「京都五山送り火」は何をする?鑑賞スポットや楽しみ方を解説

夏の代表的な行事・京都五山送り火は、祇園祭と並ぶほどの人気イベントです。京都五山送り火の歴史や目的、行事を盛り上げる言い伝えなどを詳しく解説します。子どもと参加する際の注意点も確認し、親子で京都五山送り火を楽しみましょう。

京都五山送り火とはどのような行事?

京都五山送り火は、どのような意味のある行事なのでしょうか。京都五山送り火をする目的を踏まえ、行事の特徴を解説します。

お盆に帰ってきた先祖を送る伝統行事

8月13〜16日のお盆には、亡くなった先祖の霊が家族のもとへ戻ってくるといわれています。京都五山送り火は、先祖の霊を元の世界へ送るための行事です。京都では先祖の霊のことを、親しみを込めて「お精霊(おしょらい)さん」と呼ぶそうです。

8月のお盆前になると、京都では「精霊迎え」という先祖を迎えるための行事が実施されます。一方でお盆の終盤になると京都の山々に送り火を灯し、先祖の霊を再びあの世へ送ります。

例年ではお盆の最終日にあたる8月16日に京都五山送り火が開催されており、2024年も8月16日(金)の実施予定です。

参考:京都五山送り火「どんな行事?」|【京都市公式】京都観光Navi

5種類の送り火が順番に点灯する

8月16日の20時ごろ、京都市内の照明が消えると東山の如意ヶ嶽(にょいがたけ)に「大文字(だいもんじ)」の送り火が灯ります。

如意ヶ嶽の「大」

20時05分ごろには松ヶ崎にある西山に「妙」、東山には「法」が同時に浮かび上がる流れです。

西山の「妙」

 

東山の「法」

20時10分ごろになると、(にしがもふねやま)に「船形(ふながた)」の送り火が灯ります。

西賀茂船山の「舟形」

続いて5分後には、衣笠にある大北山(おおきたやま)に「左大文字(ひだりだいもんじ)」が点火されます。さらに5分が経過した20時20分ごろ、嵯峨の曼荼羅山(まんだらやま)に「鳥居形(とりいがた)」が灯る流れです。

曼荼羅山の「鳥居形」

送り火はそれぞれ約30分間灯り続けるので、20時20〜30分には5種類全ての送り火が京都の町を照らします。送り火ごとの見えやすい場所の目安は以下のとおりです。

●大文字:鴨川堤防
●妙:北山通
●法:高野川堤防
●船形:北山通
●左大文字:西大路通
●鳥居形:渡月橋・松尾橋・広沢池など

同じ北山通でも、「妙」は京都ノートルダム女子大付近、「船形」は北山橋から北西と、見えやすい方角に違いがあるので注意しましょう。

京都五山送り火にまつわる言い伝え

点火前の左大文字(大北山)

京都五山送り火には、さまざまな言い伝えがあります。代表的な言い伝えを確認し、京都五山送り火の鑑賞をより楽しみましょう。

護摩木について

京都五山送り火の際に護摩木を炊き上げてもらうと、1年間を安全に過ごせるという言い伝えがあります。

護摩木はもともと、亡くなった先祖の戒名を書いて供養するためのものでした。しかし現代では、生きている人の厄除けなどを願って護摩木を記すようになっています。

2023年には以下の場所で、護摩木の奉納が受け付けられました。

●大文字:銀閣寺前
●妙法:武與門ビル入口
●船形:西方寺駐車場
●左大文字:金閣寺門前
●鳥居形:府道50号線「八体地蔵」付近

鳥居形の護摩木を受け付けている府道50号線は、右京区嵯峨鳥居本小坂町にあります。受付の日時も場所によって異なりますが、お盆の8月13〜16日ごろが主流です。16日の昼ごろまで受け付けている場所はあるものの、護摩木がなくなり次第終了します。また台風などの影響により、受付しないこともあります。

送り火の灯りについて

京都五山送り火の鑑賞中にも、無病息災に関する言い伝えがあります。無病息災とは病気や災害などに遭わず、元気に過ごせることを表した言葉です。

送り火鑑賞中に、丸い盃に注いだ水に「大文字」の「大」の灯りを映して飲むと、病気にかかりにくくなるといわれています。底の丸い器ならコップでも代用できるため、水筒などを持参して子どもと一緒に家族の平穏を願ってみてはいかがでしょうか。

送り火の消し炭について

送り火の火床に燃え残った「消し炭(からけし)」にも、厄除けなどが期待されています。京都五山送り火の翌日には、消し炭を拾うために多くの人が登山をします。家族で「大文字」の送り火が点火された如意ヶ嶽に登り、消し炭を拾いに行くのもおすすめです。

手に入れた消し炭は奉書紙にくるみ、水引きをかけて家の出入口などに吊るしておきましょう。奉書紙は和紙の1種で、弔辞を書いたり、香典・お布施を包んだりする際に使われます。

送り火の準備の様子

子連れで京都五山送り火を楽しむポイント

京都五山送り火は夜に開催されるため、子どもを連れて参加する際には注意が必要です。親子で京都五山送り火を楽しむポイントを、行動・準備に分けて解説します。

早めの行動を心がける

京都五山送り火は日本だけでなく、外国の観光客からも人気のイベントです。混雑は避けられないため、例年では前後の時間帯に交通規制がかかるエリアもあります。送り火が点火される時間も遅いので、できるだけ早めに行動して子どもに負担がかからないようにしましょう。

また、近隣のホテルを予約して、上層階から複数の送り火を鑑賞する手もあります。京都五山送り火自体は1時間にも満たないイベントですが、ホテルに宿泊すると旅行気分も味わえます。

持ち物の準備も念入りに

京都五山送り火は夜のイベントなので、気温の変化や子どもの睡眠に対応できる、以下のようなグッズを用意しましょう。

●水筒
●薄手の上着
●抱っこ紐
●雨具
●折りたたみ傘

野外で鑑賞する場合、急な雨に遭遇する可能性も考えられます。夜は気温が大幅に下がるケースもあるので、カーディガンやパーカーなどの羽織れる上着が役立ちます。

人の多い夜道をベビーカーで移動するのは親子ともに負担がかかるので、抱っこ紐を持参するのがおすすめです。その他、子どもが小さい場合にはおむつ・着替えなどもそろえておきましょう。

子どもと一緒に京都五山送り火を鑑賞しよう

先祖の霊を送る京都五山送り火は、祇園祭と並ぶ夏の風物詩です。送り火は合計で5種類あり、点火される時間帯や見えやすい場所がそれぞれ異なります。

20時ごろから1時間足らずで終了するイベントですが、たくさんの観光客が訪れることが予想されるので、子どもと一緒に参加する際には負担を和らげる工夫や準備も大切です。親子で京都五山送り火を鑑賞し、幻想的なひとときを過ごしましょう。

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構成・文/HugKum編集部

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