勉強というと机に向かって問題を解くことをイメージしますが、体験から学びを得ると学習定着率がアップすることをご存じでしょうか。「おもしろい!」と感じる体験は、新しいことをもっと知りたくなる学習意欲にもつながります。今回は算数を好きになる体験学習5選(アウトドア編)をご紹介します。
▼インドア編はこちら
体験から得る学びは学習定着率が高くなる!?
皆さんは「ラーニングピラミッド」をご存じでしょうか。アメリカ国立訓練研究所の研究によると、学習方法と平均学習定着率の関係は「ラーニングピラミッド」という図で表すことができると言われています。
ラーニングピラミッドは、学習方法ごとに平均学習定着率の違いを分かりやすく示した図です。効率よく学習したいなら、受け身な学習方法でやみくもに丸暗記をするよりも、能動的・実践的な方法を積極的に取り入れるのが有効だとされています。
▼関連記事はこちら
国内の教育機関も能動的な学びを重視している
国内の教育機関でも、「アクティブラーニング」を重視したカリキュラムが導入されています。アクティブラーニングとは、ラーニングピラミッドの中でもより能動的な「他者と議論する」「実践による経験・練習」「他人に教える」を重視したカリキュラムのことです。
アクティブラーニングによって意欲的・主体的に学習に取り組む姿勢を身に付けることは、テストで点を取るためだけの勉強では身に付かない「物事の考え方」や「生きる力」を得ることにつながります。
一方で教育格差や体験格差が社会問題に
体験が素晴らしい学びになると重視されている一方で、教育格差や体験格差が社会問題になっている現状があります。教育格差とは「生まれ育った環境により受けることのできる教育に格差が生まれること」をいいます。
例えば現代の日本では、学校以外に塾や習い事などに通う子どもが多いです。しかし、このような学校外で受ける教育にはお金が必要なため、貧困層の家庭の子どもたちは、習い事に通うことが難しく教育機会が減少します。本人の選択に関係なく、教育を受ける機会が等しく提供されない状況が「教育格差」です。
また、公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンが小学校1~6年生の子どもがいる家庭を対象に行った調査によると、世帯年収300万円未満の家庭の子どもの約3人に1人が1年を通じて「学校外の体験活動を何もしていない」という結果が示されました。これは年収600万円以上の世帯の同回答と比べて約2.6倍の数字となっています。
参考:東洋経済「世帯年収による差が2.6倍、学力格差にもつながる「子どもの体験格差」とは」
お金をかけなくても体験学習は可能
このような格差は解消されなければならない問題です。しかし、学力や学習定着率という視点で考えると、お金をかけた体験をさせてあげられないことがそのまま学力差につながるとは思いません。特別なお金をかけなくても、特別まとまった時間を作らなくても、日常生活の中でお金をかけずできる体験はたくさんあるからです。体験格差は経済力に頼らなくても埋める方法があります。
算数を好きになる体験学習5選を紹介【アウトドア編】
特別なお金をかけなくても、日常生活の簡単なお出掛けや外遊びで実践できるオススメの体験学習について5つご紹介します。
-
①買い物
普段の食材を買いに行くスーパーマーケットや週末のショッピングモールなど、こどもと一緒に出掛ける機会が多い用事は買い物でしょう。
近年はキャッシュレス決済の仕組みが急激に発展し、「ピッ」とやればお会計が終わる便利な時代になりました。子どもに体験学習をさせるには、あえて現金で買い物をしてみましょう。
お会計の場面だけでなく、品物を選ぶところから子どもに任せてみると良い経験になります。例えば、家族でバーベキューをするとき、予算は〇円以内と決めて、お子さんに必要な道具や食材を考えてもらいます。予算があることで、足し算だけでなく引き算の勉強にもなります。消費税の計算や割引シールは、割合や小数の勉強になります。
親に「してもらう」イベントではなく、準備段階から参加することでイベント自体もより楽しめるのではないでしょうか。
-
②公園
公園も定番のお出掛けスポットですね。せっかくの屋外ですから、外でしかできない体験をしましょう。大きな木や街灯の高さを、影を使って測る方法をご存じでしょうか。
日中の太陽が高い時間帯、影は短くなりますよね。自分の身長と影の比を利用すれば、大きな木でも地面に映る影の長さを測ることで、木の高さを計算から求めることができます。実際に登って測ることのできない大きなものが計算で求められるのはおもしろいですね。
公園では、自然観察もおすすめです。植物を観察するとたくさんの美しい模様に出会うことができます。
自然界の美しさには、フラクタル図形、フィボナッチ数列や黄金比など、数学的な規則正しさが隠れています。Eテレの子ども向け番組で放送されている「ミミクリーズ」では、自然観察に役立つ楽しいテーマが取り上げられています。公園へお出掛けする前に、参考にされてはいかがでしょうか。
-
③乗り物
電車、バス、自動車、自転車など乗り物を使ったお出掛けは、距離(道のり)・時間・速さの関係を考えるのにピッタリです。時速何km、分速何mといった単位の意味について、実際のスピード感を知ることができます。
また、駅やバス停では、時刻表や運賃表など数字を使った表示をたくさん見ることができます。せっかくの機会ですから時間にゆとりをもって出掛け、ICカードではなく現金で、子どもにきっぷを買わせてみるというのも良い勉強になります。
④地図
出掛け先が決まったら、当日だけ楽しむのではもったいない! 子どもと一緒に、事前に地図を広げれば、それだけで学びにつながることがたくさんあります。
地図で距離を測ったり、目的地までの交通手段や所要時間を考えたり。
どうやってそこに行くのが安いでしょうか?
早いでしょうか?
また、行ってみたい観光地を効率良く回るには、どの順序で観光するのがいいでしょうか?
家族で話し合いながら、旅行をプランニングしてみましょう。
-
⑤天気・天文
キャンプやバーベキューなどの屋外イベントは、当日の天気を気にして天気予報を見ますよね。降水確率や気温、風の強さなど、天気予報は色々な数字を使っています。
普段はおうちの方が天気予報をチェックして荷物を加減していると思いますが、子どもを巻き込むことでレインコートが必要か、折り畳み傘は持って行くのか、子ども自身に考えさせることができます。
天気が良い日のキャンプなら、夜には星空を楽しむことができますね。天文に関する図鑑は、星の大きさや距離について「億・兆」といった大きな数がたびたび登場します。大きな数や位の概念は苦手分野とする子も多いですが、実際に空を見上げて星に興味を持ったなら、このような大きな数も抵抗感なく学ぶことができるでしょう。
受け身な勉強よりも「やってみた」がおもしろい!
今回は「算数を好きになる体験学習5選」としてアウトドアでできる学び体験をご紹介しました。ラーニングピラミッドで示されるように、受け身な勉強よりも、実際に「やってみた」経験から学ぶことは学習定着率がアップします。
高額なお金をかけてパッケージ化された「〇〇体験」を買わなくても、日常生活の延長線上で楽しめる体験はたくさんあります。休日を有意義に使って、親子で楽しく学びましょう。
あなたにはこちらもおすすめ
記事執筆
〈タブレット教材「RISU算数」とは〉
「RISU算数」はひとりひとりの学習データを分析し、最適な問題を出題するタブレット教材。タイミングの良い復習や、つまずいた際には動画での解説の配信を行うことにより、苦手を克服し得意を伸ばします。
期間限定のお試しキャンペーンはこちら≪
『小学生30億件の学習データからわかった 算数日本一の子ども30人を生み出した究極の勉強法』
構成/HugKum編集部