映画やミュージカルでも人気の『レ・ミゼラブル』。 原作のあらすじを知ってますか?【教養としての文学】

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ミュージカルの金字塔とも言われる『レ・ミゼラブル』。同様に映画版も名作として有名ですが、この原作がどのようなお話かご存知ですか? 今回は、『レ・ミゼラブル』のあらすじをご紹介していきます。
<上画像:ユーグ版『レ・ミゼラブル』のエミール・バヤールによる木版挿画(1879 - 1882年>

「レ・ミゼラブル」ってどんなお話?

『レ・ミゼラブル』とは、1862年に出版されたフランスの大河小説。19世紀初頭のフランスの動乱期を舞台に、当時の社会情勢や民衆の生活を描いた作品です。

1985年にロンドンでミュージカル化されて以来、世界中で上演され続け、今現在でも名演目として広く親しまれています。数度にわたって映画化もされているため、映像版をご存じの方も多いかもしれませんね。

物語には19年もの間投獄されていたジャン・バルジャンの、すさんだ心を改心して愛情に生きた生涯が描かれており、時代を超えて人々の胸を打ち続けています。

日本では1902年に黒岩涙香によって『噫無情』(ああむじょう)のタイトルで日刊新聞『萬朝報』に連載されたのが初出。画像は通俗泰西文芸名作集[大正14年(1925年)帝国講学会]に収められた『ああ無情』。[国立国会図書館デジタルコレクション]

あらすじ・ストーリー紹介

ここからは、さっそく『レ・ミゼラブル』のあらすじを見ていきましょう。詳しいバージョンと簡単なバージョンのふたつにまとめてみました。

詳しいあらすじ

家族のためにパン一斤を盗み、19年間も投獄されていたジャン・バルジャン。釈放後あてもなく彷徨っていたところ、ある司祭の家に泊めてもらったジャン・バルジャンは、司祭が寝ている間に銀の食器を盗んで逃げてしまいます。

翌朝、ジャン・バルジャンは捕まってしまいますが、司祭は「それは自分があげたものです」と告げ、さらには銀の燭台までをも捧げます。解放されたジャン・バルジャンは感激して改心し、「マドレーヌ」と名乗って働くようになり、ついには市長にまでなりました。

ジャン・バルジャンは自身が営む町の工場で働いていた娼婦・フォンティーヌと出会います。その後、一度はかつての罪のため逮捕された終身刑の判決をくだされたジャン・バルジャンでしたが、脱獄をはかり、フォンティーヌを亡くしたその一人娘のコゼットを引き取って、自分の娘として育てます。そして、ジャン・バルジャンとコゼットは本当の親子ような愛情を築きました。

数年後、マリユスという青年と恋に落ちるコゼット。しかしながら、パリには革命や戦争の影が迫ってきて…。

マリユスが所属する秘密結社や犯罪者集団の動向、コゼットとマリユスの恋、そして、コゼットに対するジャン・バルジャンの自己犠牲にも近い愛情を、貴族の終焉と民衆の反乱という時代の大きな流れを背景に描いた物語です。

簡単にまとめると…

一斤のパンを盗んだことで19年間投獄されて、すさんでいたジャン・バルジャン。そんな自分を泊めてくれた司祭の献身や、引き取って本当の娘のように育てたコゼットとの交流などを通して改心し、良心と愛情に従って生きた彼の生き様を、19世紀フランスの社会情勢を背景に描いた物語です。

1879年 – 1882年出版の『レ・ミゼラブル』の木版挿画。のちにミュージカルのイメージアイコンにも使用される。Paris Musées Collections(PD)

作者が伝えたいことは

本作を通じて作者が伝えたかったことは、「どんな状況にも希望はある」ということではないでしょうか。

ありとあらゆるキャラクターの、どこまでも悲惨な状況が描かれている『レ・ミゼラブル』。しかしながら、作中には、悲惨な状況下でも強く生きる人々の姿が描かれています。そして、その根底には誰かを慈しむ心があることも特筆すべき点です。

誰かを愛することを希望とし、その希望は悲惨な状況下でも大きな生きる力となることを、作者は描きたかったのかもしれません。

「レ・ミゼラブル」の作者は?

そんな本作の作者がどのような人物かご存じですか? ここでは、作者のヴィクトル・ユーゴーと、ユーゴーが生き、本作にも反映された時代背景をご紹介していきます。

作者のヴィクトル・ユーゴーってどんな人?

ヴィクトル・ユーゴー Photo by Étienne Carjat , Wikimedia Commons(PD)

ヴィクトル・マリー・ユーゴー(Victor-Marie Hugo)とは、1802年にフランスに生まれた、フランス・ロマン主義の詩人・小説家です。ほかの代表的な作品には、『東方詩集』『静観詩集』『ノートルダム・ド・パリ』などがあります。

レ・ミゼラブルに書かれた時代背景

作中には、ナポレオン1世が没落した直後の1815年から、復古王政時代を経て、七月革命後の1833年までの18年間が描かれています。フランス革命ほか、ナポレオンの第一帝政時代やその後の暴動も回想として挿入されています。

ヴィクトル・ユーゴー自身も、フランス革命後の動乱期に生まれており、『レ・ミゼラブル』からはその影響を見て取ることができます。政治にも関心を持ち、ナポレオン3世のクーデターに反対して亡命生活を送りましたが、本作はその間に完成されたと言われます。

「レ・ミゼラブル」を読むなら

最後に、『レ・ミゼラブル』を読む際におすすめの書籍をご紹介します。

レ・ミゼラブル―ああ無情― (新装版) (講談社青い鳥文庫)

レ・ミゼラブル―ああ無情― (新装版) (講談社青い鳥文庫)

小学校中学年ごろのお子さんでも読みやすい、物語が簡潔にまとめられた抄訳バージョン。ほとんどの漢字にルビがふられているので、漢字でつまずくこともありません。かわいらしいイラストが想像をさらにかき立ててくれて、楽しく読み進められます。

レ・ミゼラブル―ファンティーヌとコゼット (愛蔵版 世界の名作絵本)

レ・ミゼラブル―ファンティーヌとコゼット (愛蔵版 世界の名作絵本)

ユーゴーの超大作『レ・ミゼラブル』を絵本として楽しむことができる一作。物語はかなりダイジェストになりますが、それでも「原作の雰囲気を味わうことができる」と好評です。ユニークで印象的な挿絵も魅力のひとつ。

レ・ミゼラブル 第一部 ファンチーヌ (平凡社ライブラリー0892)

レ・ミゼラブル 第一部 ファンチーヌ (平凡社ライブラリー0892)

2012〜2014年にかけて全5冊で刊行された平凡社版の『レ・ミゼラブル』。完訳版のなかではもっとも新しい翻訳なので、現代人にも親しみやすい言葉で読むことができます。原作の雰囲気を存分に味わうのに最適なシリーズです。

世界史を勉強するお子さんにもおすすめの作品!

今回は『レ・ミゼラブル』のあらすじや書かれた時代背景、作者についてを中心にお伝えしてきました。フランス革命とその後の激動の歴史を知るのにもおすすめな作品です。キャラクターたちに感情移入することで、世界史の勉強もより捗るのではないでしょうか。

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文・構成/羽吹理美

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