息子に異変が
最初の異変は、小学校6年生の卒業間際。長男は楽しみにしていた、最後の給食がまったく食べられなかったと帰宅しました。
最後の給食は、自校献立と言って、子どもが好きなものばかりを集めたバイキング。それが食べられないだなんて!と驚きましたが、少し胃腸の調子が悪いだけだろうと、胃腸の薬を飲ませました。
その日以降、食欲が落ちたにもかかわらず、市販の胃腸薬を渡すだけの私。
中学へ進級し入学式の日には、長男の誕生日でもあったためケーキを用意。ところが、大好きなはずのケーキすら食べませんでした。
そのうち、朝起きるのも辛そうにしておりました。
しかし、私には、怠けているように見え「夜更かししていたからだ」などと毎朝、責める言葉が増えていってしまいます。
今考えると、その不調が長引いていたときに例え、仕事が忙しくても、病院に連れて行ってあげればよかったと後悔しています。おそらく、無理させたことで起立性調節障害に至る引き金になったのかと思います。
体調が悪いまま中学へ進学
入学当初のクラスの集合写真は右上の四角い枠に入ってしまいました。その後も毎日30分の遅刻から、1時間の遅刻へと遅れて登校するようになり、ついに、休む日も。中学校は休みがちになりました。
それでも無理に登校させた理由は、症状があるのは朝だけで、夜には元気になるからです。それもこの起立性調節障害の症状の特徴であると、あとで知りました。
うつ病と起立性調節障害は意欲や集中力の低下、食欲低下など症状が類似していますが、起立性調節障害の場合午後や夕方になるにつれて症状が緩和していきます。
起立性調節障害って、どんな病気なの?
当時、長男は小学生だったので、かかりつけの小児科に行きました。その後、総合病院への紹介状を書いてもらい、大きな病院で受診しました。「起立性調節障害」と診断されて、やっと息子の異変を理解することができました。
「起立性調節障害」の原因やサイン
起立性調節障害は自律神経の調節不全が原因だそう。症状はさまざまで、朝~午前中に起こることが多く、怠けていると勘違いされ、見逃してしまうようです。腹痛、吐き気、めまい、食欲不振、やる気が出ない、人と関わりたくないなどの症状を訴えるのがサイン。
診断方法は特殊
①一般的な検査(血液検査や心電図検査、問診や身体診察)で、ほかの疾患がないかを確認してから、「新起立試験」と呼ばれる少し特殊な検査を開始。新起立試験は、体の不調が出る時間帯である早朝や午前中に検査を受ける必要があるため、医療機関によっては前泊入院して早朝に検査を行うところもあるそう。
②患者の体に心電図と血圧計を装着し、モニタリングしながら10分間ベッドの上で安静にしながら仰向けの姿勢で心拍数と血圧を3回測定。
③その後、患者自身に立ち上がってもらい10分間起立を維持、起立後数分おきに血圧と心電図を測定し、一時的に低下した血圧がどれくらいの時間で元に戻るのかチェックするもの。起立後10分で心電図測定を終了。この時の血圧と心拍数の変化を元に確定診断を行うという流れ。
診断結果に落胆
「起立性調節障害」と診断され、数値やどのような症状が一番強く出ているのかなど、細かいものは記憶していませんが、あぁやっぱり病気だったんだ、と落胆したことは覚えています。
起立性調節障害の克服方法は
息子が起立性調節障害と診断され治療に取り掛かることになりました。
症状によって4つのサブタイプがある
起立性調節障害は、症状によって4つのサブタイプに分けられます。起立直後に急激な血圧低下が見られる「起立直後性低血圧(INOH)」や、起立したことで急激に心拍数が増加する「体位性頻脈症候群(POTS)」などです。医師は本人のタイプや症状の程度を判断して薬を処方します。薬物療法は非薬物療法と同時に進められるものであり、薬を飲んでさえいれば確実に治るものではありません。
起立性調節障害の治療に用いる主な薬
ミドドリン塩酸塩やメチル硫酸アメジニウム、プロプラノロール塩酸塩です。場合によっては漢方薬が処方されることもあるようですが、大切なのは子どもの症状や体質に合う薬を服用することです。私は高血圧の診断を受けるほど、常に血圧が高めなのに対して、長男は上が100あるかないか。低血圧が影響している?と、その時もらった薬は血圧を上げる薬でした。
「起立性調節障害といえばコレ」というような薬はないものの、長期的に服用することで症状の緩和や改善が期待できる薬はあります。
生活リズムの改善
起立性調節障害では、体内時計の乱れが原因ともされています。その体内時計のズレを戻すための治療、まずは光療法を試してみました。部屋のカーテンを、陽の光を感じる程度のものに替えたり、眠くなくても布団に入るように促します。日中は明るい中で過ごし、夜暗くなると眠るというシンプルなものですが、現代人は意識をしないとできないことなのかもしれません。
診断されて思ったこと
改善しない体調不良があったら、自己判断せずかかりつけの小児科に行くこと、ですね。まずは、しっかりこの病気を理解し、どこが辛いのか(本人に聞くことはせず)を見つけて、話を聞いてあげることが大事だなと思いました。
子どもの異変のサインは見逃さないで
長男は、治療によりほぼ回復しましたが、この経験を通して言いたいことは、誰でも起こりうる病気と言うこと。
なので、お子さんが少しでも不調だと訴えてきた時は、「やる気がないだけだ」と叱るのではなく、その原因やどんな気持ちでいるのかなど、細かく聞いてケアしてあげることがとても大切と思いました。我が家のように、その後おおごとになることもあるからです。
ああしておけば良かった、という後悔がないように、日頃から親子でコミュニケーションを取って面と向かって会話をする時間を多く取って欲しいです。
ちなみに、長男は現在社会人です。相変わらず朝は弱いのですが、それも自分と受け入れ、睡眠時間を確保することや、朝の準備を夜のうちにしておくなど、計画的に朝を迎えることによって、普通の生活が保たれています。家にいる間は、私もサポートしていきたいと思っています。
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参考サイト
参考:新起立試験の手順|起立試験との違い・保険点数・シェロングテストとは
参考:病院は何科に行くべき?中学生の起立性調節障害|受診・検査費用はいくら?
文/森岡陽子