人国以外に訪れた国は? 風刺小説の背景にあるものを考える

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ガリヴァーが世界中を旅する『ガリヴァー旅行記』。日本はもちろん、世界中で知られるストーリーです。そんな『ガリヴァー旅行記』はだれが、いつ書いた作品なのでしょうか。あらすじや登場人物などをあらためてチェックしてみましょう。また、今なお読み続けられている人気の秘密も解説します。

ガリヴァー旅行記とは?

『ガリヴァー旅行記』とは、名前の通り、ガリヴァーがさまざまな国をめぐる話。イギリスの作家であるジョナサン・スウィフトが書いた風刺小説です。初版が出版されたのは1726年。それ以降、版をかさね続けています。

イギリスの風刺小説家による『ガリヴァー旅行記』

主人公のレミュエル・ガリヴァーがさまざまな国々を旅していく『ガリヴァー旅行記』。背が15センチほどしかない「小人の国」に行ったり、逆に20メートル以上の「巨人の国」に行ったりと、ガリヴァーのさまざまな冒険と旅のストーリーです。

そんなこの小説は、いつ、だれが書いたのでしょうか。物語が書かれた背景に迫りましょう。

原題:Gulliver’s Travels
国:イギリス
発表年:1726年
おすすめの年齢:小学校低学年以上

ジョナサン・スウィフトってどんな人?

『ガリヴァー旅行記』を書いたジョナサン・スウィフトは、1667年にアイルランドで生まれ、1745年に亡くなった小説家。彼の作品はとくに風刺小説が多いのが特徴です。

風刺小説とは、社会や政治、人間性などの現実について批判する意図をもって書かれたもの。『ガリヴァー旅行記』もそんな風刺小説のひとつで、「風刺文学の傑作」と表現されています。

『ガリヴァー旅行記』は子ども向けにアレンジされた絵本や児童文学としてよく知られていますが、原作の小説を読むと、社会や人間性を痛烈に批判する風刺文学であることがよくわかります。

いつの時代の話?

『ガリヴァー旅行記』が発行されたのは1726年。日本は江戸時代後期にあたります。現代のように、飛行機や船を使って人々が自由に旅をするのはまだ難しい時代。きっと多くの国に旅に出ることに憧れもあったのでしょう。小人の国や巨人の国など、さまざまな異国をめぐる『ガリヴァー旅行記』には、そんな背景もあるのかもしれません。

物語のあらすじ|「詳しく」&「簡単に」2バージョンでご紹介

では、『ガリヴァー旅行記』のあらすじについて、「詳しく」と「簡単に」の2つのバージョンでご紹介しましょう。

詳しいあらすじ(ネタバレあり)

主人公はレミュエル・ガリヴァー。第1編では、船医として船にのり航海しているなか、船が転覆してガリヴァ―が海に投げ出されてしまうところから話が始まります。

「リリパット」に到着

必死で海を泳ぎなんとか陸地にたどり着くと、疲労でそのまま眠りについてしまいました。しばらくして目を覚ますと、全身を紐で縛られ、周囲には背が15センチほどしかない小人ばかりがいることに気づきます。ガリヴァ―がたどりついたのは、小人の国「リリパット」だったのです。

小人たちはガリヴァ―をどうするか考えあぐねていましたが、友好的な態度をみせたガリヴァーに対して、食べものなどを提供してくれました。敵対する国「ブレフスキュ」がリリパットに攻撃をしかけることがわかったときは、リリパットに恩を感じたガリヴァーが、艦隊をとらえ、戦争を解決させたのです。

「ブロブディンナグ」での暮らし

第2編は、ガリヴァーが巨人の国ブロブディンナグに到着したストーリーです。20メートル近くの巨人が暮らす国で、彼らに捕まえられたガリヴァーはサーカスのように見世物にされてしまい、しまいには同国の王妃に売り飛ばされてしまいました。

しかし王妃はガリヴァ―を大切にし、良い待遇を受けていました。ただ巨人の国では、ガリヴァーは小人のようなもの。子どもにいたずらされたり、巨大な虫などに襲われたりすることも数多くあったのです。

「ラピュタ」「バルニバービ」を経て

第3編では、空を飛ぶ島ラピュタにたどりついたガリヴァー。数学と音楽のみに長けた人が暮らす島で、この島ではガリヴァーは軽蔑されがちだったことから、ラピュタに嫌気がさし、ここを去ることにするのです。

次にガリヴァーが行ったのは、下界領土バルニバービ。もともと豊かな国でしたが首都ラピュタから搾取され、住民は生気がなく荒れ果て、反乱も起きていました。そんななか、最新の科学研究もおこなわれており、ガリヴァーはそれらも見学してまわるのです。

ガリヴァーは、ラグナグと日本を経由してイギリスにもどろうとしますが、船がなかったため、小さな島グラブダブドリッブに立ち寄り魔法使いの人々と遭遇。彼らの降霊術によって、ガリヴァーは歴史上の偉人や学者と会話を楽しみます。最後は、ガリヴァーはラグナグと日本に上陸するのです。

「フウイヌム」見聞録

第4編の最終編は、フウイヌム国渡航記。フウイヌムは馬の姿をした種族で、平和で合理的な社会が形成され、戦争や疫病などもなく、種族的なカースト制度がありました。

しかし彼らが嫌っていたのが、ヤフーと呼ばれるサルのような毛深い生物。ガリヴァ―は、ヤフーとフウイヌムが訴訟を起こしたり争ったりする姿から、この2つの種族に類似性を見つけるのです。

さらにガリヴァーは自身がヤフーであると信じるようになり、処刑されるかフウイヌムを出ていくかどちらかを言い渡されてしまうのです。結局ガリヴァーはこの国を旅立つこととなりました。

簡単なあらすじ(ネタバレなし)

船医として働いていたレミュエル・ガリヴァーは遭難事故で、ある未知の国にたどり着きます。そこは、小人の国であったり、巨人が暮らす国だったり。そこでガリヴァーは、その国の人々との暮らしていくのです……。

小人国「リリパット」でのガリバー(イメージ)

ガリヴァー旅行記の主な登場人物

『ガリヴァー旅行記』でおさえておきたい、主な登場人物を確認しましょう。

レミュエル・ガリヴァー

『ガリヴァー旅行記』の主人公。船医として働いている人物です。

リリパット国民

リリパットは小人の国。第1編でガリヴァーがたどり着いたのが、リリパットの国でした。

ブロブディンナグ国民

第2編でガリヴァーが行ったのが、巨人の国であるブロブディンナグです。

ガリヴァー旅行記が読み継がれている理由

『ガリヴァー旅行記』が最初に発表されたのは1726年。今から300年近くも前になります。それでも今なお『ガリヴァー旅行記』が世界中で読み継がれているのはなぜなのでしょうか?

第1編から第4編まである

『ガリヴァー旅行記』は第1編から第4編まであります。第1編と第2編だけをまとめ、子ども向けに読みやすく編集されたものは、数多く出版されていますが、実は第4編まで読むことができるのです。

すべての内容を読むと著者のジョナサン・スウィフトがこの小説を通して、どんなことを風刺・批判したかったのか、きっと見えてくるはずです。

社会や人々を皮肉った風刺小説

『ガリヴァー旅行記』はもともと、児童文学ではなく、風刺小説として書かれています。

小人の国では戦争が行われ、巨人の国では人々は平和に暮らすものの、彼らの世界では小人のような存在だったガリヴァーは人々から嘲笑されました。そんなストーリーを通して、当時の社会や政治、人間性などを皮肉り、痛烈に批判しているのです。

何度も映画化されている

風刺小説という面はありながらも、壮大なスケールの冒険物語という面もある『ガリヴァー旅行記』。これまでに度々映画化されてきています。世界中で長いこと愛されている証と言えるでしょう。

名作「ガリヴァー旅行記」を読むなら

『ガリヴァー旅行記』に興味を持った方は、あらためて読んでみませんか?

小学館世界J文学館「ガリヴァー旅行記」

子ども向けの『ガリヴァー旅行記』では、小人の国リリパットと巨人の国ブロブディングナグの2つだけをまとめたものが多いのですが、本書は「飛行島ラビュタ」と「馬の国フウイヌム」もまとめています。

世界名作館「ガリバー旅行記」(学習まんが)

『ガリヴァー旅行記』をまんが化した一冊。名作にはじめて触れる子どもにおすすめです。

「ガリバー旅行記」完全版

第1編から第4編まで収録した完全版です。

『ガリヴァー旅行記』をあらためて読んでみよう

『ガリヴァー旅行記』は第1編から第4編まである、長いストーリーの物語です。子ども向けの絵本で楽しんでもいいですし、大人になってからあらためて読んでみても、また違う風に感じることがあるかもしれません。風刺小説と言われる物語なので、そんな視点で読んでみてもいいのではないでしょうか。

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文・構成/HugKum編集部

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