【産婦人科医・高尾美穂先生】プレ更年期は心のケアも大切「心はガラスのようなもの。自分と誰かを比べないで」

更年期に起こりやすいメンタルダウン(心の不調)。それを防ぐために「プレ更年期」のうちにできることはあるのでしょうか?産婦人科医の高尾美穂先生におすすめの習慣や、考え方のコツを伺いました。

30代後半~45歳の「プレ更年期」の女性は、心の不調に備えたい

子育てや仕事にいそがしい「プレ更年期」の女性。体の疲れだけでなく、ふと心の疲れを感じることはありませんか。
「更年期」は閉経の前後10年間のこと。日本人の平均的な閉経は50歳なので、多くの人は46歳〜55歳くらいまでが更年期。「プレ更年期」は医学的な表現ではなく、メディアを通して広がったもので、30代後半〜45歳ごろまでを指しています。

『更年期に効く美女ヂカラ』の著書である産婦人科医・高尾美穂先生は、更年期に入る前に生活習慣を整えることが体も心も元気にしてくれるといいます。

今回は更年期に起こりやすいメンタルダウン(心の不調)に備えて、プレ更年期のうちにできることや考え方について伺いました。

更年期が始まる前に、心を整える習慣を

更年期になると心の不調が起こりやすいのはなぜでしょうか?

高尾先生:閉経前後には女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減るのと連動して、幸福を感じさせる脳内物質セロトニンも減ってしまうので、うつや落ち込み、無気力などメンタルダウンを起こしやすくなります。うつ病にかかる人の数も女性は男性の2倍といわれていて、更年期だけでなく、生理前や産後にも発症しやすいことがわかっているのです。

とはいえ自分のメンタルダウンに気づけず、他人に指摘されて初めて自覚するという人も少なくありません。「何でもないのに涙が出る」「やる気が起きない」「他人の言動に敏感になる」などの兆候がある人は心の不調を疑ってみてください。

高尾先生のご著書『更年期に効く美女ヂカラ』にはメンタルケアについても具体的に書かれていますね。このような考え方や習慣は、プレ更年期のうちにも気をつけておいた方がよさそうですね。

高尾先生:もちろんです。体だけでなく、気持ちはもっとリカバリーが効かないんです。心というのは、本当にガラスのようなものだと思っておいてください。子育ても仕事もいそがしくて、自分に向ける時間がほぼないような状況のなかで、ハッと気づいたらかなりしんどい状況になっている人も少なくありません。ですから、今、目一杯頑張っているという人はプレ更年期のうちに、自分の状態をよくするための取り組みをしてほしいです。

いそがしい日々だからこそ、自分のための時間を大切に

確かに、自分に向ける時間って後回しになってしまいますね。

高尾先生:私も30代後半くらいは、お産や手術を任されるようになったり、後輩の指導をしたりと、とにかく仕事が充実している時期でした。でも、長く人生を考えた時にいつまでもこのスタイルで働くことは自分の人生にとってよくないと思ったんですよね。

だから、夜は働かないスタイルの働き方を模索して、今に至っています。当直の仕事を辞めるっていうのは、ほぼ、お産を辞めるという意味ですから、産婦人科医として相当な決意でした。でも、どこかのタイミングで何かを手放さなければならないのだと思います。なぜなら1日は24時間しかないから。その中には睡眠や運動の時間も必要なんですよね。

生活習慣を整えるためには、時間の使い方を見直すことが大切なのですね。

高尾先生:時間だけが、本当の意味で誰にとっても平等なものだと思っています。お金では買えないし、 貯めることもできない。でも自分の時間の使い方は本来、自分で決められるんですよね。だから我が家にはテレビもないし、ドラマも見ない。SNSも時間を使ってしまうので基本的に発信のみにしています。
もちろん、家族がいるからとか、子どもがいるから、という事情はありますよね。でも今、調子がよくないのであれば、時間の使い方を少しでも自分の望むスタイルに変えてみてほしいです。お母さんが、調子が良い状態っていうのは、 お子さんにとっても幸せなんですよね。自分よりも、子どもを大事にするという気持ちは誰しもありますが、 いずれ、無理がきかなくなる時がくる。それが更年期なんですよね。

柔軟な考え方で、日々のストレスを手放す

人間関係によるストレスにはどのように対応するのがよいでしょうか。

高尾先生:若いときは、他人の存在によって自分を成長させられるようなときもあります。でもそうでなければ、自分を傷つけるものからは、距離を置くことを考えてみてよいと思います。それが例えばパートナーや親、兄弟、職場の人や上司などであっても、何かおかしい、違うなと感じるのであれば手放すときなのかもしれません。そういう選択肢があるということを考えず、苦しんでいる方も少なくないのではないでしょうか。

他人と自分を比べて自己嫌悪に陥ることもあります。

高尾先生:SNSなどの影響もあり、他人の生き方がうらやましくなるという人も多いですよね。様々な生き方が選択できる時代になったからこそ、特にプレ更年期世代の女性は、誰かを見てうらやましいと感じる時期なのだと思います。

でもそれは反対に、あなたがうらやましく思っている人は、あなたのことをうらやましく思っているかもしれないということ。今、自分のいる状況というのが、なんとなく流されてたどり着いたものだったとしても、客観的な目で見つめて見てみると、いいところも結構あることに気づくのではないでしょうか。私たちから見えている他人っていうのは、 ほんの一部だということも忘れないでくださいね。

心の不調を改善させるためには、しっかり睡眠をとることも大切だという高尾先生。『更年期に効く美女ヂカラ』にも様々なセルフケアの方法が掲載されていますのでぜひチェックしてみてくださいね。

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お話をうかがったのは

高尾 美穂|産婦人科専門医・医学博士・婦人科スポーツドクター
女性のための統合ヘルスクリニック イーク表参道 副院長。
女性の健康で幸せな人生と前向きな選択を後押しすることをライフワークとしている。NHK 「あさイチ」などのTV番組や、雑誌、SNSなど数々のメディアで発言。音声配信プラットフォームstand.fmでは『高尾美穂からのリアルボイス』を毎日配信。体や心の悩みから人生相談までリスナーの多様な悩みに回答し、980万回再生を超える人気番組となっている。
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文・構成/平丸真梨子

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