17歳、最年少の世界遺産検定マイスター 山本・リシャール登眞さんに聞く「好きなことの見つけ方」。自由研究の楽しみ方も!

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最年少の世界遺産検定「マイスター」として『世界ふしぎ発見!』『博士ちゃん』などのテレビ番組でも活躍している山本・リシャール登眞さん。その登眞さんに世界遺産の魅力にからめて、夏休みの自由研究のヒントを伺いました。

  • 登眞さん自身は現在17歳。もうすぐ成人の18歳となります。そんな登眞さんにとって小学生時代の自由研究は楽しかったようで、なんと今回、ご自分が実際に提出された自由研究を見せてくださいました!

自由研究は「自分の興味」を深堀りするチャンス

エジプトのアブ・シンベル神殿前の山本・リシャール登眞さん。11歳で世界遺産検定の最高位「マイスター」を取得して以来メディアで活躍。現在は京都在住の高校生。

山本・リシャール登眞さん(以下、登眞)「僕が世界遺産に興味をもつようになったきっかけは、4歳のときに博物館で見た棺です。エジプトの古代都市テーベで見つかったものですが、見たこともない美しさに強く惹かれました」

――4歳の時に、しかも棺に惹かれたんですか。

登眞「きっと、見つけた人はワクワクしただろうなあと。その後、世界遺産のことをいろいろ勉強していって……人類の守るべき文化を地球全体で守ると言う仕組みに魅せられて、現在に至るまでずっと人類の目指すべき姿だと思っています。今回は世界遺産をテーマにした自由研究をお見せしたいなと。まずは小5の時に『産業・工業の発展』というテーマで書きました」

登眞さんの小学5年生のときの社会科自由研究。
『産業・工業の発展』というテーマで富岡製糸場についてまとめてある。

――小学生で書かれたんですか? とてもしっかりとしたレポートです。

登眞「今見るとつたないですけど(笑)自分なりにワードを使ってまとめています」

――表紙は富岡製糸場ですね。

登眞「発端はイギリスの産業革命です。それが日本に入ってきて、富岡製糸場ができた島国の日本でヨーロッパと同じように産業革命が起こったのは、技術を伝え、産業を支えた人がいたからです。
2014年に世界遺産に認定されていたので興味があり、テーマに選びました(※富岡製糸場と絹産業遺産群)。他にも、中3で『権力から見る京都の保護文化財保護』というテーマで自由研究を行いました」

――登眞さんは京都にお住まいでしたね。

登眞「京都の世界遺産は、権力と強く結びついてるんですね。例えば平等院鳳凰堂は、藤原道長の極楽浄土を作りたいという思いから作られました。また銀閣寺は応仁の乱に疲れた足利義政が作ったものです」

中学3年生のときの自由研究は、京都の文化財を時代の権力などの歴史観にからめて研究。

――京都の方が言う「先の戦争」、室町時代に起きた応仁の乱ですね。

登眞「そうです(笑)銀閣寺には日本文化の礎と言いましょうか、基本的な要素がほとんど入っています。わびさびと言う単語は授業で習いますけれども、こうやって銀閣寺を通じて見ることで、肌で感じることができます」

――教科書で学んだことが実感できるんですね。

登眞「それと、自分は二条城が好きで。例えば入り口と奥のほうではふすまに描かれた絵が全く違うんですね。反乱する恐れのある、いわゆる外様大名を通す部屋では虎や鷹で相手を威嚇。一方で、徳川家の側近は牡丹や梅といった、やわらかいもので迎える。ふすまの絵ひとつで江戸時代のパワーバランスまで見てとれる。これに気づいた時は楽しかったです」

さすが世界遺産検定マイスター! Aマルの評価をもらっていますね。

――登眞さんご自身は自由研究を積極的にされてたようですが、自由研究に悩み苦しむ、HugKum読者のお子さんたちにアドバイスをいただけますか?

登眞「研究なんですから、かっこつけて自分のやりたいことを表現してみたら良いのでは、と思います。僕がやった自由研究も今見ると甘いところもあるし、若いなと思うんですけれども(笑)好きなものをやっているな、とは感じます。せっかくの機会ですから自分でやりたいこと、自分の興味のあることを探してみるのがいいと思います」

登眞流・自由研究のポイント

・小さいころから好きだったことにヒントが
・背伸びもおおいにアリ
・地元の文化財や歴史から、普遍的なテーマがみつかることも

身近なところから好きなものを見つけよう

――今はなかなか自分の好きなものが見つけられないと言われていますが……

登眞「本当に何でもいいんですよ。”なんとなく興味があるもの”を探してみることから始まると思います。それが僕の場合は世界遺産だったんです。自由研究って、ある意味自分の好きなものを明確にするきっかけにもなるんじゃないかなぁと思います。あと、好きなものは大人に強制されるんじゃなくて。自分で見つけるのが大事です」

――登眞さんは、自分の好きなものをどうやって見つけていったんですか。

登眞「興味のわくものはなんでも追求していました。本は分野を問わず、たくさん読んでいましたし、小学生向けの新聞もよく読んでいました

――お母さまから、自分の興味のあることをどんどん発展させていっていたとのお話をいただきました。

登眞「興味のあるものを見つけるには、まずは身近なところから始めてみるといいと思います。例えば、日本にも世界遺産はたくさんありますしね。まず地元のこと。そしてニュースやテレビ番組、学校の授業、なんとなく気になるもの。そうやって、自分と対話してみることが大切だと思います」

――旅行の折に寄ってみるのも良さそうです。

登眞「ちなみに、世界遺産は勉強してから行くとより一層楽しめます。調べていくのがおすすめですね」

登眞流・好きなものの見つけ方

・身近なものに目を向けて発見があることも
・本・新聞などにもアンテナをはりめぐらす

夏休みは好きなものを見つけるチャンス!

楽器演奏も登眞さんの好きなことのひとつ。ホルンをかかえての近影。

――今は情報があふれていて、なかなか見つけにくいような気もしますが……

登眞「好きなものを見つけるのが大変だと感じるかもしれません。でも、実際には好きなことに気づいていないだけだと思うんです。日本にはいろいろな文化があり、子どもが参加できるイベントもたくさんあります。自然や科学、スポーツもそうです。そういった機会をどんどん利用すると良いと思います。まず、いろんなことを体験してみることが大切です」

――夏休みはイベントも多いですしね。興味のあることを見つけるにはどうしたらいいんでしょうか。

登眞「やってみて、自分に合えばやればいいし、合わなかったらそれも経験の一つ。僕は突き詰めると視野が狭くなっていくというのは間違いだと思っていて、実際は無数に広がっていくんだと思います」

――興味が湧いたものに夢中になると、かえって世界が広がるということですか?

登眞「時事問題を見ていても、そこから思わぬ興味が広がっていったりします。例えば温暖化。今、極付近の氷がどんどん溶けている。世界で3番目に広い氷河地帯があるところってどこかご存じですか?」

――……南極、グリーンランドの次ということですよね……

登眞「実はアルゼンチンなんです」

――アルゼンチン!?南米じゃないですか?

登眞「青い氷河が250以上集まっています。でもその一番大きいウプサラ氷河が急速に後退している。それによってさまざまな現象が起きているんですが、そういったことを知るとまた世界が広がっていく。自分を取り巻く世界、そして自分が住む地球の世界一つ一つに目を向けてみることが大切かと思います

――確かに、今まさに、自分の住む世界の知らなかったことを知りました!

登眞「自分の好きなものを大切にしてほしい。きっと自分なりの世界の広げ方に出会えると思います」

※UNESCOは昨年、氷河を含む世界遺産50件の3分の1が2050年までに消滅するという報告書をまとめています。

登眞流・視野の広げ方

・まずはいろいろ見てみる、行ってみる、体験してみる
・ニュースで話題のキーワード、時事問題からも意外な広がりが

HugKum編集部から

自由研究と考えると、お子さんも身構えてしまうかもしれません。好きなこと、興味のあることを見つけに行こう!という声掛けをしてみると、キラキラした目に出会えるかもしれませんよ!

丁寧な言葉遣いで、真摯に答えてくださった登眞さん。自由研究に限らず「WOW!」と感動する心の種のさがし方・育て方をまとめたご自身の著書に、そんな登眞さんの思いが読み取れます。こちらもぜひ手に取ってみてください。

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著・山本・リシャール登眞 小学館1540円(税込)

ユニセフの2020年発表によると、先進38カ国中、日本の子どもの「身体的健康」は1位、「精神的幸福度」は何と37位だった。そんな日本の子どものパラドックスは「WOW(感動)ファクター」できっと変わる…。「WOW」体験を積むことがどれだけ人の心を強くするか、また、心躍る感動がさらに多くの人と学びへと繋がるWOW効果について、世界遺産を含む多くのWOWファクターを紹介しながら綴る。

 

著者紹介

山本・リシャール登眞
2005年フランス・リヨン市生まれ。11歳で世界遺産検定の最高位「マイスター」を史上最年少で取得し、その後『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』にて「世界遺産博士ちゃん」として活躍。TBS『日立  世界ふしぎ発見!』の回答者やミステリーハンターとして出演。世界遺産アカデミー認定講師。2021年8月、世界遺産アカデミーのオンライン特別講座の講師も担当。

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文/宇野なおみ 構成/HugKum編集部

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